家庭や飲食店から排出された天ぷら油などを利用した「バイオディーゼル」燃料。環境に優しい取り組みとして、バスやゴミ収集車、列車に使用するケースがありますが、課題も多いようです。

鉄道での使用は難しいか

 鉄道のディーゼルカーは燃料に軽油を使いますが、一部の鉄道において「バイオディーゼル」燃料が使われるケースがありました。家庭や飲食店から排出された天ぷら油などを100%使用、あるいは軽油と混合して精製した燃料です。


いすみ鉄道の200形ディーゼルカー。一時期、軽油に食用油を5%配合したバイオディーゼル燃料を使用して運行されていた(画像:photolibrary)。

 千葉県の房総半島を走るいすみ鉄道が2005(平成17)年から、沿線より集められた食用油を軽油に5%配合して精製されたバイオディーゼル燃料を列車に使用。兵庫県加西市内を走る北条鉄道も、2008(平成20)年から、濃度100%のバイオディーゼル燃料で数回、列車を運行しています。

 しかし、現在は両社とも、バイオディーゼル燃料を使用していないそうです。

 いすみ鉄道では、1980年代に国鉄線からの転換で開業した当初の車両でバイオディーゼル燃料を使用していましたが、2012(平成24)年ごろに中止したといいます。軽油よりもコストが高いうえ、糖分が入っているため、パッキンなどからにじみ出てきた油がベトつくなどのデメリットがあったとのこと。同時期に導入した新型車両では、バイオディーゼルは使用できないと判断されました。

 北条鉄道では、試験やイベントで100%バイオディーゼル燃料による運行はしたものの、パワーが出ないことなどから、日常的な営業運転には至らなかったといいます。

鉄道車両より小さなバス、クルマならOK?

 バイオディーゼル燃料をバスや公用車、ゴミ収集車などに生かしている自治体もあります。その先駆として取り上げられることが多いのが京都市。「京都議定書」が採択された1997(平成9)年の第3回気候変動枠組条約締約国会議(COP3)開催を契機に、同年から使用済み食用油の回収とバイオディーゼルの製造を開始し、2018年11月現在も市営バスとゴミ収集車、それぞれ100台以上に利用しています。

「資源循環、地球温暖化対策に資する取り組みとして始めました。地域の皆様のご協力もあり、いまでは回収拠点も市内1800か所以上を数えるなど、循環がうまくつながっています」(京都市地球温暖化対策室)

 京都市では基本的に、市営バスには軽油に食用油を5%配合したものを、ごみ収集車には濃度100%のものを使用してきました。しかし車両の進化にともない、これまでのやり方にも変化が生じているといいます。

「近年、ゴミ収集車については更新のタイミングで、濃度100%のバイオディーゼルから5%のものに切り替えています。最近のエンジンでは100%のバイオディーゼルは使用できず、今後も使用が減っていくことが予想されます」(京都市地球温暖化対策室)


車庫に並んだ京都市営バス(2018年11月、中島洋平撮影)。

 なお京都市地球温暖化対策室によると、食用油の配合率が5%までのバイオディーゼルは「揮発油等の品質の確保等に関する法律(品確法)」により品質が保証されており、軽油よりもパワーが劣るようなこともないといいます。しかし、濃度100%のバイオディーゼルはその対象外で、エンジンのメーカー保証も受けられないとのこと。

 また食用油の回収、燃料の精製を含め、コストは軽油と比べて2割から3割高く、濃度100%のバイオディーゼル燃料を使用しているごみ収集車では、エンジンオイルの交換頻度が通常よりも高いそうです。

 ちなみに、京都丹後鉄道が2017年から一部の駅に回収ボックスを設置して廃油回収事業を開始しましたが、コスト面から列車にバイオディーゼル燃料は使用しておらず、精製業者に廃油を提供する収益を、駅や沿線の維持管理に生かしているといいます。

 京都丹後鉄道の親会社であるウィラーによると、仮にバイオディーゼル燃料を使って運転するとしても、エンジン、ゴム、樹脂などへの影響を考慮し、食用油の配合率を5%以下にするとのことです。

【写真】廃食用油100%燃料で走った鉄道車両


紀州鉄道を走っていたディーゼルカー、キテツ-2。元は北条鉄道のフラワ1985-1で、紀州鉄道へ移籍する以前に濃度100%のバイオディーゼル燃料による走行実験を行った(画像:photolibrary)。