多くの闇金利用者と接してきたトキタ氏。「こっちは真剣に客と向き合っているから、“あ、この人そろそろ死ぬな”と察してしまうこともある」という

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人気コミック『闇金ウシジマくん』の主人公にはモデルが存在していた――。このほど、高利貸しの世界で体験したエピソードを生々しく書き上げ、「『闇金ウシジマくん』モデルが語る 路地裏拝金エレジー」を上梓(じょうし)したトキタセイジ氏。今だから明かせる闇金の実態を、“リアル・ウシジマくん”に直撃した!

―トキタさんはどのような経緯で貸金業を営まれるようになったのですか?

トキタ 最初は普通の街金に勤めてたんですよ。不動産を担保に法定内の金利で貸し付けするような会社に。で、そこから中堅の消費者金融に移って、配属された支社を全国ワースト2からトップ2にまで引き上げた。そんときに同僚から「トキタさんのやり方なら闇金のほうが稼げるんじゃないか」って言われて、とある高利貸しのグループに転職してね。実際、割とすぐ店長になって、何店舗も任されたけど、今度はだんだん管理職のポジションに飽きちゃって。その後、少しぶらぶらして、独立したのが25歳くらいのとき。結局、13、14年はやったかな。

―“闇金向き”と評価されたのは、どんな部分でしょうか。

トキタ 例えば、客のところへ取り立てに行くのは、朝8時から夜9時までの間と決められているんだけど(*貸金業法による規制)、俺はその“時間外”から客の行動を見張ったりしていたね。早朝から相手の家の前に立っていて、取り立てはできなくても、相手の出勤を「行ってらっしゃい」と見送る。そして8時になったらインターホンを押して、中にいる家族を呼び出す。「(本人は)不在です」と言われても、「知ってるよ。これ渡しといて」と手紙を預ける。こういうことを繰り返して、金を引っぺがすんだよね。

―なるほど……、それは相当なプレッシャーだったでしょうね。ちなみに当時の年収は?

トキタ 多いときは月に1500万から1600万円くらい入ってきたけど、少ないときは300万円という月もある。やっぱりばらつきはありましたね。

―『闇金ウシジマくん』の作者、真鍋昌平さんの取材に応じたのは?

トキタ もともとは俺がお願いしている彫り師の人からの紹介だったんだよね。顔見知りの仲介だったし、割と気軽な感じでOKしたら、すぐに編集者と一緒に事務所へやって来て、仕事のことをひととおり話して、実際に客にも会わせてやったんです。「高利で金を借りる人間ってのはこんなヤツだぞ」って(笑)。

―職業柄、取材を受けることにはリスクもあるのでは?

トキタ 当時は現役だったから、それは確かにあります。俺はパピヨンを多頭飼いしていたんだけど、真鍋さんがそれを「マンガの設定に使いたい」と言うから、「それはさすがに、俺だってわかっちゃうからやめてくれ」と断ったんです。その結果、犬ではなくウサギ好きな闇金業者という設定が生まれたらしいよ。

―自身がモデルとなったコミックがこれほど人気を集めている現実を、どう受け止めてらっしゃいますか?

トキタ 結局、下の人間はさらに下の人間を見て安心したいんじゃないかな。自分よりも貧乏で弱くて不幸な存在を見ることで、“自分はまだ大丈夫”と再確認する。根本的なことでいえば、ボランティアだって同じだよね。あれは困っている人を助けることで、安心感をタダで買っているようなものだから。

―では、実際に多くの闇金利用者と接してきて、彼らに何か共通するものは感じますか?

トキタ 今回の本では、客のことをクズだなんだとあえて辛辣(しんらつ)に書いているけど、彼らは別に落ちた存在じゃない。彼らなりに精いっぱい生きている。だから、“こんな自分にもまだ金を貸してくれるところがある”という、安心感を覚えて帰るヤツが多いよね。一方で、こっちは真剣に客と向き合っているから、“あ、この人そろそろ死ぬな”と察してしまうこともある。それは自殺であっても病気であっても、追い詰められることで生じるちょっとした予兆や変化には敏感になってしまう。

―昨今、闇金業者は減少傾向にあると聞きます。トキタさんがこの仕事から足を洗うことになったきっかけはなんだったのでしょうか?

トキタ 法律が厳しくなった分、商売替えをしたり地下に潜ったりした業者は多いと思う。俺の場合は、従業員のひとりが逮捕されたことで、そろそろ潮時なのかな、と。もともと一生続けていく仕事ではないと思っていたし、従業員にも「金はいくらでもやるから、早くこの仕事を辞めることを考えろ」と言っていたからね。実際、うちの従業員で、足を洗って飲み屋をやったり保険屋をやったり、カタギになったヤツは大勢いるよ。

―景気が上向きといわれる昨今、闇金利用者も減っていくのでしょうか?

トキタ いや、むしろ景気のいいときのほうが客は増えるんですよ。バブルの頃もそうだったけど、どんどん金が入ってくる時期というのは、人はどんどん金を使う。それこそ、借金してでも大きな金を回そうとするからね。最近はサラ金もカード会社も審査が厳しいから、借りたくても借りられなくて困っているヤツがたくさんいると思う。

闇金業者の減少は、そういう人たちの受け皿をなくしているということでもあるんですね。

トキタ そう。結局、俺たちがやっているのは、ただの“営業”だから。「こういう条件で貸しますから、いつまでに返済してくださいね」と約束して営んでいる金貸しで、ルールにがんじがらめで融通の利かない銀行なんかより、よほど人間味があったと思うよ。「今月どうしても厳しくて……」と相談されれば、自分の裁量で金利や返済額をどうにかしてやることもできたしね。

―最後に、お金に困っている人に何かアドバイスを!

トキタ 金に困ったら、金を持たないのが一番。まずは、ムダな出費をストップするところから始めること。財布に金が入ってなければ使えないわけだから、これはけっこう効果的なはず。俺も独立直後は苦労していたから、なるべく財布に金を入れないようにして、メシも3食インスタントラーメンで済ませていた時期があったしね。本当に蓄えを増やしたいと思ったら、やるかどうかは別にしても、自販機の釣り銭を手当たり次第にあさるぐらいの気持ちは必要だよ。どんな世界でも、そういう地道な努力が大切だからね。

(構成/友清 哲 撮影/村上庄吾)

●トキタセイジ

1971年生まれ、東京都出身。都内の高校を卒業後、外国語の専門学校に進学。1年で中退した後、某消費者金融に就職。その後、独立して高利貸しを営む。現在は貸金業を引退し、企業顧問、不動産取引などさまざまな事業を展開している。なお、著者名の「トキタセイジ」は、闇金時代に使用していた数ある偽名の中のひとつ

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