学生の窓口編集部

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夜空を彩るさまざまな星座たち。
星座や星の呼び名というのは1922年に国際天文学連合で決定されたものが世界的に使用されています。さらに日本では、その定めをもとに1944年の学術研究会議(今の日本学術会議)にて訳名が付けられました。

現在は一般的にそれらの名称が使われていますが、中には別名として日本古来の名前が付けられているものがあることをご存知でしょうか。

そこで今回は、星座に古くから付けられている和名(日本名)についてご紹介したいと思います。

■ さそり座とオリオン座の和名

夏を代表する「さそり座」と冬を代表する「オリオン座」。この有名な2つの星座には、日本で古くから呼ばれている名前が存在します。

まずはさそり座ですが、夏の夜空に浮かぶさそり座は心臓に位置する赤い1等星「アンタレス」から、左下へと伸びる長いしっぽをイメージした大きなS字型の星の並びが印象的です。そのため、日本の特に瀬戸内地方の漁師さんたちの間では、それを釣りの針と糸に見立てて「魚釣り星(うおつりぼし)」と呼んでいました。

また、アンタレスもその赤く輝く色から日本では「赤星(あかぼし)」と言われています。

続いてオリオン座の方も、同じくその形から「鼓星(つづみぼし)」と呼ばれていました。
有名な三ツ星と、それを挟むように位置している2つの1等星「ベテルギウス」と「リゲル」。さらには2つの2等星の合計4つの星で三ツ星を囲んでいる様子が、まるで鼓のように見えたわけです。

ちなみに、こちらも2つの1等星には和名がついています。もっとも有名なものとして、源平合戦の頃の源氏と平氏の旗色になぞらえて、赤く輝くベテルギウスを「平家星」、青白く輝くリゲルを「源氏星」と呼んでいる地域があります。

■ カシオペア座の和名

北の夜空に見える「カシオペア座」はW型の星の並びが有名な星座ですが、こちらもその形にちなんだ和名が付けられています。W型の真ん中に鎖をぶら下げたと想像してみてください。昔の人たちは、これを海に沈める船の錨(いかり)に例えて、「錨星(いかりぼし)」と呼んでいました。

なお、こちらも漁師さんたちに呼ばれていたようです。きっと漁業に出るときには星を目印にするため、夜空を見上げることが多かったのでしょうね。

その他に、場所によっては「山型星(やまがたぼし)」や「弓星(ゆみぼし)」、「角違い星(かどちがいぼし)」などといった別名もあったようです。それぞれの地域ごとに呼び名があるなんて、なんだか星座の方言みたいですね。

■ 「すばる」の本名は?

和名といって、もう1つ忘れてはならないのが「すばる」です。
車のブランド名や歌のタイトルにもなっていますし、古くは清少納言も枕草子の中で「星はすばる…」と紹介していますので、皆さんも少なからず耳にしたことがあるでしょう。

実はこのすばるというのは星座ではなく、おうし座にある「プレアデス星団」という星の集まりのことです。もともとは、“集まって1つになる”という意味の「すばる(統ばる)」から来た言葉であるとされています。

すばるは条件が良ければ、肉眼でも6〜7個程度の星を見つけることができます。そのため、またの名を「六連星(むつらぼし)」とも呼ばれています。今のような天体望遠鏡が無かった昔の人たちにも6個の星がちゃんと見えていたということですね。

■ まとめ

星座に付けられた日本古来の和名。
オリオン座の「鼓星」などは日本文化を代表するような名称ですし、平安時代に清少納言が愛した「すばる」や、「源氏星」「平家星」なんていうのも趣があります。
ギリシア神話などをもとに名づけられた今の星座名ももちろん素敵だと思いますが、時には星座の和名を思い出して、歴史ある日本の文化に触れてみるというのもいいかもしれませんね。

(文/TERA)

●著者プロフィール
TERA。小さい頃から自然科学に関心があり、それが高じて科学館の展示の解説員を務めた経験も持つ。現在は、天文に関するアプリケーションの作成や、科学系を中心としたコラムを執筆している。