大阪W選挙を大差で制した橋下徹新大阪市長。その野望は「大阪都構想」はおろか、「政界の革命児」として永田町でも脚光を浴びている。しかし、その一方で橋下府政の失政に対し、市民団体は厳しい目を向ける。いわく「府庁舎移転失敗の費用11億円を支払え」というのだ。その渦中の市民団体代表が、橋下府政の“失策”を告発する。

橋下府知事“最大の失政”

「まだ市役所の予算書を精査したわけでないが、非常に意味がわからない補助金がたくさん出ている。そこを徹底的に見直す。市職員の給与体系もしっかり見直す」

 こう宣言したのは、大阪市長に当選した直後の橋下徹新市長(42)だ。いわゆる行政の“ムダ”を排除し、効率化をいっそう進めるという決意表明。今回のW選挙では「都構想」や「教育制度改革」などが争点となったが、あまり顧みられなかったのが、大阪が抱える「財政改革」だった。この点についても切り込んでいくという頼もしい発言に拍手喝采した大阪市民は少なくなかった。

 しかしその一方で、当選直後から浮上しているのが、橋下氏の大阪府知事時代の“最大の失政”とも言われるWTC(大阪ワールドトレーディングセンタービル)への府庁舎移転を巡るトラブルだ。

「このままでは放っとかれへん。どっかで暴走を止めないと」

 と語るのは、橋下氏による独裁“ハシズム”に反対する市民団体、「ハシモトドオリの会」共同代表の藤永のぶよ氏だ。藤永氏は10月19日に行った住民監査請求の呼びかけ人で、現在、「大阪府知事だった橋下氏は、その耐震性が危惧されていたWTCを独断で購入した」として、購入費用など、計96億円の返還を求めているのである。

 もともとWTCは、バブル熱が冷めやらぬ1988年に、大阪湾岸の埋め立て地・咲洲地区に計画され、大阪市などが約1200億円の事業費をつぎ込んだ、西日本一の高さを誇るインテリジェントビルだった。しかし、バブルの崩壊とともに周辺地域の開発も頓挫。運営会社も09年には倒産した。つまりは大阪市の“負の遺産”として、宙に浮いた形となった。

 この負の遺産をあえて購入したのが、先日のW選挙で当選した、元大阪府知事の橋下氏だというのが市民団体の主張である。

 大阪湾岸全域を見渡せるWTCについて、橋下氏は府庁舎を全面的に移転するプランをぶち上げていた。橋下氏が目指す、釜山や上海、シンガポールなどの東アジア諸都市にも負けない国際都市・大阪にふさわしいとし、東京都庁に負けない物件として白羽の矢を立てたのだった。

「しかも、現府庁舎が老朽化による建て直しか移転かで揺れていたこともあり、運営会社の倒産前に85億円で購入。府議会の反対を押し切ってのトップダウンだった」(社会部記者)