中国当局が新興宗教集団「全能神」の摘発に全力で乗り出している。同集団が「マヤ暦によると2012年12月21日が世界最後の日」との説を取り入れ活動を活性化したことに反応したと見られる。中国新聞社など中国メディアは、同集団を非難し摘発強化を伝える記事を次々に配信している。

 「全能神」は「実際神」、「東方閃電」とも自称する集団で、1990年初期に河南省で発生したとされる。教祖とされる女性は河南省出身で、自らを「イエス・キリストなどに次いで、神が地上に使わした最後の預言者」であり「中国の王」と称した。

 中国共産党は「赤い龍」であるとして、信徒は神に率いられ「赤い龍」と決戦し、「赤い龍」を滅ぼして「全能神」が統治する国を築くと主張している。

 中国側報道によると、「全能神」は1995年まで、農村部を中心に勢力を広げた。95−2000年には大学生やビジネスマンへの布教を強化したが「文化的素養や(教団としての)収入を増やすことが目的だった」という。

 さらに信者獲得のために金銭や携帯電話、オートバイなどを贈ったり、女性信者が肉体を用いて独身男性を誘惑し、入信させたこともある。中国政府は1995年、「全能神」を「邪教集団(カルト集団)」に指定して、取り締まりを本格化させた。

 「全能神」は“マヤ暦・最後の日”の噂を「真実」として採用。同噂が注目されるとともに、青海省、新疆ウイグル自治区、内モンゴル自治区などで活動を活発化させた。家族と離れてクラス高齢者に対して、全能神の信者以外は「12月21日に閃光に打たれて死ぬ」などと言って入信を勧めたとされる。中国メディアは「資金獲得が目的」と主張した。

 貴州省警察は最近になり「全能神」の活動家357人の身柄を拘束した。青海省では12月5日から19日までに、宣伝や集会を行っていた「全能神」のメンバー400人以上の身柄を拘束した。12月になり全国各地で身柄を拘束した「全能神」関係者は1000人程度にのぼるとされる。

 中国報道によると、「全能神」の教祖である女性は「傀儡(かいらい)」に過ぎず、実際には1951年生まれの男性、趙維山氏が実権を握っている。趙氏は2000年、日本を経由して米国に行き、政治亡命を申請した。「全能神」は東京、ニューヨーク、サンフランシスコ、トロント、シンガポール、韓国、インドネシア、マレーシアなどにも活動拠点を持つとされる。(編集担当:如月隼人)