川崎Fvs札幌のキックオフ前に、大宮が横浜FMと引き分けました。その知らせにホッとした表情を浮かべる記者が多かったと思います。もしも大宮が勝っていれば、この試合に札幌が勝たない限り光格が決まるからです。みんな悲しい記事は書きたくないという思いがあるようでした。そして、かつて川崎を率い、J1まであと一歩というところまでチームを育てた石崎監督の悲しむ顔を見たくないという思いが、川崎の昔からいる記者にはあった気がします。

ですが、試合が始まる少し前から大宮と新潟の直接対決が残っているから、もしも札幌がこの試合に負けると降格になるかもしれないという情報が入ってきました。慌ててみんなで計算します。記者さんたちは会社に電話し、確認作業を行っていました。そしてある社がJリーグ広報部と連絡を取り、事実であることを確認します。また、過去最速での降格であることもその場で確認されました。

それぞれの記者さんは自分たちが確認できると、それを社の壁を越えて教え合っていました。そこはがっちりスクラム。そういう事実の部分ではなくて、もっと別の味で他社と差別化しようと言うことだと思います。

ただ、みんな試合を見ている間中、降格が決まらないでほしいという雰囲気を漂わせていました。川崎の攻撃になると息をのみ、札幌の攻撃のときはイライラするという空気で記者室は包まれました。もちろん川崎担当の人たちの思いは逆だったのでしょうが、それでも目の前で降格が決まるというのは何とも重苦しいものです。

結局、川崎がゴールを奪い、札幌は効果的な反撃を見せられず、ついに札幌の降格が決まりました。記者さんたちは一瞬、辛いという顔をしたものの、すぐに表情を押し殺して階段を下りていきました。本当は「よかったね」と言える取材がみんな好きなんですよ。辛い人を取材すると、取材しているほうまで苦しいから。

試合後、知り合いの札幌の広報の方から「お久しぶりです。久しぶりなのにすみません」と挨拶してもらったのですが、僕はその「すみません」という言葉がとても辛く、心に刻み込まれました。