サプライズは、なかった。7月2日に発表されたロンドン五輪のU−23代表である。この日記者会見に臨んだ関塚隆監督は、「我々がいままでやってきた、攻守に連動するサッカーができる18人を選んだ」と説明した。「色々なことを想定しながら、そのなかでチームとして機能できる選考」とも話している。

 世界との実力差を突きつけられた先のトゥーロン国際を受け、個人的には海外組をどの程度呼び込むのかに注目していた。同大会に招集された宇佐美、高木、指宿らは、「個」の力をアピールした。フル代表に招集されている宮市も、スピーディな突破力を強みとしている。彼らが加わったチームが、どんな化学反応を見せるのかという期待感を抱かせた。
 
 問題は時間である。スペインが待ち構える7月26日の初戦までに、日本はニュージーランド、ベラルーシ、メキシコとトレーニングマッチを行なう。「3試合ある」と考えるのか、「3試合しかない」と考えるのかによって、どこに重心を置いてチームを組み立てるのかが変わってくる。

 すなわち、継続性か、未知なる爆発力か。
 関塚監督が選んだ18人は、継続性を示している。安定感とバランスも。
 たとえば、原口、高木、宮市らを選出すると、同じドリブラーの齋藤やトップ下とサイドでプレーできる東が当落線上に浮上する。

 彼らアタッカー陣を漏れなく選び、守備で力を発揮する選手を削る選択肢もある。そうなると、ディフェンスのリスク管理が心もとない。

 彼我の力関係を考慮すると、DFラインの選手やボランチがカードをもらう可能性は高い。守備のバックアップには、ある程度の厚みが必要だ。指揮官が語った「色々なことを想定しながら」というのは、そのあたりを意識したものだろう。

 守備的な人材がわずかに多いとの印象はあるものの、全体的には予想どおりと言っていい。どのポシジョンにも、2人以上の候補者が揃う。攻守にバランスの取れた陣容だ。

 ちなみに、チームの立ち上げとなった10年秋のアジア大会に出場したのは、GK安藤、DF鈴木、MF山村、東、山口、FW永井の6人にとどまる。J1リーグと日程が重なるため、同大会は主力抜きの構成だった。それにしても、選手の入れ替わりは激しい。成長スピードが速いこの年代ならではと言える。

 個人的に残念なのは、指宿の落選だ。
 高さを特徴としたストライカーという意味で、杉本との二者択一になったのだろう。187センチの杉本も、ポストワーカーとしては魅力的だ。期限付き移籍先の東京Vでは、スタメンを確保している。09年のU−17ワールドカップに出場した経験もあり、関塚監督のもとでプレーしたこともある。

 僕が指宿を推したいのは、スペインへの抗体が備わっているからだ。グループステージ初戦で激突するスペイン戦は、きわめて重要な一戦となる。ここで勝ち点1をつかめれば、グループステージ突破の可能性が拡がる。逆にスペインに勝ち点3を献上すると、決勝トーナメント進出に黄色信号が灯る。

 それだけに、セビージャの下部組織でプレーしている彼の皮膚感覚を、チームの強みに加えたかったのである。足元のテクニックもしっかりとしているだけに、日本のパスサッカーにもフットできたはずだが……。ここは継続性やバランスでなく、指宿が加わることによる爆発力に賭けてほしかった。

 この日行なわれた記者会見は、なでしこジャパンのメンバーが先に発表され、次いでU−23代表が明らかになった。都内ホテルの宴会場は報道陣で埋めつくされたが、なでしこの発表が終わると空席が目についた。一般的な期待と関心は、男子より女子が上回るというわけだ。

 今回のチームは、U−20ワールドカップの出場を逃した二つの世代の混成チームとなっている。「負の歴史」を作ってしまった彼らにとって、ロンドンは借りを返す舞台だ。若年層から抱いてきた反骨心を、来るべき五輪にぶつけてほしい。