■クラブライセンス制度導入の背景

甲府がJ2第38節・湘南戦を2-2で引き分け、4試合を残してJ1昇格を確定させた。J2新記録となる『20試合連続無敗』という見事な戦いで、至上命題だった“1年でのJ1復帰”を成し遂げた城福浩監督には本当に頭が下がる。J1の舞台に戻ってくる甲府が、「エレベータークラブ」の汚名を返上すべく、城福監督のもとどんな戦いをみせてくれるのか今から楽しみだ。

そしてJ1へのイスは残り2枠となったわけだが、自動昇格のもう1枠、さらに昇格プレーオフ圏内の〜6位までを10クラブ前後で奪い合う大混戦は最後の最後まで目が離せない。その陰で、少し時計の針を巻き戻してみると、9月28日、Jリーグより、あるアナウンスがあった。

『2013シーズン Jリーグクラブライセンスの交付について』

この「Jリーグクラブライセンス」にはJ1、J2の2種類があり、41クラブが申請(カマタマーレ讃岐は申請取り下げ)、そのうち33のクラブに「J1クラブライセンス」が認められた一方で、8クラブは「J2クラブライセンス」の交付となった。

Jリーグが、この「クラブライセンス制度」を導入したのには背景がある。

■J2ライセンスのクラブは、どれだけ成績が良くても昇格できない

元々は、クラブに厳格な経営健全化などを求めるドイツの制度を参考にUEFA(欧州サッカー連盟)が04-05シーズンからチャンピオンズリーグへの参加資格として「クラブライセンス制度」を導入。これに続いて、FIFA(国際サッカー連盟)も2008年から制度の導入を決めた。さらに、AFC(アジアサッカー連盟)も加盟国に対してライセンス制度の策定を義務付け、2013年シーズンのACL(アジアチャンピオンズリーグ)参加資格から、この制度を導入することを決めた。

ドイツ〜UEFA→FIFA→ACL、という流れがJリーグにもやってきて、Jも今年2月1日にライセンス制度を施行した。ライセンスが交付されないと、今後はJリーグに参加できないのだ。

クラブの基盤強化の促進と、サッカー界全体の安定性・持続性の向上を目的として、「競技、施設、人事体制・組織運営、法務、財務」5つの基準56項目についての審査が行われ、その結果、「J2クラブライセンス」の交付となったのは、水戸、草津、町田、岐阜、鳥取、愛媛、北九州、長崎の8クラブ。

長崎を除くJ2の7クラブがJ1ライセンスを得られなかったのは、ホームスタジアムの収容人員がJ1リーグ戦開催に必要な1万5,000人を満たさなかったため。これは去年から指摘されていたことだが、「J2ライセンスのクラブは、どれだけ成績が良くてもJ1には上がれない」という事態が現実のものとなってしまった。

■キャパシティの問題は解決できるのか

特に、今シーズンから導入された昇格プレーオフ圏内の可能性を残していた北九州や水戸といったクラブの選手やスタッフ、関係者の気持ちを思うと、胸が痛む。実際、関係者から聞いた話では、28日より少し前にこのクラブライセンスの内示があり、その日の水戸や北九州のトレーニングは相当荒れたそうだ。

それだけではない。スタジアムのキャパシティ問題が解消されないかぎり、この先もJ1参入は無い、ということである。北九州では、市が2016年春の完成をめどに2万人規模のスタジアム(客席の傾斜もかなり角度があって、素晴らしいスタジアムになりそう!)の建設を決定したが、東日本大震災の被災地でもある水戸はいまだに多くの箇所で復旧工事も手つかずの状況のなか、すぐにスタジアムの増席工事は難しい。その他のクラブも改修工事の計画などはあるが、やや具体性に乏しいのが現状だ。

そんな難しい状況の2クラブ、水戸と北九州が、何の因果かクラブライセンス交付直後の9月30日に対戦した。私はこのゲームの実況を担当させていただいたのだが、試合前にわずかながら抱いていた無気力試合の危惧は、結論からいうと、まったくの杞憂だった。両チーム、ピッチ上でこれまでどおりのハードワークと局面での激しい一対一を繰り広げたのである。