続々登場する海外SIMフリースマホ!日本市場を本気で狙い始めた海外メーカー

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毎年ドコモやau、ソフトバンクモバイルなど大手キャリアの華やかな新製品発表会で各メーカー自慢の最新スマホが一堂に公開される。だが最近は、キャリアの発表会と全く別に「SIMフリースマホ」の新製品発表会が増えてきた。キャリア一辺倒だった日本市場も、今やキャリア契約しばられないSIMフリースマホの世界が広がろうとしている。

当初、SIMフリースマホは、iPhoneをのぞけば新興企業の製品が目立つ程度だった。しかし、今年5月にファーウェイが本格参入を発表。2万円台前半という『G620S』(12月発売予定)を含め4機種を国内で販売する。同社はこれまでドコモなどのキャリア向けスマホやケータイを納入していたが、満を持して自社ブランド製品の日本販売に踏み切った。


日本に積極的にSIMフリースマホを投入するファーウェイ。他社も続々続いている


また10月にはパソコンやタブレットで長い歴史を誇る台湾のASUS(エイスース)が『ZenFone 5』を発表し、11月8日から販売が開始された。2万円台と格安さながら品質が高いZenFone 5は、SIMフリースマホの中でもヒット商品になるだろうと早くも高い評判を受けている。

このほかにも10月にはパソコン大手のレノボがモトローラの買収完了を発表。日本で行われた記者会見では、レノボジャパンのトップからモトローラブランドのスマホの日本投入を示唆する話も出ている。近い将来、"MOTOROLA"ロゴのスマホが日本でも復活する動きが起きそうだ。
ちなみに、すでにモトローラが製造するグーグルブランドの最新スマホ『Nexus6』はSIMフリー機として日本での販売も決まっている。

SIMフリースマホは日本市場を狙える高性能な製品になった
このように海外メーカーが次々にSIMフリースマホを日本に投入している背景には、ようやく日本市場でのビジネスチャンスが生まれたと判断しているからだ。

スマホは開発にコストがかかるため製品価格も高くなる。
そこで通信キャリアはSIMロックをかけて利用者と2年契約を結び、実質無料などといった大幅な割引販売をしてきた。通信キャリアは自腹を切ってスマホを割引販売してきたわけだが、利用者が2年間通信サービスを使い続けることで収益に転換してきた。

ところが今やスマホは主要の部品を組み立てるだけで、ある程度の性能のスマホがつくれる時代になった。
たとえば、スマホの心臓部といえるSoC(システム・オン・チップ)は、これ1つでスマホを動かすだけではなく、通信やカメラのコントロールまでできてしまうのだ。スマホ画面もシャープなどのメーカーが高品質なものを安く安定して供給している。人気のカメラ機能もソニーなどが他社向けにも高性能なカメラ部品を販売しているのだ。

その結果、iPhoneやXperiaなど、最上位機種には及ばないが、十分に使える高性能なスマホを半額以下で販売できるようになったのだ。ZenFone5は2万6800円、G620Sは2万2000円前後。これらのSIMフリースマホはもう「格安だけど使いにくい」ではなく「値段が安いのに十分使える」レベルの仕上がりなのである。


ミドルレンジの製品もいまや実用性は高い。ZenFone5でも十分常用できる


●格安SIM(MVNO)がSIMフリースマホの
そしてSIMフリースマホを使うために必要な携帯電話回線も、今では格安SIMと言われるMVNOキャリアによって整った。以前は、SIMフリースマホを買ってもドコモなどの大手キャリア契約しか選択肢がなく、毎月の維持費が高くなる状況だったが、今やSIMフリースマホを毎月1000円以下という低料金で大手キャリアに匹敵する高速通信サービスを利用できるようになっている。

このように、今の日本市場は、海外メーカーにとって十分に参入する魅力ある市場に見えているのだろう。特に日本の消費者はハイエンド端末を好むと言われており、前述したZenFone 5だけでなく、ローエンドからハイエンドまでのスマホを販売できる市場は、世界にもそう多くないからだ。


イオンSIMとセットで販売されるAlcatelのスマホはTCLが製造。同社は世界中にリーズナブル価格のスマホを提供している。


現在、日本のスマホ利用者はすでに飽和に向かっている。しかし古いスマホを使っている消費者の買い替え需要はまだ十分にある。大手キャリアとの2年契約が終了し、次に買い替える時に「契約縛り不要、毎月2480円、高性能なスマホ本体が2万円」という広告を見たら、そちらに乗り換える消費者も増えることだろう。
すでにスマホ専業ではないイオンまでもが格安SIMとSIMフリースマホの販売を始めているが、いずれはコンビニなどの店舗でもスマホとSIMカードを買うことが当たり前になるかもしれない。

もちろん、今後も大手キャリアのサービスは充実していくし、日本のスマホ市場の中心であることは変わらないだろう。だが、スマホが当たり前の道具になればなるほど、リーズナブルなサービスやスマホに移行する利用者は増えていくだろう。それにともないSIMフリースマホ市場は、もっと拡大し、様々な海外メーカーの日本市場への参入も増えていくだろう。


山根康宏