今年、最も激動したチームと言っていいのではないでしょうか。FC岐阜の新体制発表記者会見に行ってきました。

10時過ぎに会場のホテルに到着すると、目の前の山には霧がかかっていました。
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タクシーの運転手さんによれば、ここまで深い霧は久しぶりだそうです。
むむむ、新体制でFC岐阜の霧が晴れてくれればいいのですが。

さて、最初は新加入選手の発表です。報道陣は約110人。日本代表のメンバー発表のときより、やや少ないくらいです。テレビ局のカメラがずらりと並んで会場の熱気はむんむんでした。

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壇上には即戦力クラスがずらりと並びます。特に注目を浴びていたのは川口選手と三都主選手ですが、スピーチで一躍キャラクターを理解してもらったのは難波選手。「監督は美土里の血が流れているとおっしゃっていましたが、僕には赤い血しか流れていません。……」とどこに向かうかわからないスタートから最後で何とかまとめて、三都主選手や川口選手が思わず顔をのぞき込んで笑っていました。続く深谷選手は「話しづらいですが(笑)」と笑顔になって、一気に会見の雰囲気を和らげていました。

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これだけの移籍を詰めた松永GMですが、「ラモスさんがいろいろな選手の情報を持っていて、そこから話を聞いて移籍を詰めた」とのこと。こういう場で自分の手柄にしないのは松永さんらしいと思います。

さて、いよいよラモス監督登場。
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気が引き締まっているので、口が尖っています。
「優勝してもJ1に昇格できないけれど、それで手を抜くような選手は追い出す」と、さっそく厳しい台詞を口にしていました。

せっかくですから、質問時間の最後に少々厳しめの問いをさせてもらいました。
――クラブは10位以内を目標にしていると言っていますが、これまでの成績、さらにこれだけ大きくチームを変えようとしていることを考えると、目標が高すぎるのではないでしょうか。

ラモス監督の中では想定内の質問だったようです。にやりと笑った後に真顔になって答えてもらいました。
「目標は敢えて高く置いたのだと思う。岡田監督が前回のワールドカップのときに『ベスト4』と言っていたように。実際は10位になったら凄いことだし、15位になっても凄いこと。だけど、もし10位になったら昇格プレーオフ圏が見えてくる。そうなると、どこをどうすればいいか明確になる。だから10位が目標だし、一つでも上を目指していく」
司会の方が「アディショナルタイムが4分です」とおっしゃるくらい、時間を取った熱弁でした。

実際のところ、クラブハウスもないし、競技場もJ1仕様を満たすためにはまだ1500席ほど足りないようです。さらにたくさんの選手を獲得し、大きく体制を変えようとしているので、これまでの選手やスタッフには戸惑いもあるでしょうし、軋轢も生むことでしょう。前途多難であることは間違いありません。

スタジアムに移動すると、みぞれが降ってきました。その中で軽いミーティングがあり、フィジカル中心のメニューが続きます。ラモス監督はあまり指導しなかったのですが、
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これだけ近くで見られると選手は緊張したでしょうね。ある選手は「初日にしては練習が厳しかった」と言うくらいでした。

スタジアムにはたくさんのファンの方が詰めかけていました。
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練習後、ラモス監督とスタッフ、選手が並び、川口選手の「今日は練習見学に来ていただいてありがとうございました」というかけ声の下、全員で頭を下げていました。「特に初日だからやった」とラモス監督はおっしゃっていましたが、これはいい風景でした。

練習後は再び冷たい雨が降っていたのですが、
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最後までこの取材陣の多さです。世間の期待の高さの現れでしょう。

練習後、川口選手と難波選手がこんな会話をしていました。ゲーム形式の練習のとき、川口選手がキャッチすると難波選手がすぐ動き出し、そこに川口選手のパスがピタリと合ってシーンがありました。

川口選手が難波選手を呼び止めて言います。
「あのピッタリ合ったのはうれしかったよ。オレ、ああいうタイミングでボール出すから覚えておいてね」
すると難波選手がニッコリ笑って答えていました。
「子どものころから川口さんのプレーを見てて、ああいうボールが来るだろうと思っていましたよ!」

難波選手は1982年12月生まれ。川口選手は1975年8月生まれ。川口選手がフランス・ワールドカップに出場した1998年は、川口選手が22歳で、難波選手は15歳。きっと学生だった難波選手には川口選手のプレーが強烈に刻まれていたのでしょう。そして、今のJリーガーの中にはラモス監督のプレーが「レジェンド」として残っているのだと思います。


さて、実は練習後にラモス監督が激怒していたことがありました。

シャワーを浴び、着替えたラモス監督はすぐに岐阜市長へ表敬訪問に行く予定でした。ところが、ものすごい数のファンの方が入り口で待っています。

ファンを無視したくないラモス監督は「ごめんなさい、今日は急いでいるのでサインできない」と言いながら数人の子どもにだけは対応し、スタッフに促されて車に乗り込みました。ファンに対して対応できないのに、スタッフが仕切れていなかったのがよほど気に入らなかったようです。車の中でも怒っているようでした。本人としてはファンに応じず行かなければいけないことで心を痛めたのでしょう。

スタッフがあとで怒られたのだろうなぁ。そう言えば広報の女性も「少し怖いです」と会見前にはおっしゃってましたから。いきなり怒るけど、感情を後には引きづらないから大丈夫だと思いますよ。

(こぼれ話)
練習前にスタジアム前のコンビニに行ってパンを買っていたら、どこかでお見かけしたような方がカップ麺を買っていらっしゃいました。もしかすると、あれは岐阜の社長だったような気が。そうだとすると、チームのラインナップは豪華になったけれど、まだまだ岐阜は苦しいクラブなのかもしれないと思います。もちろん、カップ麺がお好きだったり、別人だった可能性もあるのですが。