今年からJリーグに「クラブライセンス制度」が導入される。これは、Jリーグが定めた基準を満たせないクラブには参加資格を認めないというもので、対象となるのは今季のJ1、J2所属40クラブに、JFLに所属するJリーグ準加盟の2クラブを合わせた42クラブ。

 審査は全56項目に上るが、なかでも注目されているのが「2012年度から3期連続で赤字(当期純損益)計上」、または「(14年度決算以降)単年度で債務超過」という財務基準だ。これを満たせなかったクラブは、JFLなどの下部リーグに降格したり、場合によっては解散せざるを得ない事態に陥ることもある。

 現状でいえば、10年度決算でJ1、J2の37クラブのうち、約半数の18クラブが赤字決算、10クラブが債務超過となっている。この厳しい審査基準には、Jクラブ関係者からも悲鳴が上がる。

「ここ数年、われわれのクラブは赤字続き。まず目指すべきは単年度黒字というのが現状で、債務超過の解消はその先の話。もちろん、われわれとしては努力するしかないのですが」(某クラブ担当者)

 そもそも、この制度はドイツで策定されたもの。それを各国の強豪クラブが戦うチャンピオンズリーグの参加資格としてヨーロッパサッカー連盟が04〜05シーズンから採用を決め、これを受けて国際サッカー連盟も08年に同制度を導入。アジアサッカー連盟もアジアチャンピオンズリーグの参加資格として10年に導入決定と、要するにJリーグの立場としても“やらざるを得ない”わけだ。

 とはいえ、ヨーロッパで導入されたときと今の日本とでは、台所事情がまったく違う。当時のヨーロッパでは、リーグ戦のテレビ放映権料が高騰。各クラブが選手補強のため湯水のごとく資金を投入したため、身の丈に合わない経営をするクラブも出てきた。結果、経営破綻をきたすクラブも現れたため、そのような流れを抑制しようとこの制度が導入されたのだが、言うまでもなく今のJリーグはそれとは真逆の状況。

「率直にいって、この状況での制度導入は非常に厳しい。Jリーグ側は経営難のチームを追放するために導入するのではない旨を会見などでアナウンスしていますが、実質的にこの制度によって退場せざるを得なくなるクラブも出てくるでしょう」(サッカー専門誌編集者)

 赤字を補填してくれる企業があれば、危機は乗り越えられる。おそらく、横浜FMや京都、神戸あたりは最終的にはなんとかなるのだろう。ただ、今は親会社を持たないクラブもJ2を中心にいくつも存在する。そしてライセンスは、毎年更新しなければならない。

「結局、継続して収益を挙げるシステムを各クラブが確立しなければいけない」(前出・編集者)

 J2・大分のように10億円以上もの債務超過があり、しかも有力な親会社の存在しないチームは、今後非常に厳しい立場に追いやられるだろう。相当の資金調達策がなければ、この金額を数年間で解消するのは難しいためだ。一方、札幌や岐阜などの債務超過額は1億円未満。この額なら、大口のスポンサーがなくとも3年あればクリアできない数字ではないと、サッカー専門サイト『サポティスタ』の岡田康宏編集長は語る。

「今まで、一部のJクラブは非常に考えの甘い経営をしてきた。それが現在の苦境を招いています。逆に地方の小さいクラブでありながら、うまくやりくりをしているところもある。甲府のように地道な営業努力で地元のスポンサーを数多く獲得し存続の危機から立ち直ったクラブもあれば、鳥栖のように運営会社が変わってから経営を立て直してJ1に昇格してきたクラブもある。こうしたクラブのやり方に倣(なら)えば、多くのクラブは財政状況を改善できるはずです」

 14年にJリーグの所属チーム数が激減する可能性は低い、というのが専門家の一致した見方だ。しかし問題は山積している。開幕して20年、Jリーグは非常に厳しい局面を迎えている。

(取材・文/木場隆仁)

【関連記事】
「亡き松田直樹にこの勝利を捧げる!」松本山雅、奇跡のJリーグ昇格物語
ベストセラー『オシムの言葉』の著者が描く、Jリーグ・我那覇ドーピング冤罪事件の真実
リュングベリ清水移籍で、欧州の大物サッカー選手が続々とJリーグにやって来る?
プロ野球選手、Jリーガー、競輪選手、プロレスラー? AKB48ファミリーに増えるスポーツ選手の娘たち
リアル『キャプテン翼』。10歳でバルサに入団した天才サッカー少年・久保建英くん