■ 第14節

ブンデスリーガの第14節。11勝1敗1分けで勝ち点「34」。2位のマインツに7ポイント差で首位を独走するボルシア・ドルトムントがボルシア・メンヘングラードバッハと対戦。ボルシアMGは2勝7敗4分けで最下位に沈んでいる。1分けを挟んでリーグ戦11連勝中のドルトムントとしては、確実に勝利を奪いたい試合である。

ホームのドルトムントは<4-2-3-1>。GKヴァイデンフェラー。DFピズチェク、スボティッチ、フメルス、シュメルツァー。MFベンダー、サヒン、ブラスチコフスキ、香川真司、ゲッツェ。FWバリオス。ここ最近、調子が落ちているドイツ代表のMFグロスクロイツがベンチスタート。MFグロスクロイツがスタメンから外れたのは、今シーズン初めてである。日本代表のMF香川は開幕から14試合連続スタメン。13試合で6ゴール1アシストを記録している。

なお、ボルシアとはラテン語で「プロイセン」という意味で、旧プロイセン王国地域のサッカークラブには「ボルシア」を冠するチーム名がみられるという。

■ 香川が逆転ゴール

前半から圧倒的にボールを支配するドルトムント。MF香川もキレのあるドリブルでチャンスを作る。前半29分には右サイドのDFピズチェクに対して相手に競り勝って得意のヘディングで合わせるが、GKハイメロトのファインセーブにあって惜しくもゴールならず。圧倒的に攻め込んでいたドルトムントだったが、前半33分にカウンターを浴びると、最後はMFマルコ・ロイスにミドルシュートを決められて先制点を奪われる。

1点ビハインドとなったドルトムントだったが、前半終了間際にMF香川がドリブルで仕掛けてゴール前でフリーキックを獲得。MFブラスチコフスキのシュートは相手DFに当たってコーナーキックとなるが、そのコーナーでMFゲッツェのボールをDFスボティッチがヘディングで合わせて前半ロスタイムに同点に追いつく。前半は1対1で折り返す。

いい形で前半終了間際に追いついたドルトムントは、後半7分にMFゲッツェが中央でボールを持ってMF香川にスルーパス。裏に抜け出したMF香川はGKをかわして無人のゴールに流し込んで逆転に成功する。MF香川は2試合ぶりのゴールで今シーズン7点目。ドルトムントは後半32分に途中出場のMFグロスクロイツがゴールを決めて3対1と突き放す。2点差になったところでMF香川はお役御免で交代。その後も、FWバリオスが決めてドルトムントは合計4ゴール。終わってみれば4対1で快勝となった。

■ 大きかった同点弾

前半は攻め込みながらも相手のGKのファインセーブもあってゴールをこじ開けられずに、一発のカウンターで先制ゴールを許したドルトムントだったが、前半終了間際のコーナーキックからDFスボティッチのゴールで追いついたのが大きかった。

ドルトムントのセンターバックはドイツ代表のDFフンメルスと、セルビア代表のDFスボティッチのコンビ。ともに21歳で、DFフンメルスが191cm、DFスボティッチが193cm。キッカーもいい選手がそろっているので、セットプレーも大きな武器であるが、見事にセットプレーで同点に追いついた。190?台の選手が二人もいて、ターゲットになれるので、やはりチャンスにつながりやすい。

■ 今シーズン7ゴール目

後半7分に逆転ゴールを決めたMF香川は今シーズン7ゴール目となった。相手の裏を突いて抜け出して相手GKも交わしてのゴールというのは、もっとも得意とする形のゴールであり、C大阪時代にはよく見られたゴールパターンである。

C大阪時代には、FWカイオとMF乾がいて、彼らのスルーパスを受けてゴールというシーンが多かったが、ドルトムントでそういったパスが出せるのが、ドイツ代表のMFゲッツェ。MF香川とのコンビはすでに成熟されているが、素晴らしいMFゲッツェのパスからMF香川のゴールが生まれた。ブンデスリーガでは7ゴール目となったが、一番、彼らしいゴールだったといえる。

ゴールシーン以外にも、この試合は体がキレていて、ドリブルで相手を外すシーンも多く、コンディションが上がっていることをうかがわせた。ここ最近は日本代表戦もなくて、過密日程でないことも、コンディションが良くなっていることの要因だろう。

■ 脅威の得点ペース

これで14試合で7ゴール。2010年のJ1では11試合で7ゴール。J2でも、J1でも、ドイツでも同じようなペースでゴールを重ねている。ポジションがMFであることを考えると驚異的である。世界的に評価されている攻撃的MFでも、これだけのペースでゴールを量産できる選手はなかなかいない。よくMF香川と比較されているチェコ代表のトーマス・ロシツキでも、ドルトムントでの6シーズンで合計149試合で19ゴール。MFの選手に限定すると、その得点力は世界でもトップクラスであるといえるだろう。

とにかく、いろいろな形でゴールを奪えるのが彼の良さであり、3節のヴォルフスブルク戦のようにDFラインの裏に抜けてゴールを奪うことも、4節のシャルケ戦の1点目のようにドリブルで打開してゴールを奪うことも、6節のザンクトパウリ戦のようにサイドからのクロスに合わせてゴールを奪うこともできる。また、右足でも左足でも、ほとんど変わら無い精度でシュートを放つことができるのも武器であり、利き足とは逆の左足で決めたゴールも多い。

■ 選手層の厚さ

ドルトムントはドイツ代表経験のあるDFオヴォモイェラとMFケールが怪我で離脱しているが、DFピズチェクとMFベンダーが穴を埋めており、スタメンはMFブラスチコフスキが起用されるときと、MFゲッツェが起用されるときがあるが、それ以外はほとんど同じである。

それだけチームがうまくいっていることの裏返しであるが、控えにも代表クラスの選手がそろっている。ポーランド代表のFWレワンドフスキはMF香川と交代でピッチに入ることが多いが、すべて途中出場で4ゴールを挙げていて、ブラジル人のMFダ・シウヴァも、短い出場時間でゴールやアシストを記録しており、タレントはそろっている。ビハインドになって、どうしてもゴールがほしい場面でのオプションが少ない感じはするが、攻守ともにバランスが取れていて、今のところ、死角は見当たらない。




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