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高橋まつりさんの過労自殺を発端とした電通の違法残業事件で、労働基準法違反の罪に問われた同社の初公判が9月22日、東京簡裁で開かれ、即日結審した。検察は50万円を求刑した。

閉廷後、裁判を傍聴した、まつりさんの母・幸美さんが厚労省記者クラブで会見を開き、「(娘はかえって来ないので)非常に複雑だが、感慨深い心境があった」と内心を語った。

裁判には山本敏博社長が出廷し、幹部3人が過労自殺したまつりさんを含む従業員4人に、違法残業をさせたことを認め、反省とお詫びの言葉を述べた。これに対し、幸美さんは「電通は、娘が入社する前にも(労働環境改善についての)立派な計画を発表していました」「遺族としては、にわかに今日の社長の言葉を信じることはできません」と厳しい表情で語った。

記者から裁判の中で印象的な場面は、と問われた幸美さんは「電通のずさんな労働時間管理や認識の甘さ、おざなりな対応で(まつりさんが)亡くなったと検察が述べてくれたこと。気持ちを代弁してもらえた」と答えた。

一方で、裁判の争点はあくまで違法残業(労基法違反)で、過労死の責任ではなかったことについて、「虚しさもあった」と述べた。

幸美さんの代理人を務める川人博弁護士は、「東京簡裁が略式裁判ではなく公判を開いたことは、労基法違反の持つ重大性を知らしめる効果が大きかった」などと話した。

電通の山本社長も閉廷後、司法記者クラブで記者団の取材に応じ、「責任の重さを痛感した」「ご本人にもご遺族にも心からおわび申し上げます」と頭を下げた。

(弁護士ドットコムニュース)