理科が得意になるにはスポーツを(写真はイメージです)

写真拡大

女子は理科が苦手という固定観念があるが、思春期に大いにスポーツをした女の子は学校の成績がグングン上がり、しかも理科が得意になるという研究がある。

面白いことに、男子でもスポーツをした子は成績はよくなる傾向があるが、女子ほど顕著な効果はみられないという。なぜ、スポーツ女子はリケジョ(理系女子)になるのだろうか。

運動すると男子より女子の方が成績は上がる

この研究は、米国と英国の科学者たちの合同チームによって、英国のスポーツ医学誌「ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・スポーツ・メディシン」(電子版)の2013年10月22日号に発表された。

子どもがスポーツをすると、脳が刺激され知能が発達することは多くの研究で明らかにされてきたが、具体的に学校の成績にどんな影響を与えるかについて、長期間調べた研究はなかった。

そこで、研究チームは1991〜1992年に生まれた男女4755人(男子45%・女子55%)を対象に、11歳の時に約1週間かけて日常生活の身体活動と運動強度を測定した。歩数計を進化させた活動量計を腰につけ、1日の歩数や動きの加速度、運動時間、強度などのデータをパソコンに送り、記録した。調査の結果、1日あたりの中高程度の運動時間の平均は、男子で29分間、女子で18分間しかなく、推奨されている1日60分をはるかに下回っていた。

また、学業成績については、義務教育の一環として実施される全国統一学力試験を使い、11歳、13歳、16歳の時点での国語、数学、理科の結果が調べられた。その結果、次のことがわかった。

(1)11歳の時点で、男女とも中高程度の運動時間が長い子ほど3教科の成績がすべてよい傾向がみられた。特に活発な女子ほど理科で好成績を収めていた。

(2)13歳の時点でも、11歳時点と同様の傾向がみられた。

(3)16歳の時点でも同様の傾向が続いたが、特に女子が、活発な子ほど好成績になる割合は男子よりいっそう高くなった。11歳の時点での中高程度の運動時間が、男子では1日あたり17分、女子では12分増えるごとに試験成績が1ランクずつ高くなった。ここでも女子の理科の成績への影響がもっとも顕著だった。

脳が最も発達する思春期に女子は体を動かさない

この結果について、研究チームは論文の中で「今回の研究は、理系科目の女子学生を増やそうとする政策を進めている英国政府や欧州委員会にとって重要な意義を持っている。思春期の女子生徒に大いにスポーツをするよう奨励することを検討すべきだ」とコメントしている。ただし、なぜ活発にスポーツをする女子に限って理科が得意になるのかという点に関しては、「身体活動が脳の発達に与える影響は、男女差が存在するようだ」としか指摘していない。

この疑問に答えてくれそうな研究が、同じ2013年にスペインで発表された。徒歩で学校に通う10代の女子は、自動車やバスで通う女子よりも知能テストの成績がいいという結果が出た。13〜18歳の男女約1700人を対象にした調査だ。特に15分以上かけて歩き、運動量が多い女子は最も成績がよかった。面白いことに、男子では徒歩通学組と自動車通学組との間で、知能テストの成績にまったく差がみられなかった。

運動量が成績に影響を与える傾向は、女子だけにみられる特有の現象なのだ。この調査の研究者はこう説明している。

「思春期は、脳の成長スピードと柔軟性が人生で最大になる時期です。この時期にスポーツを盛んに行って脳を刺激することが極めて重要ですが、同時に、特に女子の場合は、運動量が最も少なくなる時期でもあります」

思春期の女子は、初潮を迎え、胸がふくらみはじめ、スポーツから遠ざかりがちになる。この時期にスポーツをする、しないが、脳の発達の面で男子以上に差が出てしまうらしい。