若い世代を中心にゲーム文化が急速に広まりつつある中国、ソニーのプレイステーションポータブルすなわち「PSP」という文字は、インターネット上でも街中を歩いていてもよく見かける。しかし、これらのPSPはすべてソニーとの契約なしに勝手に販売されている「水貨」だという。中国網が伝えた。

 記事では娘の誕生日に北京の中関村へPSPを買いにいったという消費者のエピソードが紹介されている。ある店で1000元あまりを使ってPSP3000を購入した消費者は、参考までに正規販売価格を知ろうとソニー製品の専売店へ足を運んだ。そしてPSPの値段を聞こうとしたところ、「PSPシリーズは中国大陸では正規販売されていない」という衝撃の事実を初めて知ったというのだ。「何年も国内で流行しているのに、正規販売がないというのはどういうことだ」とこの消費者は首をかしげたようだ。

 ソニーでは2004年12月よりPSPシリーズ製品を次々とリリースし、多くの国や地域で販売を行ってきた。しかし、これまで一度も中国大陸向けに製品が発売されたことはないのだ。これについてはソニーの中国法人もコメントを出して認めている。にもかかわらず、これまでに5000万台以上を売り出したというPSPシリーズの多くが中国大陸のユーザーに渡っているなどといううわさが出るほど大陸に流れているのはなぜか。

 ゲーマーや業界関係者の話を総合すると、密輸商が香港から深センなど広東省を経由してこっそり持ち込んでいるようだ。ある販売者によれば、数名が1カ月に2度香港に渡り1人5台ほど持ち帰ってくるという。「今年に入ってゲーム機の密輸案件が2件発覚し、205台が押収された」と深セン税関の関係者は紹介する。また、近年では広東省の都市だけではなく大連やアモイといった都市でPSPの密輸品が押収されているようだ。

 今や巨大なゲーム市場と化した中国向けにソニーがPSPを発売せず、密輸されているゲーム機が好き勝手に販売されている状況をなぜ長年傍観しているのかについて、記事では中国政府が2000年に実施した「国内向けのゲーム機部品の生産販売、輸入を停止する」という『電子遊戯場所管理に関する通知』の影響を挙げるとともに以下のような理由を挙げた。

 ソニーがゲーム機を香港に輸出する際はゼロ関税となっている。密輸商が香港でゲーム機を手に入れ、大量に中国大陸に持ち込むことによって、ソニーにしてみれば貿易コストのない状態で中国市場を手にしたも同然なのだ。中関村のある仲買業者は「メーカーの指示がなければ、これほど大量の密輸品が出現することはまずありえない」と解説した。また、情報製品は内容の改ざんでブランドイメージを傷つけられることがまずない上に、密輸品であれ海賊版であれ間接的な宣伝効果を持つことから、し烈なゲーム市場競争下においてライバルをけん制するためにもソニーは「100%密輸」状態の解決に本腰を入れないのだという。

 記事は、「この状況は中国市場や消費者、国内経済にとってメリットは一つもない」とし、このような状況を招いた主な原因は税関、工商、公安などといった中国国内の関連各機関の連携が取れていないことにあると最後に結んだ。(編集担当:柳川俊之)



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