福島原発近隣では、放射性物質が検出された土やがれきの撤去に障壁が。はたして、それらをどこに持って行けばいいのか?

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 福島第一原発事故で、東日本の広い範囲に放射性物質がまき散らされてしまった。例えば、原発の北西約40kmの福島県飯舘村の土壌から検出されたセシウム137は1平方メートル当たり2200キロベクレル。これはチェルノイブイリ原発事故で強制移住地区の基準値となった1480キロベクレルを大きく上回る。

 セシウム137の半減期は約30年だ。このままでは飯舘村をはじめ、汚染被害に遭った自治体の人々は何十年間もふるさとに戻れないことになってしまう。そのため、国は原発がまき散らしたこの危険な“ウンコ”を除去すべく除染推進チームを発足させるなど大わらわなのだが、そこで困った問題が――。

 飯舘村に隣接する某自治体のボランティアが頭を抱える。

「まずは子供たちが学校に戻れるようにしようと、学校内の除染から取りかかったんですけど、取り除いた校庭の土や草を捨てる場所がない! とにかく、線量がバカ高いんです。校舎脇の側溝にたまった泥なんて、30マイクロシーベルト/毎時もあった。こんな危険なもの、誰も引き取ってくれるはずがない。これでは除染は進まない。いったい、どうしたらいいのでしょうか?」

 国は除染をする自治体に対し、汚染された土やがれきを当面、地元で仮置き場を確保し、保管するように求めている。だが、前出のボランティアはこう声を荒らげる。

「冗談じゃない! 2次汚染が起きたらどうするんですか?」

 放射性物質は1ヵ所にとどまらない。セシウムに汚染された葉っぱがあったとしよう。その葉っぱはいずれ散り、雨で川や側溝に流れ、やがては下水処理場へと流れ込む。当然、セシウムもその葉っぱとともに移動する。

「仮置き場といっても、人気(ひとけ)のないところに汚染土を運び込み、ブルーシートで覆っているだけという所もある。風や雨で舞い上がったり、流されたりして、水田や上水処理場が2次汚染されないか心配です。だからこそ、国には一刻も早く、汚染土を一括して長期保管できる恒久処分場を整備してほしい」(前出・ボランティア)

 しかし、処分場の整備はたやすいことではない。原発問題に詳しい中部大学の武田邦彦教授が言う。

「汚染土から高い線量が検出されるため、自治体は仮置き場でさえなかなか確保ができないでいる。ましてや、膨大な汚染土やがれきが集積する恒久処分場を引き受けようなんて自治体はそうそう見つかりませんよ」

 原子力災害対策本部に出向している資源エネルギー庁職員も悲鳴を上げる。

「細野豪志原発事故担当相から恒久処分場の整備を命じられているのですが、その処分用地が見つからず、暗礁に乗り上げています」

 だが、たった1ヵ所だけ、原発のウンコの保管場所の候補があるという。福島県内のある自治体職員がささやく。

「福島第一原発のある大熊町と双葉町です。ここしかありません。人気の絶えた原発のそばなら少々高い線量が出ても、影響を受ける人などいませんからね。ただ、大熊町や双葉町の住民は一日も早い帰郷を望んでいる。その心情を慮(おもんぱか)って、誰も口に出せないでいるのです」

 前出の武田教授もうなずく。

「汚染土は普通の量ではありません。私の試算では、その土を積み上げると福島原発周辺5km圏内の標高は15mも高くなる。これだけ大量の汚染土を保管できるエリアは福島第一原発周辺しかありません。福島原発から飛び散ったものは福島原発に戻すしかない。国と東京電力は責任を持って、その作業を早急にやり遂げるべきです」

 いずれにしても、除染は待ったなし。政府よ、早くウンコの行き場を決めるべし。


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