永田町で何とも情けないスキャンダルが続出している。釈明のため会見に臨む彼らの姿を見て「これが国会議員?」と首を傾げたり、スキャンダルもむべなるかなと感じた有権者は少なくないだろう(写真=時事通信フォト)

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限られた情報で相手の「信用度」を見抜くにはどうすればいいのか。ここでは「政治家」をケーススタディとして、服装や言動、SNSの使い方などから、その中身を探ってみよう。

※肩書きなどはすべて「PRESIDENT 2016年8月1日号」の掲載時のままとした。

■なぜ、有権者が嫌うスーツを着るのか

物事に表と裏があるように、政治家にも表の顔と裏の顔がある。政治家、特に国会議員を直接知らない有権者が見るのは、もっぱら彼らが目一杯振り撒く表の顔だ。

立派な経歴に笑顔のポスター、テレビ番組で語られる正論、SNS上の大活躍……。これらすべてを真実だと受け取る人は少ないだろうが、本来なら実像とのギャップを埋めるべきマスメディアも、現状はもっぱら週刊誌頼みで限界がある。

しかし、限られた情報で相手の「信用度」を見抜くことができればどうだろうか。それは選挙に限らず、仕事や実生活でも十分役立ちそうだ。

まずは、わかりやすく髪形や服装といった外見から検証してみよう。

「服装や髪形がチャラい議員は、性的な問題を起こしやすい」――医師・弁護士や国会議員を相手に危機管理のコンサルティングを行う平塚エージェンシー・平塚俊樹氏は言う。

「有権者・支持者の多くは年配者だから、本来そうした人たちに好感を持たれる服装が当たり前。なのに、彼らが最も嫌う、体の線が出るような細身のスーツをわざわざ着たりする。目的が明らかに本業と違う」

まるでタレントのように、見た目のカッコよさを追求するわけだ。複数の国会議員の下を渡り歩いたベテラン秘書も、「特に髪形が今風の若手政治家は危ないことが多いですね。美容室に行く時間を捻出していることじたいに、チャラ目的が透けて見えるかも」と指摘する。妻の妊娠中の不倫がもとで議員辞職した宮崎謙介前衆院議員はその典型例といえるが、都議・区議など地方議会も「そういうバカの巣窟になっている」(平塚氏)。

細野豪志元環境相は、2006年に発覚した不倫で叩かれた頃のチャラさが消え、今は目立たないがいいスーツを着ているという印象。橋下徹おおさか維新の会法律政策顧問も、タレント弁護士から転身し年数を重ねるにつれ、いい意味でどんどんオジサンになっていった。2人とも叩かれながら学んだのでは」(同)

要は、好感を持たれる基準はサラリーマンとほとんど変わらないのだ。

「スーツは紺色かグレーのシングルに限り、ダブルなどもってのほか。安物でも黒の革靴をピカピカに磨いておく。そうした基本を守っていない人は信用できないが、基本一辺倒でもダメ。クールビズとかその時代の流行はある程度取り入れないと」(同)

もっとも、きちんとした装いで有権者にいい顔をしつつ、陰で暴力を振るう輩も中にはいる。永田町も昔に比べて随分パワハラに厳しくなったが、ゼロではないのだ。たとえば河井克行首相補佐官は、元秘書兼運転手から、車の後部座席から蹴り上げるなどの暴力行為を、週刊文春に実名で告発されている。

「傲慢ですぐ怒ったり、発言が過激なのは、何か隠しごとがある裏返し。弱い証拠です。スキャンダルを起こす可能性は大きい」(同)

■素晴らしい経歴イコール素晴らしい人格とは限らない

およそ政治家らしくない、幼い顔だちだが、衆院選で2度当選しただけで「世界はオレ中心に動いている」と思い込んでいる――そんな風情の武藤貴也衆院議員は、初当選時から国会議員の中でも浮いた存在だった。

何といっても協調性がない。目立つ場所で発言するが、その内容が過激すぎる。事実、自民党滋賀県連の中でも、「あいつとは言葉が通じない」とも言われ、武藤氏には親しい友人がいなかったと聞く。2015年8月に金銭トラブルで自民党離党を余儀なくされ、未成年の男性を買春したことを週刊文春で報じられたときも、同情の声は出なかった。

信頼度を見抜くうえで、経歴・学歴に頼る人も多いだろう。ただ、素晴らしい経歴イコール素晴らしい人格とは限らない。

2016年6月に政治資金の私的流用疑惑が浮上、粘った甲斐なく辞任した前東京都知事の舛添要一氏は、6カ国語を操る新進気鋭の国際政治学者として1980年代にメディアに登場。その切れのいい物言いと元東京大学助教授という華やかな肩書に、テレビをはじめとしたメディアは飛びついた。

しかし、すでに新党改革時代から政治資金の私的流用を週刊誌で書かれ、厚労相時代から吝嗇家だとの噂も絶えなかった。学者としての業績も怪しい。東大を退官後に舛添氏の訳書として上梓された政治学の翻訳本が、実は当時の東大大学院生が丸々手掛けたものだったことを、当の大学院生が公にしている。

同様に東大法学部卒で元検事という素晴らしい経歴の持ち主ながら、その言動にげんなりさせられたのがガソリーヌこと山尾志桜里民進党政調会長だ。国会で「保育園落ちた日本死ね!!!」のブログを披露して安倍晋三首相に待機児童問題を迫ったことで名を上げたため、民進党結党の際に政調会長に抜擢された。

ところが山尾氏が総支部長を務めていた「民主党愛知県第七区総支部」の12年の収支報告書に、ガソリン購入代として地球5周の走行分に当たる約230万円が計上されていた問題が発覚。山尾氏は元秘書が架空の代金を計上した疑いがあると釈明した。もし本当なら業務上横領罪に問われかねないが、山尾氏はこの元秘書に連絡すら取っていなかった。

甘利明前経済再生担当相の金銭授受疑惑では「秘書のやったことについて、本人の責任が免れるわけではない」と厳しく批判したにもかかわらず、自分に対しては大甘のまま、政調会長の座に居座り続けている。

他人には攻撃的なのに、いざ自分が指弾されると、他人に責任を押し付けて逃げるのはいただけない。

「もっとも永田町にひどい秘書が少なくないのは事実。議員にとって、秘書の監督は今後の最重要課題でしょう。しかし、特に若いときから人に担がれてきた2世、3世議員の多くは、企業の課長級以下のマネジメント能力しかない。逆に官僚出身者は、役所時代の手下と同じ感覚で秘書をこき使って、その結果人心が離れるパターンが多い」(ベテラン秘書)

経歴がアテにならないなら、「血筋」はどうか。企業社会では、金持ちのボンボンは世間知らず、甘ったれなどとレッテルを張られることが多いが、政治の世界も大差ない。

■岡田代表の努力は裏目に出がち

先の山尾氏を政調会長に抜擢した岡田克也民進党代表は、イオン創業者・岡田卓也氏を父に持つセレブリティ。東大から旧通産省を経て、90年の衆院選で初当選した。

しかしてその実体は、酒はほとんど嗜まず、ダイエットに勤しみながら毎日一切れの羊羹を至福とする庶民派だ。脱炭水化物ダイエットを行う一方、国会内の役員室に置いてあるお菓子に手を伸ばし、「これはタニタの煎餅だからいいんだ」と周囲に意味不明な言い訳をしたことも。

そんな“庶民派”をアピールすべく、02年に党代表選に出馬したときには女性秘書を相手に「冗談を言う練習」をしたこともあった。

にもかかわらず、国民の好感度はイマイチだ。2016年の初めに役員室長の辻元清美衆院議員や代表代行の蓮舫参院議員が岡田氏のイメージチェンジを図るべく髪の毛を短く切らせたことがあった。が、かえって髪の毛の癖が出て、跳ねたヘアスタイルになってしまい、さすがにこのときの岡田氏は少々おかんむりだったという。努力が裏目に出ることが多いのは運のなさなのか。

■ほかの2世、3世とは違う麻生副総理

時に、セレブは意外な面を持つ。吉田茂元首相を祖父に持つ麻生太郎副総理もそんな一人だ。

数々の失言や、「未曾有」を「みぞうゆう」と読んだ国語力ばかりが取り沙汰されるが、麻生氏は実は大変な達筆である。背広の胸ポケットから高価な万年筆を出し、さらさらと文章を書くところが、いかにもカッコイイ。

「麻生先生は歴代の秘書でクビにした人は一人もおらず、逆に不本意に辞めた秘書も一人もいないのは有名。先日亡くなった鳩山邦夫先生も秘書を大切にしていたから、事務所の結束が固い。ともに突き抜けた名門出身で、ほかの2世、3世とは不思議と違う」(ベテラン秘書)

そもそも高級品しか身につけない麻生氏。青山の一流のテーラーが作るスーツは特注品で、スラックスにはシワがつかぬよう裾に重りが入っている。小物の使い方も洒落ていて、14年のG20参加時は黒のボルサリーノを斜めに被り、水色のカシミヤのマフラーを巻いていた。これを米紙が「ギャングファッション」と揶揄したが、少年マンガの熱烈な愛読者の麻生氏は、むしろ劇画のキャラクターを意識していたように思える。

こうした実像はなかなか外には伝わりにくいが、好感度や信用度が高い人は、外に対するイメージと実像とを意識的に一致させようとする。少なくとも、話し方や口調を工夫し、外に対するイメージが崩れないよう、自分の理想像を演じるのだ。

■自己のイメージを演じ切る進次郎

その点でそつがないのが小泉進次郎衆院議員だろう。父・純一郎氏譲りのワンフレーズポリティックスでわかりやすいうえ、その所作はきびきびしている。外から見る限りまったく無駄がない。

「情」を見せることも忘れない。顔を見たことのある人には必ず会釈する。うっかり見過ごしたら、振り返って挨拶する。相手は「あの進次郎氏に気遣ってもらった」と感動してしまう。「自己のイメージを演じ切っているが、髪形が今風だし本質はチャラいかも」(平塚氏)という見立てもあるが、永田町で悪い評判を聞いたことがないのは確かだ。

「3時間しか眠れないが、頑張る」

「見た目」に続いて「物言い」を検証しよう。企業社会で最も信用されないのは、節操のないタイプである。所属政党がころころ変わる政治家が軽蔑されるのも同じことだが、2016年の参院選に当たって、そんな政治家に有権者が騙されそうになったケースがある。比例区の1人をネット投票で決める自民党の「オープンエントリー」に応募し、12名のファイナリストに残った柳澤亜紀港区議だ。

柳澤氏は民主党政権時の11年の区議選で民主党から出馬し初当選したが、15年の区議選では与党に返り咲いた自民党に転じて再選した。

「まったくもって節操がない」

呆れるのは民進党(当時民主党)の関係者ばかりではない。自民党関係者からも、「有権者に説明するために、一度は無所属議員として選挙の洗礼を受けるべきだったと思う」との苦言を聞いた。

しかもオープンエントリーで柳澤氏は港区の待機児童の改善を自分の手柄のように主張したが、これについて他の区議たちは一様に「事実ではない」と斬り捨てた。

「港区は23区内で財政的に最も豊かなので、お金をかけて取り組んだ結果が出ただけだ。柳澤氏が格別これに貢献したという事実はない」

有権者は全能ではないため、時には騙されることもある。その対処法として最も有効なのは、やはり政治家に直接会って話を聞くことだ。

そこから人間性が判断できるし、実物がHPの写真などと乖離しているかどうかを確認することもできる。あまりに違っていたら、“修正”を疑ってみよう。選挙は美男美女コンテストではない。

また「いい日本にしたい」「みんなが尊重される社会」など、誰でも思いつく曖昧なフレーズでしかアピールできないなら、政治家としての適性を疑うべきだ。具体的な国家像や近未来図に言及したら、能力については合格点。さらに専門的知識があれば申し分ない。

ツイッターやフェイスブックなどSNSで自分の行動をいちいち呟き、「これから3時間しか眠れないが、日本のために頑張る」などと書き込む政治家がいるが、これは単なるアピールで、事実ではないと疑ったほうがいい。そもそも本職で多忙ならば、頻繁にSNSに書き込めるはずがない。

しかも、そうした政治家には「ヒラメ」が多い。上層部の覚えがめでたければ出世できると信じており、ろくな仕事もしないまま、アピールだけ繰り返す。また上層部の言い分をただ繰り返すだけの議員も要注意。自分の頭で考えていない証拠だ。

実際に上西小百合衆院議員は、初当選時のインタビューで何一つ自分の言葉で答えられず、「橋下代表のおっしゃる通りです」のみ繰り返した。上西氏は12年の衆院選で大阪7区から日本維新の会(当時)の公認候補として出馬し当選したが、同選挙区は「日本維新の会から出れば当選確実」と言われた選挙区だった。

ここまで見てきた政治家の信用度を見るポイントは、意外に平凡だが、政治家に限らず広く通用することに、恐らく異存はなかろう。甘い言葉や都合のいい事実だけを語る政治家に騙されないためにも、実生活で人の本性を見抜く、もしくはわが身を省みるためにも、活用の仕方は多々ありそうだ。

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▼信用度を見抜く8つのポイント
1. 服装・髪形がチャラい→異性のことしか頭にない
2. 言動が荒く、傲慢→何かやましいことを抱えている
3. 経歴・血筋を鼻にかける→経歴は眉ツバ。突き抜けた血筋なら案外アテになる
4. 攻撃的だが受けに回るとダンマリ→脇が甘い。けじめがない
5. 節操がない主義主張が変わる→その場しのぎしか考えていない
6. 指示・アピールが曖昧、抽象的→仕事に思い入れがない
7. “忙しい”アピール→実はそうでもない。ロクに仕事をしない
8. 上の意向ばかり気にする→自分の頭で考えない「ヒラメ」

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(ジャーナリスト 安積 明子 写真=共同通信フォト、時事通信フォト、AFLO、Getty Images)