Nokiaのプレミアムモデル、8800 Siroccoのデザインスケッチ

写真拡大 (全5枚)

携帯電話の全世界マーケットにおける日本メーカーのシェアは「その他」に入れられてしまうほど低く、海外の調査会社によるマーケットシェアの結果に、単独メーカーの数字が出てくることもここ数年は無くなってしまった。SonyEricssonが世界シェア4位の座を得ているが、同社は純然たる日本メーカーではなくヨーロッパのEricssonとの合弁企業であるため「日本メーカーが4位に入っている」とは考えにくいだろう。

それではなぜ日本メーカーが海外でシェアを伸ばせないのだろうか?
単純に「海外市場は日本と違う」「日本の端末は海外では受け入れられない」と片付けてしまうのは早計だ。実際に世界シェアトップのNokiaの端末は、なぜ多くの国で売れているのか? 6月18日にシンガポールで開催されたNokiaのプライベートイベント「Nokia Connection 2007」にて興味深い講演が行われたので紹介しよう。

■人々の行動パターンそのものが製品デザインの基本となる

Nokia Connection 2007では同社の製品のデザインをテーマにした「Nokia Design Stream」と題された講演が行われた。これは端末の直接的なデザインだけではなく、開発コンセプトや方向性など製品フィロソフィーまでを含めた幅広い内容のものであった。

Nokia Designのシニア・スペシャリストであるJan Chipchase氏の講演で、同氏は「世界中の人々の行動を観察すること」が自身の仕事だと説明した。国により文化が異なれば人々の言動や生活行動パターンも異なってくる。また過去、現在、未来と人々の興味も日々変化し続けている。これらを国ごとに調査・研究することで、その国の人々が日常の行動に付随して持ち運ぶ"身の回りの生活日常品"にどんな基本デザインを求めているのかを解明していくのだという。そしてその結果を製品デザインコンセプトに取り入れていくことこそが、その国で消費者に愛される製品を生み出す原動力につながるということだ。

Chipchase氏の調査によれば、たとえば中国の地方都市では財布を持たない人が多いという。これは、スリにあったときに全財産を一度に奪われてしまうリスクが大きいからとのことだ。一方、他の国では、大きな財布に現金からカードまで何でも詰め込むところもある。このように財布一つを取っても、国によって人々が求める機能やデザインは全く異なるのだ。

他にも携帯電話の男女による持ち運び方の差や、ストラップやベルトケースといったアクセサリの嗜好の差などといった使用状況に至るまでの調査結果を提示し、ユーザーニーズにマッチした製品を開発するには、その国の消費者の行動を理解し、それを製品の基本デザインにフィードバックさせることが必要であることを力説した。

またおそらく、日本と思われるレストランでの写真が1枚提示されていたが、そこには全ての皿上に一品ずつ料理が残されていた。この写真についてChipchase氏は「これはデザインには直接の関係は無いかもしれない。しかしなぜ人々はこのような行動をするのだろうか? その動機やライフスタイルを追求することが、結果としてプロダクトデザインに必要な要素を生み出すのではないだろうか」と話し、消費者の行動が製品デザインの基礎につながるものであることを再説していた。

各国で人々は携帯電話をどのように持ち運んでいるのか? 携帯電話のデザインコンセプト・アイディアの一つがここに隠されている皿の上に一切れずつ残った料理。なぜこの行動をするのか? その追求が製品デザインへ結びつくこともあるという