オマーン代表を3-0で破った日本代表。幸先よいスタートではあったが…… (C) Tsutomu KISHIMOTO

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“勝てばいいのか?ザック流”。
3-0は大勝と言える試合なのか。
相手はシュート1本というのを考えると。

11分、今野の強いパスが前田に通る。前田は香川にボールを戻すとリターンをもらって長友を走らせた。長友が力強いドリブルからクロスを上げると、そこには金髪のエースが待っている。本田のダイレクトボレーにはアルハブシも反応できず、日本が待望の先制点を早々に挙げた。

いよいよ始まった2014年ブラジルワールドカップ・アジア最終予選、初戦で日本はオマーンとホームで対戦した。日本にはこの最終予選で少しでも早く突破を決めなければならない理由がある。オーストラリア、イラク、ヨルダン、オマーンと日本の5カ国で争うリーグ戦では、各節で必ず1チーム試合がない国ができる。日本の試合がないのは最終節。つまり、それまでに突破を決めておかないと、自力ではどうしようもない状況に陥ってしまうのだ。

オマーンは反撃に移れなかった。丁寧にパスをつなごうとするが、そのぶん、日本の守備に阻まれた。前半の時間が進むにつれて、ますます日本がボールを支配するようになり、ゴールを狙ったのは43分、ペナルティエリア外からドゥールビーンが放った一本だけ。そのシュートも弱々しく、川島が簡単にキャッチした。

ところが、日本はパスを回して崩すものの、追加点を挙げられない。31分、岡崎のヘディングはゴールを外れ、39分の長友のシュートは相手選手に当たってゴールラインを割った。40分には岡崎が再びヘディングで狙ったが、アルハブシの美技にゴールは割れなかった。前半のボール支配率は63.7%あったが、結局1点を奪ったまま終わる。

決定機にゴールを埋めないイヤなムードを断ち切ったのは51分。香川のパスに前田が抜け出しGKと1対1になる。トラップが大きくてアルハブシに詰められたが、わずかに先に触って追加点を決めた。

さらに54分、ペナルティエリア内で前田が仕掛け、左足で狙ったシュートが相手に当たる。このボールが幸運にも岡崎の前に転がり、岡崎はGKに一度は弾かれたものの、しっかりと蹴り込んで3点目を生んだ。

後半が始まってから60分までの15分間、日本はボールを67.9%支配した。その中での2得点は、日本の実力を十分に発揮したものとなった。

ところが、ここから日本は停滞する。その後のボール支配率は50%を切り、結局後半トータルでは51%にまでダウンした。それでもオマーンの攻撃には迫力がなく、そのまま日本は逃げ切って初戦を3-0の完勝で終えた。89分、酒井が右サイドを突破し、折り返しを本田がシュートして、さらにこぼれ球を清武が狙ったが、これもアルハブシのスーパーセーブに阻まれた。

結果だけを考えると初戦で3-0は問題がない。だが内容は、パスミスが多く、守備でもハイボールを後逸するような信じられないミスも出るという不安の残るようなプレーだった。特にこれまで日本代表の中盤でプレーメイクしてきた遠藤は、コンディション不良かと思われるようなプレーぶりをみせた。

それでもザッケローニ監督はイエローカードをもらった内田、運動量の落ちた岡崎を先に代え、遠藤に代えて投入したのはゲームをクローズさせる細貝だった。もしもさらにゴールを狙いにいくのなら、同じポジションの中村や、FWをもう1人入れるという選択肢があっただろうにも拘わらず、ザッケローニ監督は非常に手堅い策を選択したのである。

この、ともかく勝利を重ねることがザッケローニ監督流なのかもしれない。メンバー発表の記者会見で、「自分の経験から計算しないことが大切だと感じています」と語っていたからだ。

だが、もしも得失点差が問題になってきた場合は、このもっと点を取れる試合を3-0で終わったことが思い出されるようになることだろう。8日のヨルダン戦までには、全体のコンディションとコンビネーションが戻るだろうか。アジアカップの主力メンバーだったのだから、連携が戻らないはずはないのだが……。(文=森雅史)

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