試合 :EURO2012 グループB 第2戦
開催日:2012年6月13日
結果 :ドイツ勝利
スコア:「1−2」
得点者:ゴメス×2 ファン・ペルシー

○ オランダ

FW:ファン・ペルシー
MF:アフェライ スナイデル ロッベン
MF:ファン・ボメル デ・ヨンク
DF:ビレムス マタイセン ハイティンハ ファン・デル・ビール
GK:ステケレンブルフ

FW:ロッベン フンテラール ファン・ペルシー
MF:スナイデル ファン・デル・ファールト
MF:デ・ヨンク
DF:ビレムス マタイセン ハイティンハ ファン・デル・ビール
GK:ステケレンブルフ

FW:フンテラール
MF:スナイデル ファン・ペルシー カイト
MF:デ・ヨンク ファン・デル・ファールト
DF:ビレムス マタイセン ハイティンハ ファン・デル・ビール
GK:ステケレンブルフ

○ ドイツ

FW:ゴメス
MF:ポドルスキ エジル ミュラー
MF:シュヴァインシュタイガー ケディラ
DF:ラーム パトシュトゥバー フンメルス ボアテング
GK:ノイアー

FW:クローゼ
MF:ポドルスキ クロース ラース・ベンダー
MF:シュヴァインシュタイガー ケディラ
DF:ラーム パトシュトゥバー フンメルス ボアテング
GK:ノイアー


オランダもドイツも同じような戦い方で、あまりリスクを冒した戦い方はせず、基本的に攻撃は前の4枚だけで攻める、そしてそこに、ボランチの1枚であったりSBの1枚であったりが加わる、後ろの人数はきっちり5枚から6枚は残しておく、という戦い方でした。但し、1つだけ大きな違いというのがあって、それは、2列目の選手の守備意識の高さですね。

攻撃に関しては、前半は、結果的には、ドイツが2得点し、オランダが無得点でしたが、オランダも3回ぐらいチャンスを作っていて、その内の1つは決定的なチャンスでした。ファン・ボメルからのロングフィードを、DFラインの裏へ完全に抜け出したファン・ペルシーがダイレクトでシュート、それが決定的なチャンスでした。

他の2つは、中盤でボールを奪い返し、ロッベンからのスルーパスを受けたファン・ペルシーが右足でシュート。そして、カウンターから、スナイデル、ロッベン、とパスが繋がり、ロッベンからのスルーパスを受けたアフェライが左サイドを抜け出してセンタリング。これはニアへ入ったファン・ペルシーにセンタリングが合えば、というシーンでした。

一方、ドイツの大きなチャンスも3回ぐらいで、その内の2つをきっちり決めた訳ですが、まずは先制点。この先制点のシーンは、エジルがデ・ヨンクを引っ張り、ケディラがファン・ボメルを引っ張り、それによって大きく空いたバイタルエリアへシュバイシュタイガーが入って行き、最後はマリオ・ゴメスが個人技で決めた得点でした。

ファン・ボメルは、シュヴァインシュタイガーがフリーでバイタルエリアへ入って来たのを認識できていましたが、ミュラーがドリブルでファン・ボメルのいるゾーンへ仕掛けて来ようとしていましたので、シュヴァインシュタイガーの方へ行く事ができませんでした。しかし、じゃあどうしようもなかったのかと言うと、ロッベンが余っていましたよね。

ロッベンはシュヴァインシュタイガーの外側にいて、シュヴァインシュタイガーがフリーでバイタルエリアへ入って行くのが見えていたはずなのですが、それに対して対応しようという気が全くありませんでした。もしこの時にはロッベンがしっかりシュヴァインシュタイガーへ対応していれば、この失点は防げた可能性があったかなと思います。

そして、今度はドイツの2点目ですが、ここはスナイデルですね。GKからのロングフィードをゴメスがマイボールにして、エジル、シュヴァインシュタイガー、とパスが繋がり、最後は再びゴメスがシュヴァインシュタイガーからのスルーパスを受けてシュートを決めた得点でしたが、やはりここでもシュヴァインシュタイガーが完全にフリーでした。

デ・ヨングはエジルに付いていて、ファン・ボメルはフリーでしたが、バイタルエリアを埋めていた。そうなってくると、左サイドにいたシュヴァインシュタイガーに対応できるのは、このシーンでは左サイドにいたロッベン、もしくはトップ下のスナイデル、という事になる訳ですが、ロッベンは相手の右SBの選手をケアしていました。

ロッベンが頑張れば、シュヴァインシュタイガーへ対応に行けなくもなかった、とは思いますが、やはりGKからのフィードでもありましたし、ここではしっかりトップ下のスナイデルがシュヴァインシュタイガーをケアしておかなければならなかったと思います。しかし、スナイデルは、残念ながら前の方をテクテクと歩いていました。

要するに、2つの失点どちらも、2列目の選手の守備意識、という事ですよね。デ・ヨングをエジルのマンマーク気味に対応させているならば、当然サイドへ引っ張り出されてしまう事は多くなるので、じゃあそのデ・ヨングが引っ張り出されてしまって生まれたスペースを誰が埋めるのか? やはり2列目の選手の誰か、しかいないですよね。

結局、ドイツと比べてオランダのDFラインが早々に下がってしまうのは、低い位置を取らざるを得ないのは、中盤の守備力、プレスの威力、それがオランダの方が低かったからで、そこもやはり2列目の選手の守備意識の差だったと思います。やはりせめて1人ぐらいは、2列目のところに、運動量が豊富で守備意識(能力)の高い選手、というのが欲しいかなと思います。

そして、2点のビハインドとなってしまったオランダは、後半スタートから、アフェライに代えてフンテラール、ファン・ボメルに代えてファン・デル・ファールト、という交代采配を行い、システムを「4−1−2−3」へ変えてきました。フンテラールがCF、ロッベンとファン・ペルシーがサイド、スナイデルとファン・デル・ファールトが2列目、という布陣ですね。

それで、後半は、少しオランダが活性化されたかなとは思いますが、しかし、この選手交代やシステム変更で活性化された、というよりも、1つには、前半よりもスナイデルやロッベンがしっかり守備をするようになった事と、もう1つには、ドイツが前半よりもDFとMFの間のコンパクト性を欠くようになっていた事と、それが大きな要因だったかなと思います。

なぜドイツがそうなってしまっていたのか、というのは、やはりスタミナの問題だったのかなと思いますが、とにかくそれが理由で、オランダがマイナスへ入れるようなサイドからのセンタリングでチャンスを作れるようになり、ファン・ペルシーが惜しいシュートを撃つシーンがありました。ドイツの、2列目の選手が戻れなくなっていた、中盤のプレスの威力が落ちていた、という感じですね。

そして、後半28分、オランダがファン・ペルシーの得点で1点を返す事になりますが、その前の後半25分ぐらいから、フンテラールとファン・ペルシーの縦関係の2トップ、左にスナイデル、右にロッベン、という、「4−2−3−1」に近い形にオランダは戻していて、ファン・ペルシーを前線やサイドで張らすのではなく、ある程度自由に動けるようにした、それが功を奏したかなと思います。

中央から左へ流れて、バイタルエリアでボールを受けたファン・ペルシーが相手DFをかわして前を向くと、そのまま右足でパトシュトゥバーの股の間を抜くシュートを決めました。この試合のマリオ・ゴメスの2つの得点とファン・ペルシーの得点、いずれも素晴らしい個人技が発揮されたもので、やはりこの2人は世界屈指のFWだなと思いますね。

という事で、これでスコア「1−2」、1点差となった試合になりましたが、失点の後から再びドイツが、もう1回ギアを上げてしっかり守り抜き、そのままスコア「1−2」でドイツが勝利、という試合結果になりました。これで、ドイツは2連勝、オランダは2連敗、という事になり、まだ可能性は残されていますが、オランダはかなり苦しくなりましたね。

ドイツに関しては、南アフリカW杯の時から大きく変わっていませんし、マリオ・ゴメスがしっかり得点を取れていますので、チーム力としてはやはり高いかなと思います。どの選手も、よく動き、長い距離を走り、きちんと守備をしていますので、それがこれからも続けば、やはり優勝候補かなと思います。但し、ポドルスキーのパフォーマンスというのが、少しだけ気にはなりました。