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■どんなクルマ

例えば、ここで、2人の友人が、他愛もない会話をしていると仮定しよう。「フォルクスワーゲンT-Rocは、ゴルフのSUV、それともデュアリスといったとこかな」

フォルクスワーゲンはどちらの喩えも歓迎しないだろう。なぜなら、このクルマに独自の個性を持たせたいと考えているからだ。

T-Rocは、ファミリーSUVというカテゴリーに遅れてやって来た新参者。だからこそフォルクスワーゲンは、このクルマに際立つ個性を与えたいのだ。

どのくらい遅れて来たのかというと、このモデルのベースとなったのは、あまり例のないコンバーチブルのSUVという形態のT-Rocコンセプトカー。発表は2014年まで遡る。

T-Rocは、「感情」を押し出したフォルクスワーゲンの新しい潮流を先導する役目を担い、同社のほかのモデルよりも、少し感情面に訴えかけることになる。なんと、ツートーン・ペイントの噂もあるくらいだ。

Tは、兄貴分のティグアンやトゥアレグとの関連性を、Rocは、Rockから派生した言葉だという。

その意味は、フォルクスワーゲンによると、「ひとつにはこのクルマのオフロードのキャラクターに関連し、一方でパワフルでアバンギャルドなクロスオーバーのデザインを反映しています」ということになる。

■どんな感じ?

内外装ともにVWのあらたなアプローチが見える

T-Rocは、MQBプラットフォームをベースとしているが、基本的にプラットフォームを共有するアウディQ2の恩恵を少なからずとも受けている。

つまり、2.59mのホイールベースは同じだ。一方、全長はゴルフよりも少しだけ短い。それでも十分な車内スペースを確保し、ファミリーカーとしての正当性は保っているという。

インテリアを見回すと、確かな素材や理路整然としたレイアウトで確立した同社の評判を超えたところで、フォルクスワーゲンが何を達成しようとしているかというヒントが垣間見える。

まだ偽装が施されているが、関係者によると外装色のモールがダッシュボードを横切ることになるようだ。定評の質感の高いインテリアに色彩と楽しさが加わるということであり、実現されれば、インテリア空間に新たな厚みが追加されることは間違いないだろう。

走りはアグレッシブに 完成度高し

試乗車に搭載されていた、150ps、1.5ℓのガソリン・エンジンは、フォルクスワーゲンの量産車から拝借したもので、1.0ℓと2.0ℓのガソリンとディーゼル・エンジンの設定も予定されている。

高出力エンジン搭載車には4輪駆動の設定もあるという。中堅モデルと思われる試乗車は、それでも十分なパワーを保有しており、なんら不足は感じなかった。それに、なめらかな7速DSGオートマティック・トランスミッションとの組み合わせも素晴らしい。

試乗コースは主に悪路であったため、適切な乗り心地やハンドリングのインプレッションをお届けすることが難しいが、フォルクスワーゲンはこのクルマの味付けを、伝統的なSUVのそれではなく、ややスポーティなものにしようとしているようだ。同社の「感情」を売りとする方針とも一致する。

■「買い」か?

VW 実直主義から変わることができる?

小型SUVの購入者は、ポジティブに受け入れるのではないだろうか。

新しいキャラクターを押し出す以前に、フォルクスワーゲンの品質や定評をもってすれば、市場への導入に関して既に十分な説得力が存在する。

今後フォルクスワーゲンは「感情」路線の車種をもっと拡充してくるつもりだろうが、その先行モデルとなるT-Rocは当面孤立無援の状態で戦いを挑まなければならないのかもしれない。

このプロトタイプの偽装が軽微なのと、この完成度を考えると、発売までの道のりはそう長くないように思える。

フォルクスワーゲンT-Roc

■エンジン 直列4気筒1498ccガソリン・ターボ 
■最高出力 150ps 
■ギアボックス 7速オートマティック