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●受注好調を支える要因は
マツダの新型「CX-5」が売れている。2月2日の発売以来、受注台数は約1カ月で1万6,000台を突破。月間販売目標台数の2,400台から見ると実に約7倍の結果をたたき出した。その売れ行きも驚きだが、受注の“中身”を見ると更に興味深い事実が浮き彫りになってくる。

○商品の“深化”と販売戦略が奏功

昨今のマツダ車といえば「SKYACTIV技術」とデザインテーマの「魂動(こどう)」が特色となっている。この2つの要素を落としこみ、同社が2012年に発売したのが初代「CX-5」だ。CX-5を皮切りに、マツダが次々に市場投入したクルマを新世代商品群と呼ぶが、CX-5は発売から5年というタイミングでフルモデルチェンジを受けて、2017年2月2日に新型「CX-5」として再登場した。

なぜ新型CX-5は売れているのか。このクルマが先代から多くの点で“深化”を遂げていることは以前お伝えした通りで、その商品性がユーザーに伝わっているのが最大の理由だろう。実際に先代と新型を乗り比べてみると、内装が上質になっていることは一目で分かったし、走行中の静粛性や、道路のちょっとした段差を通過する際のスムーズさなど、商品性の向上を体感できるポイントはいくつもあった。

そして、好調な受注に結びついたもう1つの要因として見逃せないのは、マツダが進める販売戦略だ。

弊紙では近く、マツダで国内営業などを担当する福原和幸常務に取材した記事の掲載を予定しているため、販売戦略の詳しい内容については次回に譲りたいが、簡単にいうと同社では、商品の発売後も適宜「商品改良」を行うことにより、市場投入から時を経たクルマにも最新技術を導入してアップデートし、その商品の価値を落とさないようにしている。そのため下取り価格が向上し、乗り換えがしやすい状況になっているのだ。

新型CX-5の受注状況をつぶさに見ると、販売戦略が功を奏している様子が伝わってくる。

●受注状況の何が画期的なのか
○マツダ車からの乗り換えが6割超

新型CX-5の受注状況を詳しく見ると、販売戦略が奏功しているのがよく分かる。注目したいのは、新型を購入した人の下取り車の内訳だ。マツダ車からの乗り換えは全体の66%となっている。

自動車業界で中堅メーカーの位置にあるマツダは、トヨタ自動車などと比べると販売台数の母数が相対的に低い。そのため、これまでのマツダでは、新車の受注が好調であればあるほど、他社からの乗り換えや新規の顧客の割合が高くなる傾向にあり、時には他社ユーザーと新規の流入が6〜7割に達することもあったという。CX-5の受注状況について話を聞いたマツダ国内営業本部の高場武一郎氏は、マツダ車からの乗り換えが6割を超えた今回の状況を「画期的」だと語っていた。

下取り車のうち、39%が先代CX-5である点も特筆すべきだろう。先代は発売から5年しか経っていないが、それでも乗り換える人がこれだけいる要因としては、やはりマツダの販売戦略が効いていると見るべきだ。

○マツダファンは固定化するか

新世代商品群で最初にフルモデルチェンジを実施したCX-5は、マツダ車からの乗り換え客を多く獲得した。この結果を見れば、今後フルモデルチェンジを受ける他の車種で同じ事が起こっても不思議ではない。これから新型が登場する車種でも同じ状況が続けば、それはつまり、マツダ車の乗り換えを続ける顧客、すなわちファンが固定化していることを意味する。

乗り換えやすさはマツダの販売台数増加に直結するはずだ。マツダ車を乗り換える人の買い替えサイクルが半分になれば、販売台数は単純に倍増するからだ。つまり、10年で乗り換えていた人が5年で乗り換えるようになれば、その10年で売れるマツダ車は1台から2台に増えるという計算が成り立つ。買い替えサイクルが短くなれば、中古車市場に状態の良いマツダ車が増えるので、マツダ車デビューを考える人にとっては選択の幅が広がることにもなる。

国内販売で苦戦しているといわれるマツダだが、新世代商品群の商品価値は市場に浸透しつつあり、商品力の向上と車の両輪の関係にある販売戦略も功を奏し始めている。新車を安易な値引きでは売らず、そのブランド力で売ろうとしている姿勢がマツダファンの固定化に結びつけば、同社の国内販売台数は安定的な数字をキープできるはずだし、ファンを増やすことで台数の更なる拡大を狙うことも可能となるだろう。

(藤田真吾)