7月7日(土)Jリーグ第17節
鹿島アントラーズ1−0大宮アルディージャ(18:34/カシマサッカースタジアム/12,787人)

【アシスト → 得点】
74分 大迫 → 西[1]

【先発メンバー(鹿島アントラーズ)】
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【交代出場(鹿島アントラーズ)】
66分 小笠原 → 本山
72分 中田 → 青木
86分 興梠 → ジュニーニョ


【警告(鹿島アントラーズ)】
80分 ドゥトラyellow_card01.gif


■厳しい展開を耐え抜いた前半、ハーフタイムに指揮官の熱いゲキが飛ぶ!
 この試合の前半は、ラファエルが離脱した大宮相手にピンチの連続でした。この日は、岩政が出場停止のため、中田浩二が久々のスタメン復帰。中田がコントロールする守備陣は、いつもよりラインを高めに保って、コンパクトなディフェンスを心掛けていたと思いますが、前線からのディフェンスが上手く機能せず、ディフェンスラインと、ボランチの間もやや間延びしてしまい、その空いたスペースに飛び出してくる相手の2列目の選手を掴まえる事が出来ませんでした。チョ・ヨンチョルのヘディングの落としに東が飛び出したシーンは、その状況を適確に表していると思います。前からのディフェンスが機能しなかった事により、カルリーニョスから、精度の高いロングボールも供給されていました。ナビスコカップでの大宮との対戦時には、梅鉢が粘り強くカルリーニョスを封じていただけに、この日の前半の戦い方には不安を覚えました。

 前述の東が抜け出し曽ヶ端と1対1になったシーンや、CKのこぼれ球を深谷が叩きつけてシュートを放ったシーン、右からのクロスに青木が飛び込んだシーン等、決定的なピンチを複数回迎えますが、曽ヶ端を中心に、何とか跳ね返し無失点で切り抜けます。
 遠藤の低くて速いグラウンダーのクロスに大迫が飛び込んだシーン等、鹿島にも決定機はありましたが、前半は完全に大宮ペースでした。前半の内容のまま、試合を終える事はないと、後半の巻き返しに期待しましたが、ハーフタイム中に、鹿島の伝統を理解し、そして自身の現役時代の経験から勝利のスピリットを持つジョルジーニョ監督が、熱い叱咤激励を選手達に送ります。J's GOALの記者会見コメントから、抜粋します。
『このアントラーズというのは7度のリーグ優勝を誇るチームです。歴史上、Jリーグ発足のときに99.9999%存在できないというところから、住友金属の人たちが一生懸命このスタジアムをつくり、クラブハウスをつくり、このクラブをつくってきました。常に厳しい条件のなかでやらされる使命というか、宿命を乗り越えて7度のリーグ優勝を果たしているチームです。その戦う姿勢、諦めない姿勢こそがアントラーズということです。試合を負けることも引き分けることもありますが、ただ戦う意識や意欲、積極性こそがまずアントラーズの選手である以上、絶対に欠かせてはいけません』

 サポーターの私ですら、大いに奮い立つメッセージですので、選手達の胸に強く響いたと思います。

 後半、チームは息を吹き返します。


■才能が融合した決勝ゴール
 この試合の様な、緊迫した試合では、ほんの一瞬の差が結果に反映され、勝負を分ける事が多いです。それは、ミスであったり、個人の力量差であったりとケースバイケースです。長年、鹿島アントラーズをサポートしてきている私ですが、現在、13位に沈むチームに対しても、個人のポテンシャルは3連覇時と比べても引けを取らないと信じています。

 この試合の決勝点は、信じている鹿島アントラーズの選手達の才能が見事に融合した素晴らしいゴールでした。スローインを受けた本山がタメを作って、中央のドゥトラへ。受けたドゥトラは縦へのくさびのボールを大迫へ。この試合、両チーム最多のシュート8本を放ち常に相手DFに脅威を与え続けていた大迫は、同時に背を向けた状態からの鋭いターンを持ちます。大迫を警戒している相手DFを背に、しっかりとボールをキープしながら右サイドの西へ、シュートとクロス、両方の選択を出来るスペースに丁寧なボールを供給します。それを受けた西は、思い切り良く、見事なシュートをゴール左隅に決めます。ゴールを決めた西も素晴らしいですが、シュートとクロス、両方の選択を出来る位置へパスを供給した大迫も褒められるべき素晴らしいプレーでした。

 ジョルジーニョ監督も、試合後に1970年のワールドカップで、ペレのアシストから決めたカルロス・アウベルト・トーレスという右SBの選手が得点したような形だったと回顧していましたが、この西のゴールも語り継がれるゴールとなったかもしれません。このゴールをきっかけに、西が鹿島のサイドバックとしての系譜を継いで、日本代表で内田篤人とスタメンを争うくらいまで成長する事を祈っています。

 前半は不安定だった鹿島守備陣も、徐々に安定していき、終盤は安心感がありました。ジョルジーニョ監督が、褒め称えていた様に、山村は素晴らしい出来だったと思います。球際も厳しくいっていましたし、前線で残っていた時の鋭いターンで相手DFを置き去りにしてからの、グラウンダーのクロスは、攻撃の選手顔負けのプレーでした。
 待望の復帰を果たした中田浩二は、明らかにコンディションは万全ではなく、相手に置き去りにされてしまうシーンもありましたが、コンディションが至らない部分は経験でカバーし、危険な場面をいち早く摘み取ったり、前線の選手に適確なコーチングを出したりと、足をつるまで後方からチームを支えました。ヘディングの競り合いでは、ほとんど勝利していたのにはびっくりしました。

 曽ヶ端については、言うことはありません。素晴らしいセーブの連続でした。

 そして、完封した守備陣の隠れた貢献者として、柴崎を挙げたいと思います。下がりめの位置でボール回しに参加し、時には最終ラインまで降りた位置でビルドアップに参加していました。パスミスも少ないですし、正確なロングフィードを持つので、両サイドバックがリスクをあまり背負わずに攻撃参加出来ます。
 次節は岩政が先発復帰を果たします。相手CFを食い止める技術は日本でもトップクラスの岩政ですが、反面、ビルドアップのスキルは平均以下に留まります。精度の低いロングボールを蹴って相手ボールにしてしまうよりも、柴崎がフォローする事によって、丁寧に後方から組み立てる事で、チャンスも広がると思います。
 また、最近、柴崎のパスを出した後の動きが、かなり向上された様に感じます。後方でのパス回しに参加している時でも、パスを出した後に、動きを止めず、リターンを受ける位置にすぐにポジションを取り直します。この動きは攻めの時でも活用されており、後半、興梠にパスを出した後、すぐに動いてリターンを受け、大迫にアウトサイドでラストパスを送ったシーンは、惜しいシーンでした。柴崎が中盤の底からゲームをコントロール出来る様になれば、鹿島の勝利は大きく近づきます。柴崎の成長に期待しましょう!


 最後まで読んでいただいてありがとうございます。苦しい時間帯を凌いで、後半のファインゴールで見事に勝ち点3を獲得しました。勝利こそが、今のチームに必要であり、勝ち点3はチーム状態を上げていく、良い薬になると思います。試合の入り方はもう少し改善する必要がありますが、ジョルジーニョ監督に率いられる選手達の修正力はかなり上がって来ました。今シーズン初の1−0の勝利で、鹿島アントラーズの伝統である勝負強さが眠りから覚めてくれる事に期待します。一戦必勝で、目の前の試合に勝利し、順位を上げていきましょう!この試合の西のファインゴールが、『後から振り返った時にターニングポイントであった』となる事を祈ります!