埼玉西武ライオンズ東北楽天ゴールデンイーグルスの第24回戦は、5対5引き分けに終わった。ライオンズはこれで、福岡ソフトバンクホークスが敗れれば、5日にも2位が確定。一方、ゴールデンイーグルスはクライマックス・シリーズ出場の可能性が消滅した。

 かれこれ10年間以上ライオンズを応援しているが、こんなシーンはあまり見たくなかった。5対5の同点で迎えた最終回の守備である。

 ライオンズはこの回の攻撃で、ゴールデンイーグルスのクローザー、青山浩二を攻め、3得点。土壇場で同点に追いついた。
 この時点で時計は9時20分を回っていた。プロ野球では昨年から、試合開始時刻から3時間30分経過した場合、新しい延長回には入らないという「3時間半ルール」を採用している。ゴールデンイーグルスがこの回を無得点で終えた場合、延長回に入るのか、微妙な時間だった。

 はたして岡島豪郎3塁ゴロ聖澤諒ショートゴロに倒れ2死。打席には、この日2安打と当たっている松井稼頭央が入った。

 ここで渡辺久信ライオンズ監督が動いた。おもむろにベンチから立ち上がると、投手をランディ・ウィリアムスから涌井秀章に交代。涌井が投球練習を終えると、今度は1塁手のホセ・オーティズを引っ込め、代走で出場していた中島裕之を1塁の守備につかせた。
 この間にタイム・オーバー。打席の松井も1塁ゴロに終わり、試合は5対5の引き分け。ゴールデンイーグルスのBクラスが確定した。

 渡辺監督の行為は、どう見ても遅延行為。選手の交代を告げる足取りも遅く、「3時間半ルール」を適用した引き分け狙いだった。

 もしこれが米メジャーリーグでの出来事なら、渡辺監督はゴールデンイーグルスのファンだけではなく、ライオンズのファンからもブーイングを受けていたかもしれない。
 メジャーのファンは何より、退屈を嫌う。ファンそっちのけのプレーには、平気でブーイングをする。一方、審判員はファンを退屈させないよう注意している。監督のストライク・ボールの判定への抗議、長時間の抗議などを認めないのもそのためだ。

 たしかに、渡辺監督の気持ちもわかる。この試合が始まった時点で、2位ライオンズと3位ホークスのゲーム差は、わずか。リーグ優勝を逃した指揮官としては、せめて2位は死守したいところ。そして、引き分けと敗退では、その重みはまったく違う。

 ルールを侵したわけでもない。試合の状況に応じて選手を変えるのは、監督の権利であり、義務だ。また、このような遅延行為は、渡辺監督が初めてではない。
 このようなことがある度に、「『3時間半ルール』を見直す必要があるのでは」との声も挙がるが、個人的にはこのルールを認めている。せっかちな現代の日本人には意外とマッチしているし、遠征で遠出する際には、帰りの時間を計算しやすい。

 問題は、ルールの背後にある精神だ。「3時間半ルール」は、引き分け狙いのためのルールではない。昨年の東日本大震災による節電対策として採用された。
 それを、いくらルールに抵触していないとは言え、自分たちの都合で解釈するのは、見ていて後味が悪い

 そこでどうだろう、審判員がもっと毅然とした態度で、選手や監督に、試合の迅速な進行を促してみては
 さすがに監督による選手交代を拒否するのは難しいが、何度もマウンドやバッターボックスを外す選手、のんびりと守備につく選手、必要以上にタイムを要求する選手や監督などには、注意をしてもいいのではなかろうか。
 メジャーの審判員は、そのような選手や監督を厳しく注意している。わが国も彼らを見習わないと、ファンは退屈な野球に背を向けてしまう。