東京の酒場に、夜な夜な集う美女たち。もし偶然、あなたの隣に彼女が来たら…?

美女とどんな会話をして、どんな時間を一緒に過ごしたいだろうか―。

年の瀬。今年も「良い出会い」なんてひとつもなかった俺は、馴染みの店でマスター相手に管を巻いていた。

しかし今、運命の風向き変わるような出来事に遭遇している。




「マスター、お腹空いた!」

威勢の良い声と共に店の扉が開くと、まさに俺の「理想通りの女性」が立っていた。

驚きを隠せないまま彼女を見つめると、目が合った。




大きな瞳は赤茶に濡れ、透けるように白い肌の中心に鼻がくっきりと浮かぶ。

ただ酒を選んでいるだけで、なぜこんなにも凛としているのか。




マスターから勧められるボトルを眺め、「今日はコレにしよう」と呟く彼女の眼差しは、伏し目でも美しい。




なみなみと注がれた日本酒にゆっくりと口を付け、「溢れちゃう…」と口をすぼめる。




そんな姿を、俺はグラスに感情移入しながら阿呆のように眺めるしかなかった。




すると、また目が合う。




すると彼女は、今度はしっかりと俺に顔を向けて「ひとり?」と聞いてきた。




急に話しかけられたことに動揺しながらも、俺は「君もひとり?」と質問を返すのが精一杯だった。

すると彼女は「うん。出張鑑定の帰り」と言って、意味深な顔を浮かべた。


美人占い師はマゾヒストがお好き?


彼女の名前は、衣津子。30歳。四柱推命とタロットを専門にした占い師だという。




「じゃあ俺のことも占ってくれる…?」とぎこちないまま冗談半分に言うと、彼女は「良いけど、お腹空いたからちょっと待って」と食事に手を付ける。




美女が口元に物を運ぶ。それだけで、なぜこんなにもドギマギするのだろう。




謎が深まるばかりの彼女について、さらに質問した。なぜ占い師という特殊な職業に就いたのか。




「小さな頃、『未来が分かったら良いのに』って思わなかった?私もよくそう思って、昔から人の運命を透視できるように頑張ってた(笑)。10年くらい経ったある日、プロの人に占ってもらう機会があって鑑定したら、的中していて驚いた。そこからもっと興味が湧いて、四柱推命を本格的に勉強し始めたの」

占星術の魅力にとりつかれた彼女は、その美貌を生かしモデル業と両立。

2年ほど前から、出張鑑定も受けているという。




「占いって、『それにすがって楽になる』って思う人もいるみたいだけど、そうじゃないの。私が運命の流れをみてあげることによって、その人は良い方向に人生を変える努力ができるじゃない?自分の意思で前に進むことができるように手伝うことが私の使命。自分のことを知り、受け入れられるように」

続けて俺は、「自分の恋愛について占うことはあるのか?」という愚問をぶつけてみた。




「ある。私も人間だから、好きな人が出来たらこっそり鑑定しちゃう(笑)相手の男性の傾向が分かれば関わり方も分かってくるし、もし相性が良くなくてもどう歩み寄れば上手くいくのか分かるから。それくらいは役得でしょ?」




そう言って照れる彼女は、可憐な少女のようだ。

今度は、少し占いから切り離した質問をしてみる。好きな男性のタイプは?




「普段は優秀なのに、私の前ではマゾヒストな人が好き。私が凄くサディストだから。しっかりしている人が弱っている姿をみると、いじめたくなる(笑)。私は男性にリードされるより、向こうには控えめでいて欲しいタイプ。こっちが相手を困らせて楽しみたいし、男の人が困っている顔が好きなの」

小悪魔か……。俺は、この不敵な笑みを浮かべた占い師に振り回されたいと願った。




「もし私と付き合ったら凄く楽しいと思う。マッサージが得意だから、疲れていたら身も心もほぐしてあげられるし」

彼女の白く細い手のひらが、俺の身体に触れることを妄想してドキッとする。



さらに小悪魔炸裂! 鑑定してもらった


頼んだ料理を綺麗に食べ終えた彼女は、「これも縁だから占ってあげる。何について占う?」と聞いてきた。

すかさず俺は、「恋愛運」と返す。笑いながらカードをシャッフルする彼女の顔は、既にプロの表情になっている。

手元から3枚のカードを選び、ゆっくりとめくる。




「力、恋人、運命の輪。全部正位置ね」

まるで、カードと対話しているようだ。




「『力』は、自分の欲望や感情をコントロールしなさいっていうメッセージ。『恋人』と『運命の輪』が一緒に出たってことは、もしかしたら新しい出会いは、既に目の前に用意されているのかもね」

俺は、その運命の相手がどうしても君に思えてくるのだが……

「あ、次の鑑定の予約入っちゃった! 急いで帰んなきゃ」

帰り支度を始める彼女に向かって「鑑定料はいくら?」と聞くと、「要らない」と余裕の表情で返してきた。

「そういうわけにはいかない。プロに占ってもらったんだから。御礼の代わりに、ここは俺が払っとくよ」

俺はそれだけ言うのが精一杯だった。

彼女は、「いいの?会ったばかりなのに」と驚いた表情で去っていった。




「占いよりも確実に君を幸せにするから、俺とデートしてよ」

なぜ、その一言が言えなかったのだろう……。

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代々木上原で出会った、魅惑的な彼女との一夜

<今週の彼女>
内田衣津子さん
Instagram

<撮影協力>
マルワ(MARUWA)
東京都練馬区豊玉北5-17-23
営業時間:18:00〜24:00
定休日:日曜日

<カメラマン>
佐野 円香