90年代の音楽シーンを語る上で欠かせない小室哲哉の功績。ブームがピークにあった96年の“異例の大記録”をご存知だろうか?
こちらをご覧いただきたい。

【96年4月15日付けのオリコンシングルチャート】

1位 安室奈美恵『Don't wanna cry』
2位 華原朋美『I'm proud』
3位 globe『FREEDOM』
4位 dos『Baby baby baby』
5位 trf『Love&Peace Forever』

そう、小室プロデュース作品が上位5曲までを独占しているのだ。しかも、異なるアーティストで!
天才クリエイターであることを決定付ける大記録、当時の記憶とともに振り返りたい。

1位 安室奈美恵『Don't wanna cry』


ノリノリのダンスチューンでヒットを連発して来た安室が挑んだ新境地。
R&Bを意識したミディアム・テンポな楽曲でさらなるファン層を獲得し、ティーンエイジャーのカリスマから、ディーバへの転換を計り始めた時期となる。


ダイドードリンコの新・柑橘系飲料『mistio』のCMソングに使われ、本人もダンスを披露していたが、茶髪のロングヘア、小麦色の肌、細い眉に濃い目のメイク、厚底ブーツにミニスカート。まさに教科書通りの「アムラー」スタイルだった。そう、「アムラー」が「流行語大賞」トップ10入りしたのはこの年である。

この曲で、この年の日本レコード大賞を最年少(19歳)で受賞。紅白では第2部のトップバッターを務めている。

2位 華原朋美『I'm proud』


小室との関係が最も盛り上がっていたころの代表曲。
小室自身が「数多くの小室作品の中でも5本の指に入る力作」と語るように、時代を超えて愛されているのはご存知の通りだ。


小室はこの曲で華原を“本物のシンデレラ”にすべく、「セレブ感」を全面に打ち出したプロデュースにこだわったという。
落ち着いたハイブランドな洋服に身を包み、グッと大人びた華原。ロサンゼルスの高層ビルの屋上をヘリで空撮したPV、リアル・シンデレラストーリーをテーマにしたTBCのエステのCM、そして初出場の紅白……。その横にはいつも“王子様”小室がいた。
PVとメイキングが収められたビデオも発売されたが、このメイキングでは寄り添う2人の自然な笑顔がまぶしすぎたのが印象深い。

オリコン年間シングルチャートでは、前述の『Don't wanna cry』を抑えて、女性ソロ部門では最大のヒットに。また、年間カラオケリクエスト回数1位も獲得。当時の女子中高生はカラオケでハイトーンボイスを真似し、血管ブチ切れそうになったとかならなかったとか……。

3位 globe『FREEDOM』


5thシングルだが、直後にリリースされた1stアルバム『globe』からの先行シングルという位置付け。それでも50万枚近く売れているのが凄い。そして、このアルバム自体は400万枚超えのメガヒットだ。
実験的ユニットとして始まったのに思わぬ成功。自身も参加とあって、制約なく自由にやりたい放題できたのが成功の要因だとすると、やはり時代の空気を絶妙に掴んでいたのだろう。


なかなか会えない恋人同士のつのる想いがテーマだが、後半は何かと地球規模の話に持ってきがちな小室の嗜好が炸裂。戦争、差別といった重たいテーマを疾走感あふれるリズムに乗せ、ポップに歌い上げている。

4位 dos『Baby baby baby』


dosは、テレビ東京系『ASAYAN』の人気コーナー「コムロギャルソン」から誕生した3人組ユニット。元アイドル西野妙子(taeco)がボーカル、後に小室の嫁になるasamiと後に女性になるKABA.ちゃん(kaba)がダンス&コーラスを務めていた。

この曲がデビュー曲であり、3人揃って資生堂シャンプー『ティセラ』のCMでダンスを披露。この頃のKABA.ちゃんはカミングアウト前だったが、CMでひと言しゃべるだけでも、そのオネエ臭がダダ漏れだった。
当初、小室は世界的に活躍していたアメリカのガールズR&Bユニット『TLC』の日本版を目指すと意気込んでいたが、98年に小室がasamiとの新ユニット「TRUE KiSS DESTiNATiON」を始めたため、そのまま自然消滅してしまった。

5位 trf『Love&Peace Forever』


trfの13thシングル。明るくPOPなダンスチューンで、ホンダのスクーターのCMで使われていた。
小室プロデュース作品として初のミリオンセラー『survival dAnce〜no no cry more〜』を生んだtrf。小室ファミリートップの稼ぎ頭として牽引して来たユニットも、この頃は息切れ寸前といった印象。


他の小室ファミリーが躍進する中、目に見えてセールスが落ち込み、スピードが早い音楽界においてすでに「過去の人」といった空気が漂いつつあった。次作よりTRFに改称するが、この時点で「終わった」と感じた人も多かったはず。
それから20年の時を経て、DJ KOOがお茶の間に浸透するなんて思いもよらなかったなぁ……。

あぁ、カラオケ行きたくなって来た!全部歌えてしまえるのが怖い(上手いかは別にして)、「90年代青春ど真ん中」アラフォーおっさんの筆者である。

※イメージ画像はamazonよりDon't wanna cry
※イメージ画像はamazonよりFREEDOM
※イメージ画像はamazonよりI'm proud
※イメージ画像はamazonよりLove & Peace Forever