ゴールドのパッケージが眩しい"限定品"


先日、静岡に行ったとき、箱詰めのツナ缶「シーチキン とろ」という商品を見つけた。なんでも、マグロ全体のわずか1%しかないとろ肉を使っているのだという。



販売しているのは、静岡市に本社をおく「はごろもフーズ」。ちなみに、"シーチキン"という言葉は同社が商標登録しており、一般的には"ツナ缶"などと呼ばれる。

いったい、ふつうのシーチキンよりどれくらいすごいのか? 商品を販売するはごろもフーズの広報担当である田中さんに話を聞いた。

40年以上のロングセラー商品


実は同商品は、かなり昔からあるのだという。
「リニューアルを何度かしていますので、現在とまったく同じものではありませんが、“シーチキン とろ”という商品自体は、1975(昭和50)年7月に発売されました」(田中さん)

なんというロングセラー商品! それにも関わらず、筆者は見たことがなかった。やはり、ふつうのシーチキンと違って、どこのスーパーにも置いてあるというわけでもないらしい。

「とろの部分は1匹のビンナガマグロから2缶くらいしかとれず、数量に限りがありますので」(田中さん)
パッケージに“限定品”とうたっているのもそのため。ちなみに全国のこだわり商品を扱う店や高級スーパー等でおもに販売しているそうだ。



商品誕生のきっかけについては、あまりに昔のことなので資料も残っておらず、正確なことはわからないそう。あくまで担当者の想像レベルだが、「一匹のマグロを無駄なく使おうと思ったとき、とろの部分の活用方法のひとつとして生まれた商品ではないか」とのこと。

これがシーチキン!? 切り身状のカットにびっくり


とろ肉という希少な部位を使っていることに加え、手詰めというのもこだわり。
「通常の製品は機械で大まかに詰めて、最後に人の手で調整しているのですが、"シーチキン とろ"は、一缶ずつ人の手のみで詰めています」

中を見て、納得。一般的なシーチキンはフレーク状などが多いが、なんとも美しい切り身状に並べられていたのだ。



気になるのはその味だ。「そのまま食べるのが素材のうま味を一番感じられます。まずはそのまま食べて味を感じていただければ」というアドバイスにしたがって食べてみると、しっとりジューシーな食感にびっくり。濃厚なマグロのうま味が後を引き、いくらでも食べられそう。このままでも充分おいしいが、わさび醤油と合わせたり、マヨネーズを付けて合わせたりするのもアリ。個人的にはわさび醤油につけるのが気に入った。



価格も高級なので、特別なおつまみなどに適しているが、もちろん料理に使ってもOK。炊き込みご飯などのアレンジも楽しめる。

最近は巷の高級缶詰人気の追い風をうけ、メディアで取り上げられることも増えているそう。ただ、そもそも大量に作れる商品ではないので、“ものすごく売り上げが伸びている”といったことはないが、リピーターやファンは少なくないという。

マグロとカツオ、どちらがポピュラー?


「シーチキン とろ」はビンナガマグロという、高級なまぐろを使っているのも特長。ふつうのシーチキンには、キハダマグロ、もしくはカツオが使われることが大半。ツナ缶というくらいだから、マグロを使っているイメージが強い人もいるかもしれないが、カツオもかなりポピュラーなのだ。
「割合としては、マグロのほうが若干多いくらいでしょうか」(田中さん)

マグロは肉がやわらかくコクがあり、カツオは出汁などに使われる魚であることもあって風味やうま味を感じる人が多いのだとか。

楽しみ方も多彩なシーチキン。なかでも希少な「シーチキン とろ」は見つけたらぜひ試してみてほしい。
(古屋江美子)