慶應義塾大学内には、他大学からは決して窺い知れない“格差”がある。それは、大学入学に至るまで、どのような経路を辿ってきたかという格差だ。

比率的には、大学受験を経て入学した「外部生」が圧倒的に多いが、貴族的な小学校といわれる「幼稚舎」から、中学は男子校の「普通部」と共学の「中等部」、「SFC」がある。

高校は男子校である「慶應義塾高」、埼玉にある「志木高」、女子校である「慶應義塾女子」、共学である「SFC」、そして「NY高」と高校の内部生は5つに出自が分かれる。

女子高出身の仲良し三人組、沙羅、栞、早希子の通称「3S」がそれぞれ感じた“慶應内格差”をお送りする。

初回は女子高出身の沙羅が想いを寄せた男は、どんなに背伸びしても所詮は外部生だったという話、前回は女子アナ栞が幼稚舎出身の男を前に敗れ去った話をお届けした。

今週は?




絵に描いたようなお嬢様。早希子。

幼稚舎、中等部、女子高とエスカレート。大学では文学部に進み、就活はせず、今は父親が経営する会社で名ばかりの秘書をしている。

黒髪、大きな目に長い睫毛。ハーフにも見える綺麗な顔立ちをしている。そのハッキリとした顔立ちとは裏腹に、おっとりとした性格で滅多に感情的にならない。

沙羅や栞に比べて、男性に対するリクエストも少なく、全て決めてくれるリード系男子がタイプ。たまに発するワガママが男心をくすぐる。

3S(スリー・エス)からは

「早希子はその気にさせるのがうまい。」

と言われる。意識はしていないが、彼氏は途絶えたことがほぼなかった。

表参道交差点みずほ銀行前19:30。待ち合わせの人々で混雑する時間帯。早希子の元へ、良輔が額に汗を浮かべながらやってきた。

「ごめん!待たせた!先輩に捕まって!」

身長は180cmほど、焼けた肌。
普通部、塾高、大学とずっと野球部のエースで、今は総合商社に勤めている。

いつも優しくて何でも合わせてくれる。一緒にいても気が楽で、定期的に2人でご飯に行く関係が、学生時代から続いている。

幼稚舎男子以外で一番仲の良い男友達だった。
少なくとも早希子は友達としか考えていなかった。

告白される時までは。


普通部・良輔が幼稚舎・早希子に挑む!2人の恋の行方は何処へ?


普通部男子。




一流企業の会社員や医者、資格業などいわゆるホワイトカラーの息子が多い。

普通部、塾高と男だけの環境で6年間を過ごす彼らは、多感な時期に女子と隔離されるため、「女の子たるもの」という固定観念が強く、夢見がちボーイが多い。

硬派、一途さでは定評がある。彼女には優しく、邪険に扱うことはない。学生時代から長く付き合って、そのままゴールインするパターンが多い。

普通部男子の多くは、中高を部活漬けで過ごし、大学でも体育会に所属するため、つるむ友達はほとんど変わらない。

旧友との友情を物凄く大切にする一方、いつまでも体育会・男子校ノリが抜けず、ロマンチックさ、細やかさにかける。

早希子との会話も殆どが、良輔が野球部メンバーと遊んだ時の話。2人のデートはいつもそれ以上でも以下でもない。

でも、今日は違った。いつもはカジュアルなお店でご飯だけ食べて終わりなのに。

二軒目は『montalk』。間接照明が素敵で、ブルーチーズのケーキが美味しい。こんなお店知ってるんだ。そんなことを思っていたら、いきなり良輔から質問が飛んで来た。

「ねえ、俺のこと、友達だと思ってる?」

「うん。違うの?」

「俺、早希子のこと、好きだから。友達と思ってないよ。」


突然の告白に戸惑う早希子。そんなタイミングでNY高からの刺客現る!?


驚いて声も出ない早希子。大きな目が余計見開いた。

そんなとき、早希子のスマホが鳴った。画面には、藤沢ケントの文字。




ー最近早希子にアタックしてるって噂のNY高のあいつか。ー

良輔の頭には、どうにも好きになれないNY高軍団の顔が浮かんだ。



早希子は慌てた様子で電話を取った。

「もしもし?ケント?もう着いたの?」

「うん、表参道。え?ジミーチュウの前?分かった。ちょっと待ってて。」

電話を切ると、早希子はバッグを手に取り良輔に話し出す。

「ごめん!!なんか、友達が、海外旅行のお土産を渡したいらしくって、すぐそこまで来てるの。その電話。わたし行くね!」

「そっか。今日の話、返事はすぐじゃなくていいから。でも、ちゃんと考えてみて。」



早希子の素直さが好きだった。屈折していなくて、その笑顔を向けられたら何だって許してしまう。

合コンで会うような自分のことを商社マンとしか見ていないような女の子たちとは違う。でも、何だかフワフワしていて、掴みきれないところが多く、振り回される。

現に、告白した直後でも、他の男の元に行こうとしている。賢い女の子なら隠すだろう。良くも悪くも早希子らしい。

自分の気持ちを抑えて8年間、男友達としてそばにいた。それなのに、突如出現した同級生の名前…

NY高出身の藤澤ケントがどういうやつかは知らない。でもその辺の同級生にだけは早希子は渡しちゃいけないと思った。



良輔からの告白は完全に想定外だ。8年来の友情を揺るがす出来事に、早希子は戸惑った。

簡単に答えは出ない。その理由はもう一つある。

早希子の脳裏にはケントの姿があった。

次週11月1日火曜更新
NY高の実態とは?そして、早希子を巡る行方はいかに…?!

【これまでの慶應内格差】
Vol.1:エリート街道を歩むメガバンカー、どんなに背伸びしても所詮外部生?!
Vol.2:婚活市場最強スペックの人気アナ、栞。幼稚舎出身の男を前に、人生初の挫折?!