代表戦が近づき、香川・本田のポジション論争がまた熱くなってきていますが、どうもそこに大きな違和感を感じる。というか、香川の話になると、どうも多くの人の論点がズレているような気がしてならない。本田との兼ね合い、香川のポジション適性、ザックのサッカー、そこも当然重要ではあるけれど、それよりも重要なのは、相手がこうだからこうやろう、という判断力、そこが香川にはまだ足りていない、という事だと思う訳です。

ザックは「スタートポジション」をサイドに取るよう求めている。しかしそれは、純粋なサイドアタッカーを求めているからではなく、まずはサイドの高い位置を起点とした攻撃がしたいから。そしてそこから、中へ向かってプレーするのか、サイドを縦へ向かってプレーするのか、そこは個人の状況判断に任せている、という事だと思います。従って、むしろザックは、サイドの高い位置には、どちらもできるMFタイプの選手を起用する傾向にある。

右サイドは、今は岡崎が定位置ですが、その前は松井で、岡崎の控えとしては清武や藤本である場合が多い。そして岡崎は、ザックの最初の構想では、左サイドだったはず。また、左サイドは、香川が定位置で、そこで試された他の選手は、乾、宮市、大久保、田中順也、原口、関口、興梠、という選手たちですが、サイドアタッカーと言える選手とそうではない選手との比率を考えてみれば、ザックが純粋なサイドアタッカーをそこに求めていないと言えるはず。

まずはそこが1つと、もう1つには、香川が左サイドから中へ入り過ぎる、という事に関して、それが良いか悪いかはケースバイケース。オーストラリア戦で、香川や岡崎が中へ入り過ぎてダメだと書いたのは、相手が中央を固める守備方法であったからで、相手がどんどんサイドにも守備対応してくるようであれば、別に中へ中へ入っても構わない。要するに、スペースがどこにあるのか、という問題であって、恒常的にどちらが正解という事ではない。

おそらく、最近のザックが中へ入り過ぎる香川を心配しているのは、そして、私が香川が中へ入り過ぎる事を心配しているのは、そこに状況判断が無いから、という事。ザックは、香川が中へ入ってプレーする事を、ある程度容認していると思いますが、それは「外でも中でもプレーすべし」というのがザックの求めでもあるからで、但し、この試合では、この試合の相手では、今の状況では、サイドと中と、どっちでプレーした方が良いのか、その判断を今の香川はきちんとやっていない、そこが問題であると思う訳です。

今の香川は、トップ下、中央、バイタルエリア、ゴール前、なるべく高い位置、そこでプレーしたい、もしくは、そこでプレーしなければならない、そういう考え方に固執し過ぎていて、それは2年目のドルトムントでのシーズン序盤の不調であった時もそうだったのですが、それで相手が見えなくなっているところがある。何度もしつこく言うようですが、サッカーは相手があるスポーツなので、自分(たち)がこうしたい、という事だけではやれない。

やれない、というか、やることはできますが、それだけでは常に良いパフォーマンスは出せないし、強いチームにはなれない。そこが2つ目ですね。そして、3つには、そこに、香川のプレースタイルから考えて、そもそもサイドというのは適性のあるポジションではない、という事もあって、本田もそうである、という事が、問題を難しくしていると思う訳です。もちろん、香川も本田も能力の高い選手なので、サイドでもある程度結果は出せますが、サイドが向かないという部分で共通しているのは、守備負担の部分ですね。