豪快なフルスイングを武器にホステスV!その裏には特有の練習法があった(撮影:秋田義和)

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 穴井詩の優勝で幕を閉じた「ゴルフ5レディス」。ノーボギーで迫ってくる申ジエ(韓国)、イ・ボミ(韓国)という2人の実力者に3打差をつけて退け、プロ初勝利。プロ入りから契約を結んでいる株式会社アルペンが主催する大会で見せた“最大の恩返し”について、上田桃子らを指導するプロコーチの辻村明志氏が『深層』を語った。
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■ディスクに乗ってバランスの良いスイングを作り出す
「なんといっても彼女の特徴は飛距離を活かした高いパーオン率。今年はトップ10から外れてしまっていますが、2014年は8位、2015年は7位と軒並み高い数字を記録しています。長いアイアンでもグリーンに乗せていくことができ、かつスピンをかけて止めることができるからこその順位だと思います。それが最大の武器です」(辻村氏)
 その飛距離を生み出しているのは豪快なフルスイング。ただし、力一杯振ることはスイングのバランスを失いかねないといった側面もある。それを補っているのは練習法だという。
「彼女がプロ入り後から取り組んでいるのが、それぞれの足をバランスディスク(※編集部注:ビニール製で、大きさはだいたい直径30センチくらい、重さが1kg前後の円盤のようなもの)。中に空気が入れられるようになっていて、その上に乗るとフワフワとしていてバランスがとりにくい状態になる)の上に乗せて、ドライバーを5割ほどの力で打つというものです。バランスの良いスイングをしないとまず打つことができない練習で、低重心のスイングを作っているのです。思い切り振り抜いたときに下半身が粘れずに暴れてしまうと、上体が高くなり無駄な動きが目立つようになります。この練習を繰り返すことで、足裏でしっかりと重さを感じ無駄のない静かなスイングができるようになっているのです」。
「ただし、彼女のスイングは身体の強さがあるから、あれだけ豪快に振れることを忘れてはいけません。トレーニングを見たことがありますが、女性では中々できない懸垂をスイスイとやっていました。パワーあふれるショットは体幹をフルに活かしたモノで、試してもらえばわかると思いますが簡単に真似できるものではありません。強靭な身体があってこそできる芸当なのです」(辻村氏)
■気負わずプレーすることで生まれた“自分の”ストローク
 穴井は試合後『今まであと一歩届かなかった悔しい経験を何度もしてきたことで、今週は変に気負うことなく“楽しく”プレーすることができました』と語っていた。それが如実に表れたのが、申ジエ(韓国)、イ・ボミ(韓国)の2人を退けたパッティングだという。
「追いかけてきた2人はノーボギーでしたから、『自分のゴルフはできた』と言っていいでしょう。そんな実力者たちに勝つことができたのは6バーディを奪ったパッティングにあることは明白ですが、特に注目してもらいたいのは彼女のストローク。これまで優勝争いに敗れていた時は、プレッシャーから体が固くなり、ヘッドが出なくなっていました。つまり本来のストロークができなくなっていて、ショートしたり、しっかり打とうとしてオーバーしたりしていました。それが昨日は終始力の抜けたアドレスから、いつも練習グリーンでするようなストロークで打てていました。緊張感の中でも余裕を持ってプレーできたからこその勝利だったと思います」(辻村氏)
 気持ちの落ちつきが生んだ好プレー。初優勝まで9年と時間はかかったが、実力者2人に競り勝った今回の勝利は大きな自信になったに違いない。
解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。コーチ転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、濱美咲らを指導。今季は上田の出場全試合に帯同し、様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。

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