一般社団法人いっぱんじん連合は「深夜徘徊イベント」を定期的に開催している。一晩中ただ都内を歩くだけのイベントだが、これまでに330名以上が参加した。主催者の宮原直孝さんと“徘徊”しながら、深夜徘徊の魅力について聞いてみた。



夜中に徘徊しながらインタビュー


徘徊するルートは宮原さんにお任せした。指定された待ち合わせ場所は勝どき駅。ここからお台場まで歩きながらインタビューを行った。

――深夜徘徊を始めたきっかけを教えてください。
2004年7月11日、第22回参議院議員通常選挙だったその夜。テレビは選挙のことばかり。ネットにもラジオにも飽きて、何となく散歩しようと思い、夜の10過ぎに家を出たのがきっかけでした。本当に、特に理由もなく、何となくでしたね。



――今回、このルートを選んだ理由はなんですか?
大学の頃からよく歩いていたルートで、今でも好きなんです。基本的にずっとまっすぐですし、晴海通りを渡ると、一気に人が少なくなって「始まるな」って感じでワクワクします。マンションやビルの光もあって、いい感じですね。



――深夜徘徊の魅力はどんなところでしょうか?
ひとことで言うと、非日常ですね。「サブカル・エンタメ・運動・メンタルケア・観光」といった、さまざまな要素がごちゃまぜになりつつ、一度に体感できる点だと思います。また、ワクワクする人もいれば、逆に感情の起伏が少ない時間を過ごせる人もいるし、人によって感想が違うのも面白いですね。



――深夜徘徊を楽しむためのポイントを教えてください。
・妄想力:あのマンションの最上階、スッゴイ怪しいパーティーやってるんじゃないか?とか、この時間までオフィスに電気がついてるとか、勝手に想像しながら楽しみます。



・土地の歴史や雑学:普段歩いているときにも、気になる場所があれば調べています。

・視線をよく動かす:いろいろな発見があって面白いですよ。何人かで歩くと、自分では気づけなかったものに気づけます。



・現実を忘れる:僕は歩いているとき、あまり日常のことを考えないんですよ。テーマパークに来たような非日感がポイントでしょうか。テーマパークのアトラクションって、並んでいるときも面白い仕掛けがあって楽しいじゃないですか。深夜徘徊中も「あれはなんだ? あそこにあんなものがある!」とテンションが高いですね。歩道のライトアップとか、マンションのレトロなデザインとか、いろんなものに心惹かれます。


・冷静にならない:これは単純に「なんでこんな時間に、こんなところ歩いているんだろう……」と思って素に戻ってしまうと、ツライからです(笑)。

変わる東京を眺めながら、ひたすら歩く。


――これまで10年以上「深夜徘徊」をしてきて、何か変化はありましたか?
街の変化はすごくありますね。新しい建物がどんどんできています。あとは、夜中に走っているランナーも増えました。





工事現場のフェンスには造花が飾られていた。宮原さん曰く「こういうのも、すごく気になりますよね。昼間まじまじと見ていたら変な人ですけど、夜なら存分に眺められます(笑)」


いつの間にか有明を抜け、東京ビッグサイトにやってきた。まっすぐに建物に向かう道がライトアップされ、巨大な神殿に続く参道のようだ。


約一時間半かけてゴールのお台場海浜公園に到着。歩いた距離はおよそ6キロ。対岸には東京の夜景が輝く。この場所は宮原さんにとって思い出の場所だ。


「上京したばかりの自分にとって、ここは“ザ・東京”の景色でした。ラジオをよく聞いていたので、その電波塔である東京タワーが海の向こうに見えるし、振り返ればフジテレビもあるし。よく夜中に歩いてきて、明け方まで砂浜に座ってぼんやりしていましたね。今でもここに来ると感慨深いものがあります」



深夜徘徊のススメ


最後に宮原さんに深夜徘徊をしてみたい人へのメッセージを聞いた。



深夜徘徊に不安がある人は、まず僕たちのイベントに参加してもらうのもありです。イベント参加や、ガッツリとした深夜徘徊に抵抗があるなら、まずは最寄りの公園からスタートしてみると良いのではないでしょうか。コンビニ袋を持っていれば、大抵許される気がします。

また、ちょっと怖いなら、仲の良い暇そうな友達を誘うのはいかがでしょう。最初は怪訝な顔をされるかもしれませんが、1、2時間歩いていれば、何となく良い感じになるはずです。


次回の深夜徘徊イベントは、7月ごろを予定しているとのこと。深夜徘徊に特にルールはない。自由に気ままに夜の東京を歩いてみれば、違った顔が見えてくる。

(篠崎夏美・イベニア)