3:49
バファローズ 10
ライオンズ 11


埼玉西武ライオンズvsオリックスバファローズ7回戦
18:00開始 西武ドーム(観衆:11,771人)
埼玉西武ライオンズ 3勝4敗0分

継投:●帆足和幸ミンチェ〜江草仁貴〜木村文紀
敗戦投手:帆足和幸 4勝3敗 3.03

【栗山選手・大島選手が打球を失うシーン】


【ゲームレビュー】
「目標を失いかけている」。これは試合直後に緊急ミーティングを行った2日前に渡辺監督残した言葉だ。今夜の敗戦はまさにこの言葉に象徴される戦い方となってしまった。あまりにもミスが多すぎた。これだけミスをしては勝てた方がおかしい。

最初のミスは3回表。ミスと言ってもこれは、ドームの白い屋根と白球が重なったために見失ってしまったものだ。高々と舞い上がったボールは無情にも栗山巧選手左側、手の届かない場所にポトリと落ちてしまった。チーム状態が良ければ絶対に起こりえないようなミスだ。しかしこの後栗山選手はミスを取り返すべく4安打を放っているのは流石としか言いようがない。

2つ目のミスは8回表。一塁を守っていた後藤武敏選手が鋭い打球を好捕したまでは良かったが、一塁ベースカバーに入った江草投手への送球が大きく逸れてしまった。恐らく投げる瞬間、指先にボールが引っかかってしまったのだろう。3つ目のミスはこの直後だった。一死一塁で迎えた場面、オリックスの鈴木捕手はバントをした。この打球を処理した途中出場の上本達之捕手がまさかの二塁への悪送球。

上本捕手のこのプレーを良く見ると、捕球後サイドスローで二塁へ送球している。二塁手のようにボディバランスに優れた選手(激しい動きをしている最中でも、自分がどこにいて、どっちを向いているかが正確にわかる能力がある選手)であれば、走りながら身体を起こさずアンダースロー気味に送球することも可能だ。しかし上本捕手のように身体の大きい捕手タイプの選手にこのプレーはできない。この場面で送球ミスを防ぐためには、上本捕手は盗塁阻止をするときのようにしっかりと上からボールを投げ、左右への送球のブレをなくすべきだった。

捕手の場合、外角低めの投球を盗塁阻止で二塁に送る時以外は、基本的には上から強く投げるべきだと思う。最悪でも二遊間プレイヤーのように、走りながらのサイドスローは控えるべきだ。サイドから素早く投げるのならば、適切なステップを踏む必要がある。こういう粗いプレーを見せられてしまうと、選手の本音が分からない我々ファンは「ボールを大切にしていない」と感じてしまう。勝てていない時こそボールを大切に、丁寧にプレーすべきところだが、しかし今のライオンズにはその姿勢が足りない。土井ヘッドコーチも今夜は同様のことを指摘されていた。

さて、記録に残るミスは恐らくこの3つだけだったと思う。だが筆者は今夜、少々集中力に欠けている動きを見てしまった。それは9回表が始まる直前だった。ピッチャーは疲労骨折から復活してきた木村文紀投手、キャッチャーは星捕手に代わっていた。イニング間の投球練習が最後の1球になると、捕手は受けた投球を二塁に送球し、そこからボール回しがなされ、最後に投手のもとにボールが戻ってくる。だがこの時、信じられない光景が見られた。

プロ野球の試合は歓声や音楽、アナウンスなどで選手間の声が聞こえない場合もある。しかしこのプレーはルーティンワークであるため、しっかりとグラウンド上のことを把握できていればミスが起こる可能性はまずない。だが木村投手が投球練習の最後の1球を投げ、星捕手がそれを受け二塁に送球しようとした際、何と二塁ベースに中島裕之選手が入っていなかったのだ。星捕手は当然投げることができず、中島選手に対し早く二塁に入るように指示を出し、やっと投げることができた。

ボール回しは野手同士のリズム感を高めるためには欠かせない準備だ。そのボール回しをスタートさせられなければ、リズムなど当然生まれるものではない。まさにこれは勝てていないチームを象徴したような場面だった。インプレーではないため失点には繋がらないし、エラーも付かない。しかしチームを勝利に導くためにはあってはならないボーンヘッドだ。しかもそれをチームリーダーである中島選手がやってしまったという点が大きい。もちろん二塁ベースに入れなかった理由もあるのだろう。筆者はその理由までは分からない。しかし理由があるのならば二塁を守っていた浅村栄斗選手に入ってもらうなどの声かけが必要だったのではないだろうか。

「勝つことに全神経を傾けないと」。これは今夜の試合後、土井ヘッドコーチが残した言葉だ。勝負事である以上負けることはある。しかし負けるにも負け方というものがある。果たして今、ナインは全員が同じ方向を向けているのだろうか。現実問題として今「優勝」という言葉を口にすることはできない。それならば現状ではいったいどこを向くべきであり、ナインはその指針を共有できているのだろうか。もし黄金時代に同じような負けこむ時期があったとしたら、果たして石毛キャプテンならばどのような行動を取っただろうか。失うものがなくなりつつある今、ライオンズにはもっと泥臭くも貪欲に勝利を目指してもらいたい。そして獅子なら獅子らしく、明日西武ドームに駆けつけてくれる中西太さん、豊田泰光さんの現役時代のように、強く強くいなないて欲しい!