フォルティテュード・ボローニャはこのほど、元埼玉西武ライオンズG.G.佐藤(佐藤隆彦)の解雇を発表した。

 G.G.佐藤は2011年のシーズン終盤にライオンズから戦力外通告を受け、今季からボローニャに入団。42試合に出場し、160打数51安打で打率.3193本塁打22打点の成績だった。
 今後については「イタリアの他チームならやってみたいという気持ちと、もう(引退しても)いいかという気持ちの両方がある。日本で家族とも相談したい」と話している。

 突然の解雇は、外国人選手のイタリアリーグカップへの出場制限が原因と言われている。
 
 イタリアリーグカップはレギュラーシーズン・ゲームと並行して行われる大会だが、この大会には外国人選手の出場枠が無い。よって、日本国籍のG.G.佐藤は大会に出場できない。
 外国人選手は大会期間中、レギュラーシーズンの再開に向け、2軍に合流するかチームに帯同し相手チームをベンチで研究するのが一般的とされている。
 G.G.佐藤は、チームに帯同するよう命じられたのだが、これを拒否試合に出場できないのなら、家族とリフレッシュし、レギュラーシーズンに備えたいと、球団に申し入れた。
 このことが、今回の解雇につながったとされている。

 G.G.佐藤はライオンズ時代から契約交渉で球団と衝突することが多かったと言われている。このため今回の解雇についても、一部ではG.G.佐藤を非難する声が挙がっている。
 しかし、キャリアを考えると、G.G.佐藤の言い分もわからなくもない。

 G.G.佐藤はライオンズに入団する以前、単独渡米マイナーリーグでプレーしたが、米国には外国人選手の出場枠など、無い。国籍、人種に関係なく、外国人選手に門戸を開放している。

 もちろん、米国に差別が無いとは言い切れない。例えば1991年にわが国の任天堂シアトル・マリナーズを買収しようとした際、日系資本の球界参入に一部で猛反発が起こった。
 その急先鋒はシカゴ・ホワイトソックスのオーナー、ジェリー・ラインズドルフ氏で、オーナー会議では映画「フィールド・オブ・ドリームス」の1シーンを上映し、任天堂による買収に異を唱えた。
 これに当時のコミッショナー、フェイ・ヴィンセント氏が同調。「メジャーリーグは、米国やカナダ資本以外の参入を断固拒否する方針をとってきた。外国資本は球界では歓迎されないだろう」と言った。

 だが、米国は、表向きは多民族性を強みにしている。だから球界に外国人枠など、存在しない。これはバスケットボールの世界でも同様で、プロレスのプロモーターとして財をなしたドン・ムース・ルイス氏が2001年、白人選手だけのリーグ、オールアメリカン・バスケットボール・アライアンスの設立を発表した際、周囲からは反対の声が挙がった。

 そんな米国でプロとしてのキャリアをスタートしたG.G.佐藤には、イタリアリーグカップの出場制限など、とうてい理解できるものではないはずだ。

 一方で、わが国には「郷に入っては郷に従え」とのことわざがある。その土地へ行ったら、その土地の習慣にしたがうのがよいという意味だ。
 わが国の球界にも外国人選手の出場枠があり、多くの外国人選手がそれに従っている。G.G.佐藤もイタリアで野球を続けたいのなら、大人しく球団の方針に従う方が利口だった。

 だが、考えて欲しい。もしテキサス・レンジャーズダルビッシュ有や、ニューヨーク・ヤンキースイチローが、日本人であるというだけで試合に出られないとしたら、どうか。
 その結果、彼らがボイコットを決断しても、多くの日本人は彼らを支持するだろう。

 そういう意味では、 G.G.佐藤の決断は十分に理解できる。