俺より先に死んではいけない「あさが来た」120話

写真拡大

朝ドラ「あさが来た」
イラスト/小西りえこ(NHK 月〜土 朝8時〜)2月20日(土)放送。第20週「今、話したい事」第120話より。原案:古川智映子 脚本:大森美香 演出:西谷真一


120話はこんな話


刺されたあさ(波瑠)は病院に担ぎ込まれ、生死の境を彷徨ったが、新次郎(玉木宏)や千代(小芝風花)の必死の看病によって、息を吹き返す。

俺より先に死んではいけない


三途の川の水面がキラキラ輝いて、亡くなったおじいちゃん(林与一)の歌声が聞こえてくる。
あさは三途の川を渡りかかっていた。
心配して、東京からあさの弟が飛んで来る。父(升毅)は伏せっていて、母(寺島しのぶ)はその看病で来られないと言うが、俳優のスケジュールが合わなかったのだろうか。いやいや、それだけお父さんが具合悪いのだろうと思っておこう。
よの(風吹じゅん)の足も弱っていて見舞いに来るのも大変という描写もあって、だんだんと主要登場人物が高齢化しているのがわかる。
先日、みんながご飯を食べている時、よのだけ蜜柑を食べている場面があったが、デザート食べているんじゃなくて老いて食欲がなくなっているということだったのかもしれない。

さて、あさだ。
白昼(夕方?)堂々町中で刺されるなんて、劇的過ぎるだろう、すごい展開を書くなあ、そんなに視聴率が欲しいのかと思ったら、原案の「土佐堀川 女性実業家・広岡浅子の生涯」にも書いてあった。穿った見方してすみません。
原案だと、だいたい6ページくらいの内容で、それを15分でドラマにまとめた感じ。母娘の確執はドラマのオリジナルで、原案では、あさが取引先にかなり厳しく対応する様子が書かれている。
このあしらい方がきっつい。あさのモデルの浅子は女丈夫というふうで、自分の意思を押し通し、ブルドーザーみたいにいろいろ撥ね除けて前進していく強さがあって、刺されるのもわかる気がする。しかも、自分が刺されたことで、それこそ九転び十起きとばかりに生命保険業に力を入れるのだ。ギラギラしているなあ。写真も貫禄あって、おばちゃん時代は泉ピン子などが演じたら似合いそう。
そう思うと、あさは脅威の女実業家にしては線が細過ぎるかも。波瑠には罪はないが、やっぱり40代50代まで演じるには瑞々し過ぎるし、「お母ちゃんだって、人だっせ」と新次郎が言うようなスーパーウーマンにはどうも見えない。
新次郎の「わてより先に死ぬ事だけは金輪際許さへんで」というさだまさし的名言というか王子様の呪文で、あさが覚醒するので、ロマンチックなドラマになってしまう。
若い時代は、お姫様抱っこなどの甘さも良かったが、女性の一代記にしては、ちょっと食い足りなくなってきた。
ドラマの弱さを、「我が輩が〜〜なのである」と大隈重信(高橋英樹)だけがものすごい重厚感でフォローしていた。
(木俣冬)

木俣冬の日刊「あさが来た」レビューまとめ読みはこちらから