【警告】湘南=なし 浦和=那須(20分)、森脇(34分)、宇賀神(60分)
【MAN OF THE MATCH】宇賀神友弥(浦和)

写真拡大 (全4枚)

 現役時代は平塚や仙台などでプレーし、自慢の左足で日本代表としても活躍した岩本輝雄氏が、元選手ならではの鋭い視点でJリーガーのパフォーマンスや監督の采配をリアルにジャッジ!!
 
 世界のサッカーにも精通し、国内外の戦術を研究する日々を送る“サッカーおたく”岩本氏の眼にはどのように映ったのか――。
 
 記念すべき第1回は、J1第1ステージ1節の湘南対浦和を採点してもらった。

【J1採点&寸評】1stステージ1節|全9カードの出場選手&監督を現地記者が評価
 
――◆――◆――
 
■湘南ベルマーレ■
――先発出場――
GK 1 秋元陽太 5
セットプレーから奪われた1失点目は、ライン設定が上手くいってなかったと思う。なぜあそこまで深く下げ過ぎてしまったのか。その失点がなく、前半を1-0で折り返すことができていれば、また違った展開になっていた気がする。そこが悔やまれる。
 
DF 3 遠藤 航 5.5
無難にプレーしていた印象。PKも確実に決めて前半は良かった。とはいえ、後半は同サイドの選手との連係がスムーズではなく、しばしばそこを突かれるシーンが目立ち、失点につながってしまったのは残念だった。リオ世代の注目選手と言われているけど、世界基準で見れば、まだまだ。さらなる成長を期待したいね。
 
DF 4 アンドレ・バイア 6.5
90分間、終始落ち着いていて、カバーリングなど1対1で強さを発揮。危機察知能力も非常に高い。個の勝負ではほとんど負けていなかったんじゃないかな。ベルマーレにとっては良い補強になったと言える。
 
DF 17 三竿雄斗 5.5
果敢にオーバーラップするなど、攻撃参加は及第点以上の出来。攻守に奮闘していた。とはいえ、後半はチーム自体が息切れするなかで、これは遠藤にも言えることだけど、もう少し後ろからゲームをコントロールしたい。良いものは持っているけど、もったいないというのが正直なところだ。
 
MF 5 古林将太 5.5
精力的に上下動をしていた。運動量が多くて存在感を示していたけど、攻撃になった時の、特にタッチライン際のポジショニングを工夫してほしかった。対面していた宇賀神を引き出すというか、相手が5バックの陣形になったら、宇賀神を誘い出してラインを崩すようなポジションを取れれば、宇賀神の背後にスペースができて、そこに2シャドーのひとりを走り込ませることもできる。あるいは、サイドだけでなく中に動いてボールを受けるとか。それができれば、チームの攻撃にも流動性が生まれ、彼の良さももっと活きるし、プレーの幅も広がるはず。
 
MF 2 菊地俊介 5.5
ポジショニングに大きな問題はなく、永木とのコンビも悪くなかった。ボール奪取でも持ち味を発揮して相手を潰していた。ただ、後半に入ると全体的に間延びする場面が少なくなかっただけに、そこのバランスをどれだけ取れるかが今後の課題か。いくら60分間が良くても、90分間を通してそれを維持できなければダメ。これはチームとしての問題点でもあると思うけど……。
 
MF 6 永木亮太 5.5
序盤からすごくアグレッシブで、前半に関しては両チームを通じて、最も優れたパフォーマンスを見せていた。でも、逆転されて前掛かりとなってからは、後ろとのバランスも悪くなってしまった。後半はイージーミスがいくつかあったので、評価を下げざるを得ない。
 
MF 10 菊池大介 5
全体的にボールを触る回数が少なかった気がする。昨年は彼がもっとプレーに絡んでいて、ゴール前に顔を出してチャンスを作っていた。それを考えると、今日の試合は物足りなさを感じたかな。
 
FW 23 高山 薫 5(65分アウト)
効果的なくさびを受けられず、チャンスメーカーとしては満足できない。守備では貢献していたけど、肝心のアタックでは目立つことができず。パンチ力もなかった。
 
FW 7 大竹洋平 5(56分アウト)
ディフェンスに負われる時間帯が長かったのが影響してか、彼の武器であるキープ力、シュート、スルーパスなど、印象に残るパフォーマンスはなきに等しかった。能力の高さは間違いないので、次節に期待したい。
 
FW 19 大槻周平 6
動き出しが早く、効果的にスペースを突く動きができていて、キープ力を活かして前線の起点にもなれていた。ゴールこそなかったけど、十分に評価してもいいと思う。個人的には、CFの選手は確実にボールを収められないとダメだと考えている。そこで簡単に失うようでは意味がない。イブラヒモビッチを見れば、それは分かるはず。
 
――途中出場―
FW 8 山田直輝 5(65分イン)
古巣相手に気持ち的にも高いモチベーションで、途中出場から懸命に戦う姿勢を見せてはいた。でも、周りとの連係不足は明らか。味方との良い距離感のなかでこそ輝きを放つタイプだと思う。加入したばかりで、ベルマーレの縦に速いスタイルに順応するにはもうしばらく時間がかかるかもしれないけど、新天地でのデビュー戦はほろ苦いものになってしまった。
 
FW 22 岡田翔平 5(56分イン、80分アウト)
チームとしてリズムが悪くなってからの途中出場であり、難しいシチュエーションだったとは思う。それにしても、インパクトをほとんど残せず、印象的なプレーは皆無。しかも途中出場でありながら途中交代という、本人にとっても残念な結果に。
 
MF 15 キム・ジョンピル 5(80分イン)
身体の強さは披露したけど、結果に結びつくような活躍はなし。相手にスペースを与えてしまう場面も目についた。新戦力で、わずかな出場時間では判断しづらい部分もあるけど、今回は厳しめに評価した。
 
監督
者 貴裁 5.5
試合の入り方も良くて、チャンスを確実にモノにできれば、はっきり言って前半で勝負を決めることができたと思う。もしかしたら、J2でならゴールできたかもしれないけど、さすがにJ1のトップではそう上手くはいかない。それを監督も改めて痛感したのではないだろうか。目指しているサッカーはよく分かるけど、もう少し柔軟な采配を見せてほしかった。
■浦和レッズ■
――先発出場――
GK 1 西川周作 6
PKから失点をしたけど、終始、安定したセービングを見せていた。自慢のフィードも良かったし、いつもどおりのパフォーマンスで敵地での勝点3獲得に大きく貢献した。
 
DF 46 森脇良太 5.5
1対1は強いけど、組み立てのところで安定感が欲しかった。周りが楽になるような効率的なパス回しができるはずなのに、今日はそれが少なかった。PKを与えるファウルもいらなかった。
 
DF 4 那須大亮 6.5
球際が強く、競り合いも負けていなかった。後ろからのつなぎもミスがほとんどなく、安心して見ることができた。試合を決める3点目のゴールも価値あるもの。
 
DF 5 槙野智章 5.5
前半は様子見といった感じだったけど、試合を通じてそこまで崩されることなく、チームとして計算できる選手のひとりだと改めて思った。とはいえ、セーフティにプレーしていたのかもしれないけど、攻撃参加がいつもより控えめだっただけに、印象としてはマイナス0.5かな。FKも決めてほしかった。
 
MF 14 平川忠亮 5(70分アウト)
前半は苦労して、えぐられるシーンがけっこうあり、サイドの攻防では後手を踏んだ。DF陣とのバランスも今ひとつ。以前に比べて、スピードに少しかげりが見えてきたのも不安材料のひとつ。
 
MF 16 青木拓矢 6
プレーをじっくりと観たのは、実は今日が初めてで、前半はそこまで目立ちはしなかったけど、試合をひっくり返した後半は彼の存在感が際立っていたと思う。まだ25歳。これからが楽しみな選手のひとりではないだろうか。
 
MF 22 阿部勇樹 5.5
ピンチを招くミスパスが何本かあったのは気がかり。本来はキックが非常に上手い選手だというのは誰もが認めるところで、その意味では、サイドを変えるロングボールや、中盤から攻め上がってからのミドル、シュートにつながる縦パスとか、得意のキックを活かしたプレーをもっと見たかった。
 
MF 3 宇賀神友弥 7.5 MOM
常に慌てることなく、タッチライン際の勝負では主導権を握っていた。つなぎも首尾よくこなし、チームに安心感をもたらしていたと思う。そして、興梠の同点弾をお膳立てするFKでまずは1アシスト。さらに、右サイドから来たボールをダイレクトで合わせた決勝点は見事のひと言。間違いなく難しいシュートだったと思うけど、かなり練習しているはず。また、3点目の起点となる、左サイドの深い位置まで侵入したプレーも素晴らしかった。FKの質は上がってきているし、文句なしのマン・オブ・ザ・マッチ。平塚でこの日、一番輝いていた男だった。
 
MF 11石原直樹 5.5
前半は2シャドー、後半からはCFと異なるポジションでフル出場したけど、彼本来の実力を存分に出し切れたかというと疑問符が付く。チャンスメイクに絡むプレーがあまりにも少なかった。シュートもわずか1本。もっとできる選手だけに、期待を込める意味での5.5。
 
MF 19 武藤雄樹 5(86分アウト)
身体のキレは良さそうだけど、まだ浦和のサッカーにフィットしていない気がする。ボールを引き出す動きやシュートを増やしていきたい。というか、ゼロでは困る。2シャドーで出場する以上、決定的な仕事をこなさなければならない。
 
FW 30 興梠慎三 6.5(HTアウト)
負傷により前半のみの出場は残念だったけど、その前半で1ゴールときっちり仕事をした。加えて、ポジショニングが良く、ボールを収めるプレーも秀逸で、相手を背負っていても確実にキープできるし、反転も速く、下がってパスを受ける動きやダイレクトの落としで味方の攻撃参加を促してみせる。要は、判断力が優れているということ。チーム全体をつぶさに観察して、今なにをすべきかの判断を的確に下すことができる。代えの利かない選手だと思った。
 
――途中出場――
FW 31 高木俊幸 5.5(HTイン)
バーを叩いた強烈な無回転FKは見応えがあり、観客を魅了した。でも、見せ場はそれぐらい。アピール不足は否めなかった。能力は高いだけに、次の試合を楽しみに待ちたい。
 
MF 24 関根貴大 5.5(70分イン)
限られた出場時間のなか、大きなミスもなく無難にこなしていたけど、それ以上でも以下でもなし。目を引くようなパフォーマンスができたとは言えず、本人も納得できていないはずだ。
 
DF 2 加賀健一 5.5(86分イン)
武藤に代わって終了間際に登場。特別なにかをしたわけではないけど、チームの良い流れを崩さないように振る舞って、試合を確実に終わらせた。
 
監督
ペトロヴィッチ 6.5
前半は1-1と互角の展開で、興梠の負傷退場というアクシデントもあったが、後半にしっかりと修正し、試合を有利に進めながら逆転に成功。敵地での開幕戦で、隙のない手綱さばきを見せ、勝利を掴み取った。
 
取材・構成:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)
 
※MAN OF THE MATCH=岩本氏が選定するこの試合の最優秀選手。
※採点は10点満点で「6」を平均とし、「0.5」刻みで評価。