「タクシー流鏑馬」や「裏ヨコハマ探索ツアー」など、一風変わった企画をおこなっているタクシー会社・三和交通。2015年夏の「心霊スポット巡礼ツアー」はテレビ各局で取り上げられ話題となった。今年もまた同様のツアーを開催すると聞き、一足先に参加してきた。



今回参加したのは、全部で6つあるコースのうちの「東京怪談名所ツアー(夜コース)」。東京都内にある“いわくつき”となったスポットを案内してくれる、言わばノーマルコースだ。



今回案内してくれるのは、ドライバーの浦田さん。まずは新宿駅からスタート。
「東京は正直、それほど怖くないかもしれないですね。どこに行っても明るいし、人も多い。基本的には、タクシードライバーのあいだで『なんとなく嫌だね』と言われている場所をめぐります」

不自然な人影が見える「千駄ヶ谷トンネル」


JR千駄ヶ谷駅の近くにある、都内でも屈指の心霊スポットが「千駄ヶ谷トンネル」だ。



東京オリンピックのために建設されたトンネルだが、その上には墓地が広がっている。お墓の下に通してしまったので、眠っていた人が怒って出てくるのでは? という噂が広まった。



「運転していると、窓ガラスに手の跡がついた」
「女性が逆さにぶら下がっているのが見えた」
といった噂が絶えない場所だ。確かに天井の補修跡(?)が若干うす気味悪い。

ドライバーが嫌がる「南元町のトンネル」


次のスポットへ行く途中、浦田さんが「ここ、ビートたけしさんがバイクで事故を起こしたというカーブですよ」と教えてくれた。こういうプチ情報を入れてくるあたりが、タクシーツアーならではである。



その後、南元町のトンネルへ。タクシードライバーの誰もが怖がるという場所だ。
浦田さん曰く、ここの壁をバックに記念撮影をするとかなりの確率で心霊写真が撮れるという。



筆者も実際に撮ってみた。補修の跡や落書きが入り乱れ少し気持ちが悪い。(残念ながら霊的なものは写らなかった)



まだ夜8時半だが、車も人もまったく通らない。ただ照明は明るいので、それほどの怖さはなかった。



冥界への入り口「青山墓地」


「○○墓地まで、という女性を乗せた。途中で、『お客さん、どの辺まで行きますか?』と声をかけると後ろには誰もいない。よく見るとシートがびっしょり濡れていた」



誰もが知っているタクシードライバーの怪談だが、この話の発端が青山墓地である。



この青山墓地、意外にも24時間だれでも出入り自由である。しかし、さすがに夜に訪れる人はいないだろう。墓地の向こう側には六本木ヒルズが見える。

筆者が撮影していると、「写真を撮るカメラマンの後ろに人影が見える、なんて話もよく聞きますね」と浦田さん。さすがタクシードライバー、トークも上手い。



実は“いわくつき”の場所「東京タワー」


ライトアップされた東京タワー。もともと増上寺の敷地内に建てられたため、墓地をつぶしてしまったという。そのため一部では「呪われた場所」とも言われている。建設されたのは朝鮮戦争が終わったばかりの頃。使われている鉄骨は、アメリカから払い下げになった戦車を溶かして作ったそうだ。



心霊というよりパワースポット「愛宕山」


東京23区で一番高い山と言われている愛宕山。その山頂にあるのが、徳川家康が建てた愛宕神社である。



終戦時、ここで右翼団体の数十名が「敗戦無念なり」と手りゅう弾自殺をした、という話が残されている。池には船が浮かんでおり、「奥に軍服を着た兵隊さんが見えた」という噂もあるらしい。




「出世の石段」と呼ばれている階段。下から見てもかなり急であることがわかる。実際に昇り降りしてみたのだが、高所恐怖症にとっては別の意味で怖い石段だった。




日本で一番呪われた場所「首塚」


千年以上にわたって祟りが続いているという、平将門の首塚。



戦いに敗れた将門の首が、切断された胴体を求めて空に舞いあがり、数ヶ所に落ちたとされている。そのなかで最も有名な伝承地がこの場所である。



この首塚は大手町の一等地にある。周辺のオフィスでは「首塚を見下ろすように机を配置すると祟られる」、「お尻を向けてはいけない」ということで、窓を作らないなど特殊な施工がなされているという。

首塚の祟りに関しては過去、数々の事件がある。関東大震災で全焼した大蔵省庁舎の再建のため首塚を壊そうとしたところ、時の大蔵大臣をはじめ関係者十数名が亡くなり、「首塚を荒らしたから祟られた」と将門の怨念説が大蔵省内で広まった。また、戦後GHQが首塚の取り壊しをはじめたところ、ブルドーザーが横転し死者が出たという話も残されている。

首塚は倒れないよう厳重にガードされており、ものものしい雰囲気だ。




首塚の境内には蛙の置物が奉納されている。将門の首が飛んで帰ったことから、カエルにひっかけたご利益があるとされている。

「左遷になった会社員や行方不明になった子供が無事帰ってこられるように、蛙をそなえているらしいですよ」と浦田さん。



すぐ横では再開発工事が行われていたが、首塚の一角だけが手つかずで残されている。
「未来永劫、だれも首塚を壊すことはできないでしょうね」 

筆者も東京に住んで20年になるのだが、初めて訪れる場所ばかり。歴史を学ぶとともに、ほどよい怖さも感じられるツアーであった。無事にツアーを完了すると、勇気ある参加者には「終了証」も発行されるとのこと。

ちなみに今回の東京怪談名所ツアー、すでに申し込み受付は終了している。しかし、三和交通さんでは、通年で開催する案も出ているそうだ。気になる方は続報を待とう。

※今回紹介した『怪談』は、あくまで一説です。

三和交通「夏企画ツアー 2016」
http://www.sanwakoutsu.co.jp/special/2016summer/index.html

(村中貴士/イベニア)