勝負の世界で活躍する一流選手たちは、「病気の壁」も乗り越えてきた(イラスト・サカタルージ)

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五輪にサッカーW杯、プロ野球、大相撲と、一流アスリートによる力や技の競い合いは見ていてわくわくする。中には、持病というハンデを克服したうえでハイレベルな技術を身に着けたプレーヤーがいる。

子どものころに病気を患い、周りと比べて体力がなかったとしても、決して悲観する必要はないのだ。

清水宏保「このまま死んじゃうんじゃ...」

アスリートの中で比較的多い持病が、ぜんそくだろう。2014年のソチ冬季五輪で、男子フィギュアスケート金メダリストの羽生結弦選手(22)、女子レスリングで五輪3連覇の吉田沙保里選手(34)、スピードスケートで1998年の長野冬季五輪男子500メートル金メダリストの清水宏保さん(43)と、日本を代表するアスリートが少なくない。

羽生選手の場合、2歳でぜんそくを患った。飲み薬や吸入器は手放せなかった。演技終了直後、他の選手と比べて大粒の汗を流しながら肩で大きく呼吸する姿を覚えている人もいるだろう。本人はぜんそくについて多くを語っておらず、大会で成績が振るわなくても病気を言い訳にしない。

清水さんの場合、自らのぜんそく体験を公表して同じ病気を抱える人を励ましている。例えば2008年11月15日付のブログでは、子どものころにぜんそくで苦しんだ様子を「このまま死んじゃうんじゃないかって何度思ったことか」と振り返っている。両親が「肺を鍛えられるスポーツだから、ぜんそくを治すにはスピードスケートがいいんじゃないか」と考え、本格的に競技を始めたという。ぜんそくはハンデではないと、スピードスケートに教えてもらったと清水さん。

大相撲で、2012年に前頭4枚目まで昇進した舛ノ山(26)も、子どものころにすぐ息があがり、周りの子どもたちとの違いを感じていた。ただ、ぜんそくとは違った。2012年10月13日付の日本経済新聞電子版によると、15歳で角界入りしたが2011年に症状が悪化、診断の結果「心房中隔欠損症の疑い」だった。国立循環器研究センターのウェブサイトを見ると、これは心臓の右心房と左心房の間を隔てる筋肉の壁に穴が開いた状態で、先天性の場合は約100人に1人の割合で起きる。幼少時は無症状で過ごす場合が多いが、「体重が増えない、他の子より小柄である、走ると息切れしやすい、風邪をひきやすい」といった症状が出ることがある。病気が進むと、不整脈や肺高血圧症、心臓弁膜症が起きてくるという。

現在は番付を下げている舛ノ山だが、今も現役力士として土俵に上がっている。

タイガース・岩田は高2で1型糖尿病発症

食物アレルギーも、スポーツ選手にとって深刻だ。有名なのは、男子プロテニスプレーヤーのノバク・ジョコビッチ選手(30)。小麦や大麦、ライ麦に含まれるたんぱく質「グルテン」に不耐症があり、体調不良の原因となっていた。そこで、いわゆる「グルテンフリー」の食材に切り替え、プロテニス選手として世界ランキング1位の座に上り詰めた。その後自ら「グルテンフリー食」の本を執筆している。

最近ではプロ野球・北海道日本ハムファイターズの斎藤佑樹投手(28)が、「夕刊フジ」に卵アレルギーだったと明かした。摂取後、数時間から数週間後に症状が現れる「遅延型食物アレルギー」で、徹底した「卵断ち」に取り組んでいるという。

野球選手の中には、1型糖尿病に悩まされる人がいる。生活習慣病である2型糖尿病とは違い、ウイルス感染ほかの原因ですい臓のインスリン分泌組織が破壊され、インスリンの分泌量が絶対的に不足する病気だ。阪神タイガースの岩田稔投手(33)は高校2年生の冬に発症した。以後も病気と闘いながら2005年に阪神に入団し、現在は1型糖尿病の啓発活動にも積極的に励んでいる。

1988〜89年に読売ジャイアンツで活躍した元大リーガーのビル・ガリクソンさんや、2007年に西武ライオンズに所属したジェイソン・ジョンソンさんも、1型糖尿病を抱えながらプレーしていた。