日本弁護士連合会(日弁連)は29日、東京・千代田区の弁護士会館で記者会見を行い、不法滞在外国人に関する情報を受け付けるウェブサイト上の「メール通報制度」の中止を求める意見書を法務省入国管理局(入管)に出したと発表した。

 同システムは昨年2月にオープンした。これまでも国会議員や日弁連が内容に異議を唱え、それを受けて運用面で細かな修正が加えられた。日弁連の「中止要請」は、これまでの改善要請から廃止へ大きく踏み込んだもので、入管の今後の対応が注目される。

 意見書は◆匿名性と情報提供の容易さで、客観的な根拠のない情報も通報される可能性があり、刑事訴訟の告発というより、一般市民の「密告」をシステムとして採用したといえる◆不法滞在の情報提供を促された一般市民が、外国人に対し不法滞在者ではないかと注意を向けることになり、外国人を監視の対象とする結果を生む◆不法滞在者の半減計画と連動したシステムで、外国人は犯罪者だとの偏見を生じさせる恐れがある――などとしている。

 また、同システムが外国人に対する社会の偏見や差別を助長するもので「国の公の当局等が人種差別を助長又は扇動することを認めない」とする人種差別撤廃条約4条(c)などに抵触する可能性を指摘した。さらに、外国人を監視し社会の片隅に追い込む可能性のある同システムは、多民族・多文化の共生が求められている日本の現状に逆行しているとも述べた。

 同システムによる不法滞在者の摘発が極めて少ないことから、その有効性についても疑問視し、「その弊害の大きさに比べると、今後も維持する意義は乏しい」と締めくくった。

 ライブドア・ニュースの取材に対し、市川正司弁護士は「入管は今後もいろいろな意見を聴かせてほしいと言っている。だが、他の人権問題と違い、具体的な被害者が特定しにくい問題なので、入管が今後どのようにシステムに対応していこうとしているのかはわからない」と述べた。【了】

関連特集記事: 特集・検証「メール通報制度」