「セレクトショップ」と言ったら洋服だったり、もしくはシューズだったり眼鏡だったり、言わば"ファション系"を連想しがちですよね? でも、実はこんなセレクトショップもあるんです。

医療福祉系のお店が三茶の商店街の中にある


7月7日、世田谷区にオープンした「HALU」は国内初の"医療福祉系セレクトショップ"を謳ってます。しかも、三軒茶屋の商店街内に出店という素晴らしすぎる立地を誇っているとのこと。

というわけで、私もこのショップへ遊びに行ってきました。


あらぁ、オシャレ!

ちなみにここは、医療福祉エンタメ団体であるNPO法人「Ubdobe(ウブドベ)」が運営しているショップ。では同店店長であり、Ubdobe理事である舘野友仁(たてのともみ)さんに話を伺いましょう。そもそも、このセレクトショップをオープンしたきっかけは?
「元々、私たちは医療福祉の活動を8年ほど行っており、クラブでがんをテーマにしたイベントや、子どもが作る野外フェス等を開催していたのですが、イベントのみだとどうしても単発的なものになってしまうので、医療福祉情報を継続的に皆様の日常へ呼びかけたいと思い、基地として発信できる場所=ショップを出店いたしました」(舘野さん)

障害者にやさしく、そしてオシャレなユニバーサルデザイン商品を数多く販売


では、このショップでどんな物が販売されているのかを見ていきましょうか。


どうやら、ユニバーサルデザイン(障害や年齢にかかわらず全ての人が使いやすいようにつくられる)の商品と福祉作業所で作られている商品の2種類がラインナップされているようです。

さあ、まずは『てまる』(税込2,484円)という名のお椀からご紹介。よく見ると、深いふちがお椀内側に施されています。


例えば片手しか使えない人がこのふちを利して料理をすくい上げると、最後のひと口までキレイに食べることができるようになる……という一品です。


健常者にとっても便利じゃないですか!?

「でく工房」なるブランドが製作したコップ(税込3,240円)も面白い。非常に大きなスペースを取った持ち手が目に付きますが、握力が弱い人はこういう風に手を入れるだけで簡単に持つことができます。



こちらは、『opuna』という名のナイフ・フォーク(税込2,160円)。


持ち手が妙にいっぱいありますが、だからこそ持ち方に色んなバリエーションがあるんです。"握る"もできるし、持てる人は持ってもいい。


「私が最近発明したのは、この持ち方です。なんか不安定に見えますが、重心があるので食べ物をすくう方向に持っていきやすいし、そのまま食べられます」(舘野さん)


持ち方は自由だし、自分で発明したっていい。握力が弱い人は力が弱い部分も人それぞれなので、その人に適した色んなバリエーションの持ち方をしてください……というキッチンツールです。
「ご本人のご希望に合わせ、角度を変えてお渡しできるものも在庫の中にはございます。その方に食べやすい形でカスタマイズしていただければ幸いです」(舘野さん)

社会福祉士や看護師といった面々が悩みを聞いてくれる相談窓口を設置


実は同店には、もう一つの大きな"売り"として「コンサルティングコーナー」も設けられています。


予約制で、社会福祉士や看護師、介護福祉士らが相談に乗ってくれる、言わば"相談窓口"。
「"道案内"みたいな役割になりたいと思っています。例えば『離れた場所に一人暮らししている親が住んでいて、訪問介護を入れた方がいいのな?』といった日常の悩みをここで受け、専門職が『そういうお悩みならあそこへ行った方がいいですよ』と医療福祉サービスなどにつなげる。私たちが答えを出すというより、答えへ辿り着くための"道"をご案内するイメージです」(舘野さん)

例えば行政の窓口へ相談に行くも、そこで「○○へ行ってください」と別の窓口を紹介され、言われた通りに行ってみるとどうもそこは自分の悩みに合致する窓口ではなかった。こんな"たらい回し"に遭わないよう、最初から問題に適した場所を案内し、スムーズな問題解決の手助けをしてくれます。
「行政では、窓口の方も対応しなければいけない量がかなり多いので、本当に表面的なご案内しかできなかったり、どうしても持ってきたお悩みの部分のみへのアプローチがメインとなってしまうという話も聞きます。もう少しプライベートなところについて知ることができたら、問題の本当の原因を見つけられるかもしれない。そこまでは、行政の方は介入したくてもできないことが多いんですよね」(舘野さん)

仕事とプライベートの枠を越え、悩みの根本的な原因にまでアプローチ。そんな相談所機能も、このショップには備わっています。

医療福祉関連のマンガや小説が置いてあり、ガッツリ読んでていい


そして、もう一つ。店内の「インフォメーションコーナー」には、医療福祉関連の書籍が揃っていました。


福祉の知識を学ぶことのできる書籍、Ubdobeが集めた世田谷の福祉情報、全国のバリアフリー旅行情報の資料がありつつ、医療福祉がテーマのマンガ等も置いてあります。
「『フラジャイル』は、最近ドラマにもなりましたよね。長瀬智也さんが主演の、あの『フラジャイル』です(笑)」(舘野さん)
へぇ〜! でも、こんなマンガや小説があったら、読みふけっちゃいそうだな……。
「そうですよね。でも、読みふけっていただいてもいいと思っていて(笑)。学生時代ってドラマやマンガに憧れるじゃないですか? それと同じ感覚で、医療福祉を就職の一つとして考えてほしいと思っているので、そのきっかけとしてエンターテイメントと融合しています」(舘野さん)

ちなみに将来的にはこのコーナーで、医療福祉関連の映画の紹介も行う予定だそう。
「ウチではDVDのレンタルはできないので、法律面を整えつつ、できれば上映会をやりたいなあと思っています」(舘野さん)
ラインナップには、『最強のふたり』(車いすで生活する大富豪と介護者として雇われた黒人青年による友情を描くヒューマン・コメディー)だったり、石倉三郎さん主演の『つむぐもの』(石倉扮する職人が脳腫瘍で倒れ、韓国人女優のキム・コッピ扮する女性がサポートするストーリー)などを想定しているようです。

"悲しいこと"をきっかけでしか社会福祉に興味を持てないのは悲しい


「この辺は大学が多いじゃないですか? だから、大学生が図書館や本屋さんに行ったり、カフェに行ってゆっくりする……みたいなテンションでお越しいただきたいと思っているんです」(舘野さん)
意味なく、「何かあるかな?」と普通のショップのようにブラっと覗きに入る……というのがこのショップの理想。そう考えると、三軒茶屋の商店街という立地はパーフェクトに近いです。

またショップは2階にあるので、車椅子の人が上がれるよう専用の福祉機器が用意してあります


外の看板には「車椅子の方はお手伝いしますのでお電話ください」と、呼びかけとともにお店の電話番号が。


※雨の日や店舗スタッフが1名の際は、安全性を考慮して機器の利用を控える場合もあるとのこと。

でも、なぜこんなにも入りやすい場所づくりを心がけているのでしょうか?
「自分のご家族が亡くったり、自分の体に何かが起きたり、悲しいことがきっかけになるのではなく、日常の中で医療福祉に触れる機会があれば、その後の対応の幅が全然違うと思うんです。悩みがある人にはもちろん来ていただきたいですし、普段は医療福祉と関りのない方のきっかけづくりとしてもお越しいただけたらうれしいです」(舘野さん)

店内、すごくオシャレな雰囲気が漂っているので、ブラっと立ち寄るには最適だと思いますよ!
(寺西ジャジューカ)