これでこそアジア予選です!

多くの人が苛立ち、久々にストレスを感じたことでしょう。ワールドカップ・アジア最終予選、日本VSウズベキスタン戦。本田△・長友を欠く影響か、はたまたタンポポが咲く荒れたピッチの影響か、あるいは最近流行のピンポンダッシュ犯でも登場したか、日本はウズベキスタンを相手に大苦戦。2010年ワールドカップ以降では初めてといっていいほどの厳しい試合の末、辛くも1-1のドローで敗戦だけは免れました。

しかし、こういう苦戦があってこそ観戦の楽しみも増すというもの。勝負は勝ったり負けたりするから面白いのです。厳しい戦いがあってこそ予選を勝ち抜いたときの喜びも生まれるのです。アディショナルタイムまでスコアレスだった北朝鮮戦、開始8分で先制を許したウズベキスタン戦。アジアのライバルの強さで、3次予選がグッと面白くなりました。

今回の苛立ちを晴らすためにも、ウズベキスタンにはホームでどうしても勝ちたいという気持ちがわいてきました。第3戦、第4戦と連続であたることになるタジキスタンは格下と見られるだけに、万が一にも勝点は落とせないという緊張感が出てきました。北朝鮮のホーム戦で負ければ、あるいは3次予選での敗退もあるのか?という不安もよぎりました。

「ワールドカップベスト16」「無敗のアジア王者」「アルゼンチンも撃破」などと言われると、世界の強豪との試合以外は少し冷めた目で見てしまいがち。でも、世界の強豪との真剣勝負なんて4年に1回くらいしかありません。アジアのライバルとの対戦が盛り上がらなくては退屈なのです。そういう意味で、2010年からの大躍進で少し浮ついていた気分を、ピリッと引き締めてくれたウズベキスタンには感謝したいほど。

世界一のなでしこJAPANですらアジアで苦戦する日もあるのなら、アジア一のザックJAPANがアジアで苦戦するのは当たり前。世界の舞台の厳しさを想えば、「苦しみながらも最後は勝利で終わる」という少年漫画的面白展開は、アジアの舞台でしかできないのです。ただイライラするのではなく、この苛立ちを大きな喜びへのバネとして、「苦しみながら勝ち抜くアジア予選」を堪能していきたいものですね。

ということで、ぶっちゃけ向こうのほうが強かった「ワールドカップ・アジア3次予選 日本VSウズベキスタン戦」をチェックしていきましょう。



◆応援では人数的に圧倒されたけど、広告の数では負けていないぞ!

ウズベキスタン・タシケントのパフタコールスタジアム。1997年のワールドカップ予選では終盤までリードを許し、ワールドカップ絶望かと覚悟させられた舞台。そして2009年には岡崎のすっ転びダイビングヘッドで世界最速のワールドカップ出場を決めるも、長谷部一発退場・岡田監督(当時)退席処分という荒れた試合になった舞台。この競技場にはいつも苦戦しているようなイメージがあります。

その予感を確信へと変える大観衆。地元ウズベキスタンの人々は少数の日本サポーターを飲み込み、「え!まだ流行ってたの?」と驚かされる覚えたてのブブゼラの音がJAPANへの声援をかき消していきます。「ウズベキスタン6-0日本」という圧勝を宣言するボードも、この圧力の中では冗談に見えません。

しかし、日本側も負けてはいません。サポーターの人数で勝てないなら、金の力を見せつけろと言わんばかりの広告の波。スタジアムをグルリと取り囲む日本企業の広告は、地元企業を圧倒していました。ウズベキスタンの国旗と色合いが似ていることでおなじみのファミリーマートの広告。「ねぇフェイスブックナビって知ってる?」という看板には「知らねーよ。読めねーし」と日本側もビックリ。

そして現地に衝撃を与えたであろう、世界に羽ばたくサービス「DMM.com」。日本以外からは利用できないとのことですが、ドメインだけを記したその看板は紛れもない国際企業。「ウズベキスタン人がエロビデオ見にくるぞ」「ちゃんとダウンロードできるのかな…」「ザックJAPANよりアリスJAPANが話題になりそう」と日本側も戦慄を覚えます。

そして始まった試合。本田△不在の中、前戦では柏木を入れたトップ下の位置に、今回は長谷部を上げる新たな布陣にチャレンジ。遠藤・長谷部という鉄板のボランチコンビを崩して、遠藤・阿部という組み合わせで試合にのぞみます。しかし、比較的余裕のある局面から見せる、長谷部の前への推進力はトップ下に上げたことで霧散。若干高すぎるポジショニングと、狭いスペースでは物足りない器用さで、ボールを失う場面が頻発。ヘタに攻め込んでから失うぶん、チャンスよりもピンチを生み出す結果に。

そして組み合わせの妙というか、微妙なバランスの乱れも。「少し下がりたがる本田△」と「少し上がりたがる長谷部」と「バランスを取る遠藤」という組み合わせで絶妙な距離感を保っていた中盤が、この日は「少し上がりたがる長谷部」と「少し下がりたがる阿部」と「バランスを取る遠藤」という組み合わせにより全体的に間延び。FW陣も裏に抜けたがる顔ぶれが揃い、全体的に散漫になっていました。このことにより、ウズベキスタンの中盤は広いスペースでドリブル突破などを試みやすい状況に。

そんな中、試合が動いたのは前半8分。ウズベキスタンのカパーゼがポストを叩くミドルシュートを放ち、日本がクリアで逃れたあとの場面。左サイドのスローインからクロスを入れると、内田に当たり高い軌道に変わったボールが、中央での競り合いからエリア内で待つ相手の足元へ。そこにいたのはウズベキスタンのエース・ジェパロフ。ジェパロフはこのチャンスを落ち着いて決め、日本は6試合ぶりとなる失点を喫します。

↓シュートは普通だが、バク宙が半端なくスゴイ!


槙野:「あいつスゲーな」
槙野:「俺なんか側転しただけで怪我したのに」
槙野:「ケルンに帰ったらバク転の練習だ!」


そこからは両者がゴールを脅かす一進一退の攻防。前半14分に駒野のいいクロスから李のいいヘッドが飛び出しますが、ここは相手GKのスーパーセーブで得点ならず。逆に前半17分、ウズベキスタンが入れたクロスが川島の頭上を越えてゴールに飛び込みそうになるも、ここは川島が踏ん張ってゴールならず。

なかなか落ち着かない守備体型を整えるべく、日本は遠藤を少し上げて阿部をアンカーに置く4-1-4-1の形に変化。「岡田JAPANみたいだな」「懐かしいなコレ」「世界の名将もやることは大して変わらんな」と2010年の思い出に浸る時間も生まれました。

結局前半は0-1のまま終了。遠藤の足の状態が悪いのか、頼みのセットプレーも駒野に託すなど攻め手に乏しい日本。孤軍奮闘する李は何度か決定的なチャンスを迎えますが、前半45分の美しい胸トラップから落ち着いて流し込んだボールも、ゴール隅に向かう軌道から最後の最後でバウンドが変わってポスト直撃と運がありません。

↓今日は入らない日だな…と感じさせた李のシュート!


まぁ、こういう日もある!

そして迎えた後半。後半頭から日本は阿部を下げて清武を投入。遠藤・長谷部のボランチコンビに戻し、4-2-3-1の「3」を清武・香川・岡崎で構成する形に変えてきます。ようやくいつものような連動性が出てきた日本が反撃を見せたのは後半20分。こぼれ球を拾いながらの波状攻撃を展開した日本は、高く舞い上がる内田独特のクロスがうっかり鋭く落ち、そこに岡崎が飛び込んで同点弾!

↓ひとり手前の選手が全力ジャンプで届かず、後ろの選手は超低空ダイビングヘッド!これぞ世界レベルのクロス!


ボールが入ったあと、ハイハイで自分もゴールインした李の根性ワロタwww

誰も付き合ってくれないのに、ひとりで2回もゆりかごダンスした岡崎ワロタwww

これは生まれた赤ちゃんも大喜び!

先月生まれた今野の長男を祝うという岡崎のゆりかごダンス。どうしても今日ゆりかごをやるんだという岡崎の孤高な決意が、「無理しなくていいよ」「誰もやってないじゃん…」「俺もやんないとダメ?」という今野の想いと一緒にゴールに飛び込んだような泥臭い一撃。「生涯ダイビングヘッド」を信条とする岡崎ならではのファインゴールでした。

日本はこのゴール直後の後半19分、李に代えてハーフナー・マイクを投入。高さと見せかけて上手さがウリのハーフナー・マイクは、何度かチャンスを作りつつ、前線のターゲットとして存在感を示します。後半23分のジェパロフのシュートなどあわやという場面も、最近の試合でおおむねヒマしていた川島がそのぶんを精算する大活躍でゴールを死守。後半37分には駒野に代えて槙野を投入して守備を固め、辛くも日本は1-1のまま試合を終えることができました。

全体的には押されていた印象も、日本もチャンスを作り、結果としてアウェー戦を1-1で終えられたのですから十分な結果。移動による体調面、先制されて始まった展開なども考慮すれば、上手くこの試合を乗り切ったと言っていいのではないでしょうか。ベストメンバー・ベストな状態での試合だけでなく、こうした苦戦を積み重ねることも成長への道。ザックJAPANは引き続き順調にブラジルへ走りつづけていますね。

↓ちなみに、ウズベキスタンの観衆はとても足早!試合終了→選手インタビュー→CM→直後の現地中継でもうこのガラガラ具合!


観衆:「早く帰ってDMM.COM見ようぜ」
観衆:「アリスJAPANでゴールラッシュだな」
観衆:「6ゴールくらいするぞ!」

いくら何でも帰るの早いだろwww

コトが終わったあとの余韻もうちょっと長めにwww

まぁ日本も、そのくらいのスピード感で気持ちを切り替えていきましょう!