先日、「ガゼッタ・デッロ・スポルト」紙のデ・ルカ記者がどえらいスクープ記事を放った。セリエAのトップクラブに所属する、ある選手の給料明細書をいずこからか入手し、写真付きで大々的にそれを公開したのだ。生々しくクシャクシャにされた皺だらけの明細書は、何気なしにどこかのゴミ箱に捨てられていたものかもしれなかった。市井に衝撃を与えたのはそれが、物価高に喘ぐイタリアの一般サラリーマンが毎月会社からもらうそれとまったく同じ書式だったことだ。

 つまりそこには、イタリアの税制にのっとり月割りにした諸々の税額までもがきちんと記載されていた。それによると、所得税など各種税金を負担することになっているクラブは、月当たり54万1000ユーロ(約8600万円)を国庫に払っていた。念のため断っておくが、チーム全員分の額ではない。その選手“1人分の税額”である。もちろん氏名は伏せられていたが、確かだったのはその選手の年俸が360万ユーロ(約5億7600万円)であることだった。

 イタリアの所得税率は45%に達し、それがスペイン、イングランドと比べて格段に厳しいため、戦力獲得競争の際、著しい足枷となる。選手のフトコロはまったく痛まない。だが、クラブが抱える選手は1人だけというわけにはいかない。クラブ経営に直結する会計上の不利は、いずれピッチ上の結果となって現れる。伊サッカー界の凋落を招く一因として無視できない要因である、と主に経済アナリストから憂う向きが出始めている。