北海道新幹線開業にともない、上野と札幌間を結ぶ寝台特急列車「カシオペア」が定期運行を終了した。3月19日に上野駅を出発した札幌行の下り最終列車では、車内に不審物が発見され、点検のため列車を停止させた影響で運行が2時間ほど遅れるトラブルが発生した。不審物の正体は乗客が置いたとみられるICボイスレコーダーだった。

鉄道ファンの種類は多様


鉄道ファンには、さまざまなタイプがいる。代表的なものは写真撮影を行う「撮り鉄」だろう。全国各地の路線を乗り潰す「乗り鉄」と呼ばれる人たちもいる。これは「撮り鉄」とも重なる部分があるかもしれない。架空の路線を設定して楽しむ「架空鉄」や、インドアで鉄道模型を楽しむ「模型鉄」などもいる。さらに、音に重きを置く「音鉄」(おとてつ)と呼ばれる人たちがいる。今回「カシオペア」車内に、ICレコーダーを設置したのは「音鉄」によるものだろう。

「音鉄」が録音する内容はさまざまである。駅構内の発車メロディーや、車内アナウンスのほか、さらに「カシオペア」のように、列車そのものの音を録音するファンもいる。

音を録るならば、ビデオを使えばいいと思うかもしれない。だが、ビデオは「撮り鉄」に属しジャンルが異なる。さらに、ビデオの「撮り鉄」の中には、列車の先頭にカメラを設置し前面展望映像を録るものや、車窓の風景を撮影するものもいる。「音鉄」の場合は、映像なしで音のみで旅情を味わう。あくまでも音と動画は別物なのだ。

「音鉄」の歴史は最近はじまったものではない。かねてより蒸気機関車の音を録音したレコードが発売されていたし、現在でも、鉄道関係のCDは多く存在する。さらにネット上でも、録音データが多く公開されている。中には鉄道会社自体も所有していないような音も含まれており、アーカイブ化すれば貴重な記録となるかもしれない。

鉄道ファンといってもひとくくりにはできない。実は鉄道雑誌というのは、現在でも20誌近くが定期発行されている。ファンの年齢層も、子どもから、中高年、老人まで幅広い。親子で鉄道ファンという人たちもいる。ここまで世代を越えて共有できる趣味もそうそうないだろう。性別は男性が圧倒的に多いが、鉄道好きな女子を現す「鉄子」も登場している。

だが、趣味として楽しむ分には良くても、他人に迷惑をかけてしまうのは考えものだろう。これまで、線路内への立ち入りなど「撮り鉄」のマナーが問題視されることがあったが、期せずして「音鉄」も注目されてしまった。
(下地直輝)