【photo by Kiminori SAWADA】

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[前編の続きから] “走るサッカー”を標榜しているオシムサッカーだったが、中田はそれが単調になることを危惧していた。実際練習試合で、中田、中村、稲本、高原らとプレーした佐藤寿人は「彼らはキープが出来るので、また新しい攻撃ができる」と話している。キリンカップで欧州組の合流で日本代表に与えた刺激は小さくは無かった。

 しかし、アジアカップでは、欧州組の招集は中村、高原だけに止められた。新しいチームに加入したばかりの稲本はアジアカップ参加への危惧を表明していたが、中田に関しては、指揮官が所属先が決まっていないという理由で招集を見送ったと話している。

 確かに中田は鹿島復帰が噂されていたが、バーゼルは中田の残留を望んでおり、彼自身もバーゼルの選手であることを自覚し、移籍に関しては「チーム同士の話し合いで」と語っていたから、所属先が決まっていないわけではなかった。監督が中田をアジアカップに招集しなかった理由は、別のことだったのかもしれない。それを裏付けるかのように、9月3日からの欧州遠征のメンバーにも中田の名はなかった。

 9月2日。バーゼル対トゥーン戦。バーゼルは7位のチームを相手に攻めてはいたが苦戦し、終了間際のゴールで2−1と辛勝。「木曜日にUEFAカップの試合を戦った疲労があった」と中田が試合を振り返った。

 8月30日にオーストリアのチームとUEFAカップ予選を戦ったバーゼル。落とせない一戦をアウェイでありながら0−4で勝利したが、交通機関の関係でバーゼルに戻ったのは、8月31日金曜の夜だった。そして迎えたのが日曜のリーグ戦だった。正直に言って、この試合の中田は精彩を欠いていた。相手との1対1での守備では危なげないプレーをしたが、自陣に引き、カウンターを狙っている相手に対しての攻撃に威力はなかった。クロスボールもことごとく相手に弾かれた。

「昨季から先発メンバーが5人も代わったし、まだチームとしては熟していない。今日は確かに疲労もあったし、相手がゴール前を固めていたこともあって、クロスも上手くいかなかった。UEFAカップのアウェイは、どうしても落とせない試合だったし、チームとして精神的な疲労もあったと思う。確かに内容はよくなかったけれど、今日の試合は勝ち点3を得られたことが大きい」

 今季の中田のモチベーションの源は、「リーグ優勝」だと語る。「去年も追い上げたけど、最後の最後で追い越せなかった。その悔しさは小さくはないからね。まずはリーグ優勝が目標だし、それにUEFAカップでも結果を残し、上位で戦いたい」
[後編に続く]