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九州大学 大学院工学研究院機械工学部門の小山元道助教、野口博司教授、津粼兼彰教授の研究グループは、金属疲労によるき裂発生の抑制のため、き裂周囲の金属が膨張や硬化する構造、き裂伝ぱ抑制の為にき裂面同士の摩擦が起こる構造に着目し、画期的な疲労特性を示す鉄鋼を見出した。

同研究は、米・マサチューセッツ工科大学および独・マックスプランク鉄鋼研究所と連携して、九州大学・伊都キャンパスで実施されたもの。この成果は3月9日 午後2時(米国東部時間)に、米国科学誌「Science」にREPORT(筆頭著者:小山助教)として掲載された。

輸送機器や機械類の破壊事故において、約8割は金属疲労が原因とされている。このため、金属材料と金属部品の疲労特性を正しく理解し評価すること、また疲労特性に優れた金属材料を地道に開発し製造することは、安全・安心な社会基盤の実現にとって重要になる。金属疲労破壊では、一度に加える力は小さくても、何度も繰り返し加えることで材料表面に微小なき裂が発生し、それが拡大伝ぱして次第に大きく広がり、最終的な破壊に至る。

この金属疲労によるき裂の発生と伝ぱを抑えるために、同研究グループはき裂先端部分での局所的な力学状態と金属ミクロ構造の関係に注目した研究を実施。特に、「層状形態を要素に含む階層性原子集団の金属ミクロ構造」によって、鉄鋼が動物の骨のような粘りのある壊れ方をするため、き裂伝ぱが抑えられ、疲労寿命が格段に延びることを明らかにした。

なお、構造金属材料の疲労に関する論文がScience誌に掲載されたことは長らくなかったという。同グループは、この成果を安全・安心な社会基盤の構築にとって重要な金属疲労研究の活性化と新たな展開に繋げるために教育研究を継続するとコメントした。

(杉浦志保)