アップルが中国国内で「iPad」という商品名を使うのは、商標権の侵害だ──そう訴える中国企業とアップルの対立は、裁判を経て中国全土に広がろうとしている。

 まず、ウェブサイト「アップル・インサイダー」の記事でこれまでの流れを押さえておこう。


 アップルが「iPad」の商標権を取得したのは2006年。(イギリスを本拠とする)IPアプリケーション・デベロップメント社を介して、 台湾のディスプレイメーカー唯冠科技(プロヴュー・エレクトロニクス)から5万5000ドルで商標権を譲り受けた。

 だが唯冠科技は、この取引には中国本土におけるiPadの商標権は含まれていなかったと主張している。中国本土の商標権は、香港に本部を置く唯冠国際控股(プロビュー・インターナショナル・ホールディングス)の中国子会社が保有しているという。


 広東省深センを拠点とするこの子会社は昨年、商標権を侵害したとして中国の裁判所にアップルを提訴。アップルも逆提訴したが敗訴し、上訴している。

 今後の裁判で再びアップルの権利侵害が認められれば、中国本土でiPadを販売できなくなったり、高額な罰金を科せられる可能性もある。緊張が高まる中、事態は新たな局面に突入した。

 河北省の省都、石家荘市の一部の電気店からiPadが撤去されたと、中国メディアが相次いで報道したのだ。「地元当局に商品を差し押さえれることを恐れる一部の小売店が、iPadを倉庫に移動させている」と、中華日報は報じた。「2月9日、石家荘市新華区の検査官がiPadの販売停止に乗り出し、2日間で45台のiPadが当局に没収された」

■それでもアップルの株価は上昇中

 iPad差し押さえの動きは中国各地に広がりつつあるが、それでもアップルの株価は上昇を続けている。来月にも発表されると見られるiPad3への期待感が続いているのを受けて、13日には同社の株価は初めて500ドルの大台に乗った。

 アップルが新製品にiPadの名を使い続けるつもりでいるのは、言うまでもない。

GlobalPost.com特約

トーマス・ムチャ