FCソウルに競り負け、ACL敗退が決まった鹿島。ホン・ジェミン記者は内容を評価しながらも、同じ失敗を繰り返すのが不思議だとも指摘する。(写真:サッカーダイジェスト)

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「鹿島サポーターの反応には驚いた。FCソウルの選手たちを拍手で送り、逆に鹿島の選手にはブーイングを浴びせていたからね。正直、韓国人記者としては悪くない気分だったが、ちょっぴり複雑な気持ちにもなった。鹿島サポーターの苛立ちが伝わってくるようだった」
 
 そう語るのは韓国のサッカー専門誌『FourFourTwo KOREA』のデスクで、5月5日に行なわれたACLグループステージ最終節、鹿島対FCソウルの取材で来日したホン・ジェミン記者だ。
 
「FCソウル、劇的勝利で16強進出!!」
「ピリっとした“ソウル劇場”」
など、韓国メディアは3対2で逆転勝利を収めたFCソウルの勝利を高く評価しているが、ホン・ジェミン記者は、鹿島の健闘も称える。
 
「ソウルでの試合に比べると鹿島は躍動感があり、選手たちの動きの質も高かった。特に柴崎岳は、前回対戦時でこれといって目立たなかったが、テクニカルで視野も広く、ボールの配球も良かった。“次世代の遠藤保仁”と呼ばれる理由が分かった。また、個人的には遠藤康も大きな発見だ。スペースに飛び出すタイミングや突破力が光り、キックの精度も高い。内容も決して悪くなく、ポストに直撃したFKが決まっていれば鹿島の一方的なペースになっていた可能性もあった」
 
 ただし、こうも指摘する。
「ただ、内容が良くても勝てないのがJリーグ勢だ。鹿島は相手のスタイルや警戒すべきことを分かっていたはずなのに、同じ失敗を繰り返すのが不思議に映ったほどだった」
 
 象徴的なのが、鹿島が喫したセットプレーからの2失点だという。
「(セットプレーから失点した)前回対戦時での反省から、トニーニョ・セレーゾ監督はセットプレーへの警戒を強めていたが、今回も同じ失敗を繰り返した。2失点もしてしまったのだから、自らの失敗を見つめ直すべきだろう」
 ホン・ジェミン記者は、さらにこう続ける。
「例えばイ・ウンヒが決めたFCソウルの1点目のシーン。鹿島の山本がイ・ウンヒに振り切られたが、あそこは激しく競り合いユニホームを掴んででも止めるべきだった。Kリーグでは多少ダーティーな手を使ってでも止めようとする。反則行為を奨励するわけではないが、そういった狡賢さがあっても良かった。鹿島の選手たちのプレーはあまりにもクリーンで優しすぎた」
 
Jリーグならそれでも通用するだろうが、価値観もプレースタイルも異なる他国のリーグでは厳しい。ましてや、ACLのようなタイトルの懸かった大会になるとなおさらだ。もっとガツガツとぶつかり、ギリギリの勝負に身を投じる覚悟が必要なのではないか。鹿島のグループステージ敗退の原因はプレーの質ではなく、ACLへの気構えと覚悟にあったように思う。サポーターが試合後にブーイングで抗議していたのも、そういったところにあるのではないか」
 
 ACLへの気構えと覚悟。抽象的な言葉だが、全北現代、水原三星、FCソウル、城南FCが16強進出を決めた韓国のメディアから指摘されると、ズシリと重く感じられた夜だった。
 
文:慎 武宏(スポーツライター)