ノートが30年ぶりに首位奪還した意義は大きい(画像はノートのブランドサイト)

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日産自動車の小型車「ノート」が、2016年11月の国内販売で1万5784台を記録し、軽自動車を含めた全銘柄のランキングで初めて1位になった。日産や業界団体によると、日産車が月間販売台数でトップになるのは、1986年9月のサニー以来、30年ぶり。ノートは11月2日に「e-POWER」と呼ぶ新型ハイブリッドカーを投入。発売後約3週間(11月23日時点)で、月間販売目標の2倍にあたる2万台を超える受注を抱えるなど、日産としては久々のヒット作になった。

日本自動車販売協会連合会と全国軽自動車協会連合会によると、2位はホンダの軽「N-BOX」で1万4813台、3位はトヨタ自動車のハイブリッドカー(HV)「プリウス」の1万3333台。ノートe-POWERのライバルと目されるトヨタのHV「アクア」は5位の1万2409台で、ノートの健闘ぶりが目立った。

「シリーズハイブリッド」システム

日産の「e-POWER」はエンジンを発電のみに使い、駆動はモーターのみで行う「シリーズハイブリッド」と呼ばれるシステムだ。シリーズ方式が量産コンパクトカー(小型車)に搭載されるのはノートが世界初という。

トヨタのプリウスやアクアは、エンジンが主役でモーターがサポート役の「パラレル方式」であるのに対して、シリーズ方式は100%モーターで走行するため、電気自動車(EV)に近い。日産は世界初の量産EV「リーフ」の開発と並行し、2006年ごろからe-POWERの開発を進めていたという。

日産は「e-POWERの力強くスムーズな走行性能と優れた静粛性に加え、アクセルペダルの踏み戻しだけで加速から減速までを意のままに行うことが出来る利便性が評価された」と胸を張るが、これはリーフ同様、高トルクのモーター駆動ならではの特徴だ。

実は、ホンダが2013年夏に発売したアコードハイブリッドもシリーズハイブリッドに近い。アコードはモーターが駆動力の主役で、エンジンは発電のほか高速クルージングといった限られた領域で補助的な役割を果たすに過ぎない。トヨタのHVのEVモードが低速域に限られ、通常はエンジンとモーターの動力を組み合わせてタイヤを駆動するのに対し、アコードは時速100キロ程度の高速巡航とならない限り、エンジンがタイヤを駆動することはない。このシステムは「シリーズ・パラレル方式」と呼ばれる。

VS「パラレル方式」

なぜホンダが高速域でエンジンを駆動力に活用するかといえば、高速域ではモーターよりもエンジンの方が燃費効率がよいからだという。日産関係者によると、市街地走行では燃費効率のよいノートe-POWERも、高速域では燃費が相対的に不利になるという。

自動車メーカー関係者は、「HVはエンジンとモーターの両方を活用するパラレル方式の方が、技術的にマッチングが難しい。エンジンを発電だけに使うシリーズ方式の方が技術的にもコスト的にも楽だ」と指摘する。

日産にとって、サニーの後継者であるノートがトヨタやホンダを抑え、30年ぶりに首位を奪還した意義は大きいに違いない。日産の国内販売を担当する星野朝子・専務執行役員は「多くのお客さまに『技術の日産』を高く評価して頂けた証だと自負している」とコメントしている。果たしてノートe-POWERの登場で、シリーズ方式がトヨタやホンダのパラレル方式を凌駕し、HVカーの主流となるのか。今後の市場の評価が注目される。