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「ブラック社畜が労基に行った話」と題するブログの記事が話題になった。企業の営業職として働く筆者が、理不尽な労働環境をなんとかしようと、労働基準監督署に相談したにもかかわらず、職員からまともに相手をされなかったという体験談だ。

ブログによると、筆者は会社の本社がある新宿の労働基準監督署に出向き、労働環境や未払い賃金、匿名でアクションを起こしたいことを説明したところ、相談員から「(会社は)アウトですね」と言われたものの、勤務地が埼玉の営業所だったため、管轄の労基署に行かなければならないことが判明した。

その後、埼玉県の労基署に出向いて説明したものの、署員が筆者の話をまるで聞かず、匿名でのアクションを求めているにもかかわらず、実名での請求や裁判の話ばかりだった。筆者は、「せっかくの休日を削って労基に行ってもこのざまならばもう行くもんか」と嘆いている。

筆者は、匿名で労基署の対応を求めたいそうだが、それだと情報提供扱いとなってしまい、フィードバックもないと書いている。実名公開で争うのであれば、膨大な量の手続きをしなければならないとして、「ブラック社畜にそんな体力と気力と時間はない。日本の闇は深い。私はもう、疲れてしまった」と打ち明けている。

会社の問題点を匿名で告発する際には、今回の筆者のように、手段が限られてしまうのか。労働問題にくわしい野澤裕昭弁護士に聞いた。

●労基署は決してブラックではない

労働基準法違反などの法令違反がある場合、労働者は労働基準監督署(労基署)に申告して、使用者に対して是正指導や是正勧告を求めることができます(労働基準法104条1項)。もちろん、申告は匿名でもできます」

では、今回のケースをどうみるのか。

「今回、労基署から実名での請求や裁判の話しかされなかったということですが、理解できない対応ですね。労基署は、賃金不払いや残業代未払いなどの労基法違反が認められれば、使用者に労働者の名前を言わずに是正指導や勧告の行政指導をすることができますし、実際にそのように対応しています。

使用者が法令違反をあくまでも否認したり、労働者の実名を求めて是正勧告を拒否するなどの対応をしてきた場合には、裁判などの手段を検討することになりますが、最初から実名請求や裁判しか勧めないというのが本当であれば、労基署の対応として問題があると思います。

労基署は厚生労働省の地方出先機関である都道府県労働局の下部機関なので、各労働局にこうした問題を指摘したほうがいいでしょう。労基署は決してブラックではありませんよ」

野澤弁護士はこのように話していた。

弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士
野澤 裕昭(のざわ・ひろあき)弁護士
1954年、北海道生まれ。1987年に弁護士登録。東京を拠点に活動。取扱い案件は、民事事件一般、労働事件、相続・離婚等家事事件、刑事事件など。迅速かつ正確、ていねいをモットーとしている。趣味は映画、美術鑑賞、ゴルフなど。
事務所名:旬報法律事務所
事務所URL:http://junpo.org/