中国メディアの新浪網は7日、中国が建造中の航空母艦について、米国軍では中国がウクライナから購入した「遼寧」と同様にアドミラル・クズネツォフを基礎にしたものであり、米国のニミッツ級やフォード級と同程度の航空作戦能力とは無縁との見方が出ていると紹介した。(イメージ写真提供:(C) Alexander Ogurtsov/123RF.COM。バレンツ海のコラ湾に停泊するアドミラル・クズネツォフ)

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 中国メディアの新浪網は7日、中国が建造中の航空母艦について、米国軍では中国がウクライナから購入した「遼寧」と同様にアドミラル・クズネツォフを基礎にしたものであり、米国のニミッツ級やフォード級と同程度の航空作戦能力とは無縁との見方が出ていると紹介した。

 米海兵隊のヴィンセント・スチュワート中将が2日、米連邦議会下院で述べたという。スチュワート中将は、中国の空母艦隊は少なくとも現在、中国周辺海域、あるいは南シナ海の9段線内の安全を確保するのが主要な目的と主張。中国が現在保有する唯一の空母「遼寧」は5万5000トンで、米国のニミッツの半分程度の大きさとしてきした。

 さらに、航空機を射出するカタパルトがないので、航空機の離陸重量には大きな制限があると指摘。中国は2隻目の空母を建造しているが、遼寧と同様にソ連のアドミラル・クズネツォフを基礎にしたもので、「中国は蒸気式にせよ電磁式にせよ、カタパルトのない中国の空母はスキージャンプ方式であり、ニミッツやフォードのような、平らな甲板の空母を保有することはできない」と論じた。

 米国の軍事・外交専門誌の「ザ・ナショナル・インタレスト」はスチュワート中将の発言を引用した上で、中国の海軍の発展は、時間と共に進行しつつあると指摘した上で「中国経済の成長は鈍化しつつある。中国当局が軍事力強化の歩みを止めることはありえないが、軍事力の増強はある程度、鈍化するだろう」との見方を示した。

 新浪網は、「遼寧」は研究・訓練用の空母であり、ニミッツやフォードと比較するのは「明らかに不公平」と主張。米国は空母運用で最も経験のある国で、「過去100年ほど独走状態」にあったと論じ、中国は「本格的に空母を研究・製造しはじめてから10年に過ぎない」と主張。

 新浪網は、中国は空母分野で「小走り」という安定した戦略を取っており、「遼寧を消化・改良してスキージャンプ式甲板の空母を作り、次に通常動力の平らな全通甲板を持つ空母、最終的には大型原子力空母に発展させる」と主張した。

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◆解説◆
 上記記事は触れていないが、世界で初めて空母の集中運用を行ったのは日本海軍だ。第二次世界大戦ではそれまでにも1940年11月に、英空母から発進した雷撃機21がイタリアの軍港で、停泊中のイタリア戦艦1隻を撃沈したことがあるが、それほど注目されなかった。

 日本は1941年12月8日未明、「赤城」、「加賀」、「蒼龍」、「飛龍」、「瑞鶴」、「翔鶴」の空母6隻、さらに戦艦2隻などからなる大艦隊をハワイに接近させ、空母から発進させた航空機で真珠湾軍港に停泊していた米戦艦4隻を沈没させるなどの戦果を得た。

 真珠湾攻撃後も、「戦艦は停泊中だった」として航空母艦の戦力にまだ懐疑的な声があったが、日本海軍は2日後の12月10日のマレー沖海戦で、空母から発進した攻撃隊が英海軍の巡洋戦艦「レパルス」と戦艦「プリンス・オブ・ウェールズ」を撃沈した。このことで、戦艦に対する航空母艦の優位性が最終的に認められることになった。

 ただしその後、空母は攻撃に対して防御が弱いことも判明し、当時の日本海軍のような「空母の集中運用」は、リスク分散のために避けられるようになった。

 中国が日本の防衛力増強に極めて神経質になるのは、「かつての日本軍の恐ろしさ」が骨身に染みているからとも言える。(編集担当:如月隼人) (イメージ写真提供:(C) Alexander Ogurtsov/123RF.COM。バレンツ海のコラ湾に停泊するアドミラル・クズネツォフ)