「ザ・ミレニアルズ」ロビーの様子。従来のホテルにはないキッチンも完備

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 「ライフスタイルホテル」という新しい滞在スタイルを提供する宿泊施設が増加している。特に都市部に多く、異業種からの参入も少なくない。7月14日にグローバルエージェンツが京都に開業した「ザ・ミレニアルズ(The Millennials)」もその一つ。共通しているのは「宿泊を楽しむ」という付加価値の提供だ。
 グローバルエージェンツは共同住宅「ソーシャルアパートメント」で培ってきた「交流の場づくり」が生み出す可能性をライフスタイルホテル事業に活かし、「ホステルライクなホテル」をコンセプトにした「ホテルグラフィ根津(HOTEL GRAPHY NEZU)」や、ローカルの人々と旅人のコミュニティを繋ぐ「エスティネートホテル(ESTINATE HOTEL)」、ロッジの世界観をホテルで再現した「ホテルアンワインド札幌(HOTEL UNWIND SAPPORO)」の3つのホテルブランドを展開。ザ・ミレニアルズではミレニアル世代の価値観やライフスタイルを反映し、共用スペースを充実させたほかコワーキングスペースを併設するなど、ワークとライフを融合させた新しいコンセプトを打ち出している。自身もミレニアル世代という同社の山崎剛社長は「これまでは旅行代理店に向けてカテゴライズがしやすいホテルの開発が多かったが、現代はSNSが普及したことで個人客の時代になり、"ハードより体験"が重視されるようになったこの時代だからこそ、ライフスタイルホテルのマーケティングが広がると考えた」と事業の狙いを話す。
 同社が考える「ライフスタイルホテル」は、従来のビジネスホテルやカプセルホテルなどの宿泊特化型とは異なり、デザイン性が高いだけではなく、宿泊に留まらない付加価値や体験を提供するもの。同様のスタイルはカフェ・カンパニーの「ワイアード ホテル アサクサ(WIRED HOTEL ASAKUSA)」や、テイクアンドキヴ・ニーズの「トランク ホテル(TRUNK(HOTEL))」などが該当しており、ホテル業界の経験がない異業種だからこその新しい提案が話題を集めている。外資ではハイアットブランド「アンダーズ 東京」が先駆的な存在として知られ、近年はその他の外資ホテルチェーンも付加価値に着目するなど"ライフスタイルホテルの黎明期"とも呼ばれている。山崎社長は「今まではローカライズがライフスタイルの表現に繋がっていたが、定義が変わってきている」と捉え、ライフスタイルホテルの市場でナンバーワンを目指すとともに「定義を私達が提示していきたい」と意欲を示している。
 同社の主力事業はソーシャルアパートメントだが、ライフスタイルホテル事業も主軸にしていく考えで、ザ・ミレニアルズに関しては3年間で10軒展開していくことを目標に掲げている。「コワーキングスペースとしても宿泊施設としても良い立地でなければならない」という狙いから、出店先は主要都市の中心地が重要な条件となるが、ザ・ミレニアルズ京都のように「空中階は集客に困っているビルがあるので、物件探しの障壁はないと思っている」と迷いはない。事業全体としては、これまではバジェット(低価格帯)からミッドプライス(中価格帯)がメインだったが、新しいブランドを追加し、より幅広い価格帯で展開していきたいという。来年には新ブランドを発表する計画もある。「この業界では僕らの世代(ミレニアル世代)で起業している人は少ない。だからこそ発想で勝負していく」(山崎社長)。宿泊施設のスタイルが広がることによって、都心や観光地だけではなく閑古鳥が鳴いている地域に人を呼び込むことにも繋がっていくかもしれない。